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第三章 シックスパックの姫君
第29話 侍女 ミニミ
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「今回の一件が、将軍の仕業だという証拠も掴みました。打倒する大義名分ができたというもの。ぜひ討伐に、ご同行ください」
ゼム将軍の所属するネロック王国からも、将軍撃滅の了承も得ているという。
私利私欲で魔物を動かしていたことが発覚し、将軍は完全に孤立しているらしい。だがそれゆえに、なりふり構わなくなってきたとか。
「しかし、彼はネクロマンサー。これまで殺してきた相手を配下として、ネロック国の軍事力さえ超えるスケルトン兵を率いているとか。油断なきよう」
「はい。心得ております」
「そのために、ドラゴン族が危ういのです。ドラゴンがゼム将軍の側に回れば、世界はたちまち火の海となります。その前に手を打たねば。その手紙を渡せば、彼女らも協力してくれるでしょう」
特にほとんどのドラゴン族は、かつての魔王との戦いで化石化している。もしそれらがゼム将軍の手にかかれば、ドラゴンゾンビの大群が完成するだろうとのこと。
「考えただけで、虫唾が走りますね」
「あなたの怒りはよくわかりますよ、冒険者フォトン。あなたの旅の無事を祈ります。カチュア。今のうちに、アマゾネスとの別れを惜しんできなさい」
カチュアは「はっ」と短く返事をする。
「フォトン。私は、アマゾネスの里にあいさつをしてくる。それから合流しよう。しばしの別れだ」
「お気をつけて」
わたしは、王城を出た。カチュアが戻るまで、ほぼ丸一日やることがない。彼女を放って先を急ぐことも考えたが、いくらなんでも薄情だ。
いつのまにか、わたしは独りが平気ではなくなってきたらしい。
王子や侍女との触れ合い以外、狭いコミュニティでしか生きてこなかった。人恋しいなんて感情は、とうに捨てたと思っていたのに。今は、この人たちのためにゼム将軍を倒そうと考えている自分がいる。
『クスクス。またお会いしたわね』
精霊たちが、わたしたちの元に寄ってきた。
『クスクス。この間は、不気味がってごめんなさい。ロプロイ王国を救ってくれた恩人だもの。なにかおもてなしをしたいわ』
「結構です。先を急ぎますのでこの辺で」
『クスクス。まあそう言わずに。この宿の名物料理をごちそうするわ。この半券を持っていきなさいな』
わたしの手に、精霊がチケットを置く。
『コ、コホン。フォトンよ。たまには寄り道しても、バチは当たらぬと思うぞよ』
「あなたは、スイーツが食べたいだけでしょうに」
だが、もらった以上は消費せねば。仕方なく、宿へ向かう。
「すいません。精霊よりこんなものを預かったのですが?」
「……!? 承知しました。奥の個室へどうぞ」
どういうわけか、カウンターの奥にある個室まで案内された。そこでまた数分待つと、いい香りがしてくるではないか。
「おまたせしました。王宮御用達の、ロイヤルチーズケーキです」
宿自慢の、レアチーズケーキをいただくことに。
『おお、この素晴らしい佇まいよ。どれどれ。うむ。甘さが控えめなのに、うまさが口に広がっていくぞい! 乳の甘みが染み渡っておる。もはやこれは、我のためにある料理と言ってよいじゃろう。ムシャムシャ』
ひとまずレメゲトンに、宿のチーズケーキを食わせる。こちらは炭酸で、リラックスといくか。
「姫様~。フォルテ姫~。ここにいたのか~」
息を切らせて、メイド服姿の少女がこちらに走ってくる。わたしのもとまでやってきた少女は、ネコ耳を垂れさせながら息を整えた。
「ミニミ?」
宿の人に、ミニミが止められている。
わたしは「関係者だ」と伝えて、ミニミを個室に入れた。
「父上の身に、なにかあったのですか?」
「ないないない。メイド長のベレッタ姉が、フォルテ姫様についていきなさいって」
大きいカバンを、ミニミがわたしに差し出す。中身は替えの服と、追加の路銀だ。羅針盤など、使えそうなアイテムが大量にある。
心配性な、ベレッタらしい。
「わたしの名前を、あまり大声で話さないでください。いくら個室とはいえ、誰が聞いているかわからないので」
「ああ、ごめんなさい」
自分の声のボリュームに無自覚だったらしく、ミニミが口を手で覆う。
「……ミニミ、でしたら、お願いがあります」
「おう。なんでもいうこと聞くぞ」
ゼム将軍の所属するネロック王国からも、将軍撃滅の了承も得ているという。
私利私欲で魔物を動かしていたことが発覚し、将軍は完全に孤立しているらしい。だがそれゆえに、なりふり構わなくなってきたとか。
「しかし、彼はネクロマンサー。これまで殺してきた相手を配下として、ネロック国の軍事力さえ超えるスケルトン兵を率いているとか。油断なきよう」
「はい。心得ております」
「そのために、ドラゴン族が危ういのです。ドラゴンがゼム将軍の側に回れば、世界はたちまち火の海となります。その前に手を打たねば。その手紙を渡せば、彼女らも協力してくれるでしょう」
特にほとんどのドラゴン族は、かつての魔王との戦いで化石化している。もしそれらがゼム将軍の手にかかれば、ドラゴンゾンビの大群が完成するだろうとのこと。
「考えただけで、虫唾が走りますね」
「あなたの怒りはよくわかりますよ、冒険者フォトン。あなたの旅の無事を祈ります。カチュア。今のうちに、アマゾネスとの別れを惜しんできなさい」
カチュアは「はっ」と短く返事をする。
「フォトン。私は、アマゾネスの里にあいさつをしてくる。それから合流しよう。しばしの別れだ」
「お気をつけて」
わたしは、王城を出た。カチュアが戻るまで、ほぼ丸一日やることがない。彼女を放って先を急ぐことも考えたが、いくらなんでも薄情だ。
いつのまにか、わたしは独りが平気ではなくなってきたらしい。
王子や侍女との触れ合い以外、狭いコミュニティでしか生きてこなかった。人恋しいなんて感情は、とうに捨てたと思っていたのに。今は、この人たちのためにゼム将軍を倒そうと考えている自分がいる。
『クスクス。またお会いしたわね』
精霊たちが、わたしたちの元に寄ってきた。
『クスクス。この間は、不気味がってごめんなさい。ロプロイ王国を救ってくれた恩人だもの。なにかおもてなしをしたいわ』
「結構です。先を急ぎますのでこの辺で」
『クスクス。まあそう言わずに。この宿の名物料理をごちそうするわ。この半券を持っていきなさいな』
わたしの手に、精霊がチケットを置く。
『コ、コホン。フォトンよ。たまには寄り道しても、バチは当たらぬと思うぞよ』
「あなたは、スイーツが食べたいだけでしょうに」
だが、もらった以上は消費せねば。仕方なく、宿へ向かう。
「すいません。精霊よりこんなものを預かったのですが?」
「……!? 承知しました。奥の個室へどうぞ」
どういうわけか、カウンターの奥にある個室まで案内された。そこでまた数分待つと、いい香りがしてくるではないか。
「おまたせしました。王宮御用達の、ロイヤルチーズケーキです」
宿自慢の、レアチーズケーキをいただくことに。
『おお、この素晴らしい佇まいよ。どれどれ。うむ。甘さが控えめなのに、うまさが口に広がっていくぞい! 乳の甘みが染み渡っておる。もはやこれは、我のためにある料理と言ってよいじゃろう。ムシャムシャ』
ひとまずレメゲトンに、宿のチーズケーキを食わせる。こちらは炭酸で、リラックスといくか。
「姫様~。フォルテ姫~。ここにいたのか~」
息を切らせて、メイド服姿の少女がこちらに走ってくる。わたしのもとまでやってきた少女は、ネコ耳を垂れさせながら息を整えた。
「ミニミ?」
宿の人に、ミニミが止められている。
わたしは「関係者だ」と伝えて、ミニミを個室に入れた。
「父上の身に、なにかあったのですか?」
「ないないない。メイド長のベレッタ姉が、フォルテ姫様についていきなさいって」
大きいカバンを、ミニミがわたしに差し出す。中身は替えの服と、追加の路銀だ。羅針盤など、使えそうなアイテムが大量にある。
心配性な、ベレッタらしい。
「わたしの名前を、あまり大声で話さないでください。いくら個室とはいえ、誰が聞いているかわからないので」
「ああ、ごめんなさい」
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「おう。なんでもいうこと聞くぞ」
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