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第一章 転生した身体は、木でできていた
第11話 魔法石で、武器作り
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ボクは、食べ物を詰まらせそうになる。
「そうね。コーキさんの旅がどんなものか、知りたいねえ」
アザレアもドナさんも、ボクのことに興味を示す。
「いやあ、なんといいますか」
ボクは、言葉を濁した。別の世界から来ましたなんて、言えないし。説明したところで、信じてもらえないだろう。
「さしずめ、正体は無一文の坊っちゃん、って可能性もあるな」
ガルバが、ボクの正体をそう推理する。
ボクが仮面を被っているから、ウッドゴーレムとわかっていないんだ。
「どうしてそのお金持ち王子様が、冒険しているの?」
「世直しのために、世界を見て回っているとかかもな」
「伝説に出てくる、隠居したおじいちゃんじゃん。コーキさんって、もっと若いと思うよ?」
「ちげえねえ」
二人は、ボクの正体を詮索するのをやめたようである。
食事を終えて、眠る時間となった。
「さてコーキ。ワタシはアザレアとオフロに入るけど、いっしょに入るかい?」
ボクはずっこけそうになって、大きくのけぞる。
「いやいやいや! 遠慮しておくよ!」
冗談じゃないよ。いくらボクがウッドゴーレムと言っても、魂は三〇代の成人男性なんだから。
「あはは。冗談だよ、じゃあ、上がったらキミも入りなよ。この機会を逃したら、もうオフロに入ることはないからね」
そっか。もうすぐダンジョンに向かうんだ。
でも、ボクの身体ってお湯に浸かっても大丈夫なのか?
その確認のためにも、入っておくべきだね。
一晩眠った後、ダンジョンへ向かう。
「コーキ。温かいベッド、よかったね」
「うん。当分は堪能できないけどね」
あの後、ボクもオフロに入ってみたんだが、軽くお湯を吸うだけだった。まったく、カビたりはしていない。
戦闘は主に、パロンとガルバたちが担当した。ショートソードに魔力付与をして、スパスパとウルフを切り裂く。なるほど、あれが魔法石の使い方なんだね。
アザレアは後方で弓を引いていたけど、たいていの魔物はガルバが仕留めていた。
「ファイアアローッ!」
パロンが、剣から魔法を撃つ。火の矢を放って、魔物を撃ち抜いている。
「武器を通せば、魔法は使えるよ。これが最初に会ったときに言った、『触媒』ってやつ」
ハイエルフの魔法使いは、触媒がなくても自分の肉体から魔法を打ち出すことができるという。自分の体自体が、触媒の役割を果たすからだ。
しかし、パロンはハーフエルフのため、それができない。触媒を介してしか、魔法を使えないのだ。パロンは魔法を使えない代わりに、魔法で動き、魔法を操れるマシンを作り出そうとした。
それがボクという、ウッドゴーレム【コーキ】なのだ。
「とーっ」
ボクも杖で殴ったりして、魔物を撃退する。弱いモンスターなら、肉弾戦で倒せるみたい。殴るだけなら、棍棒にしてもよかったかも。
「やるじゃん、コーキ! 戦闘職業じゃないから、心配したけど」
「えへへ。どうにか」
「魔物のツノも、魔法石だよ」
「そうなの?」
うさぎ型モンスターの亡骸から、小さいツノを失敬する。四匹いるが、一匹のツノは叩き割ってしまった。
「これを杖の先につけて、と」
合計三本のツノを、杖の先に突き刺した。
「ウルフの心臓にも、魔法石があるよ」
「そうなんだね。じゃあ。ごめんねー」
ウルフを食用にさばいた後、内臓から灰色の魔法石をもらう。
「パロンのいうとおり、本当に小さいや」
たしかにこれは、換金アイテムだな。
ついでに、夕飯となった。
「コーキさん。肉の処理は、任せてください」
「ありがとう、アザレア」
アザレアがウルフの肉を、辛い薬草を混ぜた焚き火で炙る。匂いを消すだけでなく、保存も効く。ウルフの干し肉は、冒険ではメジャーな食糧らしい。
昨日レタスに巻いて食べた部位とは、違う。
「こうやって薄切り干し肉にしてもいいんですが、こうやってナッツ類をまぶして骨付き肉にすると、おいしいんですよ」
アザレアのいうとおり、これは格別である。
食事を終えて、魔法の練習を行う。
ウルフの魔法石を換金用にするか、最終的なチェックをするのだ。
「魔法石を埋め込むために。よいしょっと」
ボクは焚き火用の枝に魔力を込めて、はてなマークのように曲げた。
「曲がった木の中心に、ウルフの魔法石を」
うまいこと、魔法石が杖の先端に埋まる。
「いくぞ。【ファイアボール】ッ」
身近にあった手頃な岩石に、ボクは火球を飛ばした。
火の玉は、岩めがけてまっすぐ飛ぶ。だが着弾後、プシュンと消えてしまった。
「ボクって、魔法の才能ないのかな?」
「ウルフの魔法石は、弱いからだよ。キミが戦闘向けのジョブじゃないのもある」
ボクがジョブとして選んだ『シャーマン』は、主にトーテムやペットに頼るファイトスタイルらしい。自分から攻撃するわけではないそうだ。
「強い魔物を狩れば、武器も強化できるよ」
魔法石は、他の魔法石と融合する作用があるらしい。だから、魔物たちは食い合うこともあるとか。
「じゃあ、こっちで」
三本の角で作った杖で、ファイアボールを放つ。
爆音とともに、岩が粉々に砕け散った。
◆ダンジョンへ
「うわっぷ!」
焚き火のそばにいたガルバが、あぐらをかいたまま宙に浮く。
木の上で夜を明かそうとしていた鳥たちも、一斉に逃げ出した。
悪いことをしちゃったなぁ。
「あそこまで、強い火力が出るなんて」
「いやあ、参ったね。コーキの力が、これほどまでだなんて」
「ちょっと危険だね」
「次は、コントロールを学んだほうがいいかもしれないね」
「うん」
ウルフの魔法石と、角三本のうち二本は、換金することに。
今だと火力が、過剰になってしまうからだ。
「そうね。コーキさんの旅がどんなものか、知りたいねえ」
アザレアもドナさんも、ボクのことに興味を示す。
「いやあ、なんといいますか」
ボクは、言葉を濁した。別の世界から来ましたなんて、言えないし。説明したところで、信じてもらえないだろう。
「さしずめ、正体は無一文の坊っちゃん、って可能性もあるな」
ガルバが、ボクの正体をそう推理する。
ボクが仮面を被っているから、ウッドゴーレムとわかっていないんだ。
「どうしてそのお金持ち王子様が、冒険しているの?」
「世直しのために、世界を見て回っているとかかもな」
「伝説に出てくる、隠居したおじいちゃんじゃん。コーキさんって、もっと若いと思うよ?」
「ちげえねえ」
二人は、ボクの正体を詮索するのをやめたようである。
食事を終えて、眠る時間となった。
「さてコーキ。ワタシはアザレアとオフロに入るけど、いっしょに入るかい?」
ボクはずっこけそうになって、大きくのけぞる。
「いやいやいや! 遠慮しておくよ!」
冗談じゃないよ。いくらボクがウッドゴーレムと言っても、魂は三〇代の成人男性なんだから。
「あはは。冗談だよ、じゃあ、上がったらキミも入りなよ。この機会を逃したら、もうオフロに入ることはないからね」
そっか。もうすぐダンジョンに向かうんだ。
でも、ボクの身体ってお湯に浸かっても大丈夫なのか?
その確認のためにも、入っておくべきだね。
一晩眠った後、ダンジョンへ向かう。
「コーキ。温かいベッド、よかったね」
「うん。当分は堪能できないけどね」
あの後、ボクもオフロに入ってみたんだが、軽くお湯を吸うだけだった。まったく、カビたりはしていない。
戦闘は主に、パロンとガルバたちが担当した。ショートソードに魔力付与をして、スパスパとウルフを切り裂く。なるほど、あれが魔法石の使い方なんだね。
アザレアは後方で弓を引いていたけど、たいていの魔物はガルバが仕留めていた。
「ファイアアローッ!」
パロンが、剣から魔法を撃つ。火の矢を放って、魔物を撃ち抜いている。
「武器を通せば、魔法は使えるよ。これが最初に会ったときに言った、『触媒』ってやつ」
ハイエルフの魔法使いは、触媒がなくても自分の肉体から魔法を打ち出すことができるという。自分の体自体が、触媒の役割を果たすからだ。
しかし、パロンはハーフエルフのため、それができない。触媒を介してしか、魔法を使えないのだ。パロンは魔法を使えない代わりに、魔法で動き、魔法を操れるマシンを作り出そうとした。
それがボクという、ウッドゴーレム【コーキ】なのだ。
「とーっ」
ボクも杖で殴ったりして、魔物を撃退する。弱いモンスターなら、肉弾戦で倒せるみたい。殴るだけなら、棍棒にしてもよかったかも。
「やるじゃん、コーキ! 戦闘職業じゃないから、心配したけど」
「えへへ。どうにか」
「魔物のツノも、魔法石だよ」
「そうなの?」
うさぎ型モンスターの亡骸から、小さいツノを失敬する。四匹いるが、一匹のツノは叩き割ってしまった。
「これを杖の先につけて、と」
合計三本のツノを、杖の先に突き刺した。
「ウルフの心臓にも、魔法石があるよ」
「そうなんだね。じゃあ。ごめんねー」
ウルフを食用にさばいた後、内臓から灰色の魔法石をもらう。
「パロンのいうとおり、本当に小さいや」
たしかにこれは、換金アイテムだな。
ついでに、夕飯となった。
「コーキさん。肉の処理は、任せてください」
「ありがとう、アザレア」
アザレアがウルフの肉を、辛い薬草を混ぜた焚き火で炙る。匂いを消すだけでなく、保存も効く。ウルフの干し肉は、冒険ではメジャーな食糧らしい。
昨日レタスに巻いて食べた部位とは、違う。
「こうやって薄切り干し肉にしてもいいんですが、こうやってナッツ類をまぶして骨付き肉にすると、おいしいんですよ」
アザレアのいうとおり、これは格別である。
食事を終えて、魔法の練習を行う。
ウルフの魔法石を換金用にするか、最終的なチェックをするのだ。
「魔法石を埋め込むために。よいしょっと」
ボクは焚き火用の枝に魔力を込めて、はてなマークのように曲げた。
「曲がった木の中心に、ウルフの魔法石を」
うまいこと、魔法石が杖の先端に埋まる。
「いくぞ。【ファイアボール】ッ」
身近にあった手頃な岩石に、ボクは火球を飛ばした。
火の玉は、岩めがけてまっすぐ飛ぶ。だが着弾後、プシュンと消えてしまった。
「ボクって、魔法の才能ないのかな?」
「ウルフの魔法石は、弱いからだよ。キミが戦闘向けのジョブじゃないのもある」
ボクがジョブとして選んだ『シャーマン』は、主にトーテムやペットに頼るファイトスタイルらしい。自分から攻撃するわけではないそうだ。
「強い魔物を狩れば、武器も強化できるよ」
魔法石は、他の魔法石と融合する作用があるらしい。だから、魔物たちは食い合うこともあるとか。
「じゃあ、こっちで」
三本の角で作った杖で、ファイアボールを放つ。
爆音とともに、岩が粉々に砕け散った。
◆ダンジョンへ
「うわっぷ!」
焚き火のそばにいたガルバが、あぐらをかいたまま宙に浮く。
木の上で夜を明かそうとしていた鳥たちも、一斉に逃げ出した。
悪いことをしちゃったなぁ。
「あそこまで、強い火力が出るなんて」
「いやあ、参ったね。コーキの力が、これほどまでだなんて」
「ちょっと危険だね」
「次は、コントロールを学んだほうがいいかもしれないね」
「うん」
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