ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

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第一章 転生した身体は、木でできていた

第10話 仲間の家で、泊めてもらう

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 枝を伸ばして、自分用の杖を作ってみた。

「コーキ。そいつは、【ソーンバインド】のスキルなのか?」

 ガルバが、物珍しそうにボクを見る。

「まっ、まあ、そんなところです」

 いけない、いけない。うっかり、自分で正体をさらすところだったよ。

「魔法の杖を、自分で生成できるなんて。さすが世界樹産ですね」

「どうなんだろう?」

 アザレアも、ただ感心するのみ。

 でも武器自動生成って、実際どうなんだろうな。 
 よくいえば、地産地消である。悪く言えば、貧乏装備だし。

「じゃあ、本格的に作ってみるかい? 魔法石とかあるから」

 魔物が落とす魔法石は、大型なほど強い魔力がこもっているらしい。
 強い魔物であるほど、得られる魔法石のサイズは大きくなる。

「ワタシが持っているのでは、こんな大きさかな」

 パロンが、持っているショートソードを見せてくれた。

「柄に取り付けてあるルビーが、魔法石。モンスターから採取したんだ」

 剣の柄に、赤い石が三つついていた。その両隣に、細長いひし形の小さな青い石が一つずつ。

「ワタシの武器も、自作なんだ。店売りの剣に、細工を施してある。鞘の先端にも、丸い透明な魔法石があるよ」
 
 しまってある剣を、保護する役割があるらしい。

 ただ、戦闘で生計を立てているわけではないという。なので、たいした武器は持っていないそうな。

「全部換金してしまったから、手持ちにもう魔法石はないんだよ。旅をしつつ、使えそうなのを集めてみようか」

 ボクを作ったことで、パロンは財産もほとんど使い切ってしまったという。
 素材探しの旅費も、かなりの金額を必要としたそうだ。

「さっき倒したウルフからは?」

「厳密には、ウルフは魔物とは呼べないんだ」 

 ウルフは魔物というより、「動物」に分類されるらしい。お肉や素材以外に、使い道がほとんどないそうだ。

「わかった。パロンのいうとおりにしよう」

 魔法石は、道中で獲得することにした。

 装備を整えていると、もう夕方ではないか。

 夢中で買い物をしていると、時間が立つのが早い。

「宿を探さないとね」

 そろそろガルバたちを帰さないと、って思っていると……。

「そうだ! コーキ、パロン。ぜひ我が家に寄ってくれ。メシでも一緒に食おう。カカアも喜ぶぜ」 

 ガルバから、そう提案された。
 
「ガルバのお家に、お邪魔していいのかい?」

「おうよ! オレのカカアのシチューは、自慢じゃないが、うまいぜ」

 ガルバが、胸を手で叩く。オウルベアの肉をアイテムボックスから出して、見せびらかした。どうも、お礼がしたくてしょうがないらしい。

「ありがとうございます。でもさすがに、宿に泊まりますよ」

 ボクに好意的なのはありがたいが、正体を知られるわけには。

「泊まっていってくれ。でなければ、オレの気が収まらん」

 うーん、どうしようか。ここで無下に断るのも悪いし。
 
「コーキ、ここは、ご厚意に甘えよう」

 対照的に、パロンは楽しそうである。

 ならいいか。

「いいの、パロン?」

「二人はキミの正体を知っても、どうせ大した反応はしないよ。キミに感謝してくれているみたいだし」

「わかった。じゃあ、お願いします」

 そうと決まればと、ガルバが道案内を始める。
 
 ガルバの誘導で、小さな小屋に案内された。

「あらあ、いらっしゃい」

 この若い女性が、ガルバの奥さんらしい。アザレアに、よく似ている。
 事情を夫から聞くと、奥さんはたいそう喜んだ。

「どうぞどうぞ、そんな思いカブトなんか脱ぎなさいませよ」
「うっ……」

 やっぱり、気になっちゃうよね。

「ごめんなさい、奥さん。彼はシャイなんだ。カブトの着脱は、勘弁してくれないか? 寝るのにも邪魔にならないよう、加工はしてあるから」

「はい。悪い人じゃないんだから、仮面を脱ぎなさってもいいのに」

 奥さんが、残念がる。

「まあ、誰にだって知られたくない事情はあるさ。それよりドナ、メシと酒を頼むよ」

「あいよ」

 ガルバの奥さんは、ドナという名前のようだ。
 
「ちゃんと稼いできたんだよね、あんた?」

「へへん。オレを誰だと思ってやがる?」

 袋いっぱいの報酬を、ドナさんの両手にドンと差し出す。

「あらまあ」

「こいつで、うまいもんを出してやってくれよ」

「ありがと。じゃあ、腕によりをかけて作ってあるからね」

 ドナさんは、キッチンへ。

 アザレアも、手伝いに行った。

 ボクたちは食卓で、待つことに。

 眼を見張るような料理が、テーブルに並べられた。メインは、オウルベアのシチューである。

 サブとして、ウルフの薄切り肉をレタスで巻く。

「おいしいです」

 仮面を被ったまま、ボクはいただいてみた。一応口があるので、食事は可能だ。味覚もちゃんとある。どこに消化されていくのか、わからないけど。

 オウルベアの肉が、野菜のシチューに合う。
 クマなのに、鶏肉の味と食感がする。独特の味わいだぞ。

 ウルフも野生動物なのに、臭みがまるでない。
 食べ方を工夫するだけで、ここまでおいしくなるのか。

「このつけダレが、またいいですね」

「かなり辛いけど、大丈夫かい?」

「平気ですよ」

 聞けば、胃袋が熱くなるくらいの激辛ソースらしい。普通は少し垂らす程度なのだが、ボクはドバっと塗りたくってしまった。

 これは、バレてしまったか?

「いい、食いっぷりだねぇ。見てて惚れ惚れするぜ」

「母さんのシチューは、本当においしいんですよ。コーキさんに気に入っていただけで、なによりです」

 ガルバたちに、好評なだけだった。

「それにしても、コーキさん。エルフの学者様と旅をなさっているのは、どうしてなのです?」
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