ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

文字の大きさ
39 / 84
第四章 クレキシュ大渓谷と、魔王の元配下アルラウネ

第39話 砂漠に村ができた

しおりを挟む
「コーキ、村ができちゃったよ……」

 アプレンテスに作った規模と同程度の村が、砂漠に完成していた。

 砂漠緑化活動は、一ヶ月を要している。

 世界樹の力を持ってしても、ボクの見える範囲しか緑化は進まなかった。
 全ての砂漠エリアを緑に変える必要はない。

 それでも、村として生活できるレベルにまで、土壌は復活している。

 ボクの身体から生えた苗を、植林しただけだというのに。

 ゴーレム製の苗は、植えたら一晩で急激に成長する。
 その効果があったとしても、かなりのスピードだ。

「かつて魔王は、『一面を砂漠にすれば、王都も攻めてこられまい』と、思っておったという」

 朝ワインを飲みながら、賢人クコが語る。もう、誰も朝酒にツッコまない。

「クコって、魔王がいた時代にも生きていたの?」

「いや。ワシが産まれたころには、もう魔王は滅ぼされておった。コーキがその時代にいたら、活躍しておったろうな」

 植林で活躍する、冒険者って。
 
「いや。すぐに捕まって、燃やされて終わりだろうね」

「とんでもないっ。キミが産まれているってことは、ワタシだって生きているわけだからね。ワタシがキミを全力で守るよっ」

「ありがとう、パロン」

 他の森や林から、動物たちが元砂漠に戻ってきている。

 とても、魔王の領地だったという面影がない。
 
「さすがに砂漠に森なんて作れないと思っていたけど、やればできるもんだね」

「コーキの地道な努力の、おかげだよ」

 最初の一週間は、とにかく日差しを避けることに専念した。日よけのために植林し、少しずつ緑を増やしていく。

 大型犬くらい大きなシロアリが、ゴミや下水を食べて分解し、土地に豊富な栄養分を与える。地下に巣を作って、土壌に雨水を定着させるのだ。

 雨が降ってくるまで、ずっと別拠点のため池から水をこちらへ流し続けたけど。

 とにかく砂漠に植林して、安全に進めるようになってから、大渓谷へ出発することにした。

 その結果が、この拠点の完成である。

 おかげで、強烈な日差しも気にならない。

「雨が降ってきたときは、感動したよね」

「うむ。しかし、シロアリの被害も大きいのう」

 パロンとクコは、今後の緑化活動に懸念を抱いているようだ。

 シロアリたちは、ボクたちがせっかく植えた木々も、食べてしまっている。
 数%の樹木が、シロアリに食べられて空洞になっていた。

「大丈夫。それも想定済みだから」
 
 ボクはあえて、多めに木を育てているのだ。シロアリに、食べてもらうため。

 シロアリに分解してもらうことで、土壌に栄養がいきわたる。

 それを利用するため、ゴミや下水以外にもエサを用意したのだ。
 
 気がついたら、ボクが見ていなくても勝手に土壌が再生していた。王都まで、無事に植林が進みそうである。
 シロアリによる土壌再生効果に、植林が追従していた。
 ボクの身体から生やした木を植えているから、魔力も土に染み込んでいる。
 
 こういった地道な作業が、王都へとつながっていくのだ。

 ボクの目的は、王都への道をアプレンテスに作ることである。
 クレキシュ大渓谷の攻略なんて、後でいい。まずは拠点を作って、いつでも引き返せるようにする。

 王都への道づくりは、ボクの使命だとも思えた。おそらく、ボクにしかできない。アプレンテスを緑の生い茂る大地にしたボクなら、この砂漠だって通り抜けられるだろう。

「これでもう、砂漠地帯は安全かな?」

「そうだね」

 王都側についたら、そちらにまた植林していこう。

 ボクたちは、木馬を走らせた。

「うわ早いっ! 早いっ!」

 スポーツカー並みに爆速なんだけど!?
 いくら土が固くなって走りやすくなっているとはいえ、このスピードはないんじゃないの!?

「コーキの魔力が、無尽蔵になっているんだよ」
 
 上空から、パロンが超加速で追いかけてくる。

 スピードは上がっているが、植林のスピードはそれより高かった。ボクが進む道のりに先回りして、樹木が生えてくれる。
 おかげで、直射日光も気にならない。
 
 我ながら、とんでもない成長速度だ。

「レベルが上がるごとに、キミの魔力も膨れ上がっているからね。コーキの可能性は、無限大だよ」

 この成長度合いが、クレキシュ渓谷にも通じるといいけど。
 
「コーキ、見えてきたよ」

 木馬で一気に駆け抜けたからか、まる一日でクレキシュ渓谷郡に到着した。


 よくゴーレムたちも、水場を作りながら追いつけたな。彼らのほうがすごいかも。
 
 渓谷は、一面砂に包まれた渓谷だ。ここから先は、草が一本も生えていない。ずっと、嵐が吹き荒れている。せっかく引いている川も、砂で埋まってしまった。

「あそこを立て直せたら、道はもっと近くなるし、森も潤うんだけどね」

 とはいえ、川が枯れていて、アプレンテスまで水が引けない。

 渓谷に入る前に、水場を確保する。この場所に、緑を増やすためだ。

「よし。地下水作戦だ。ゴーレムはここで待機。ため池を作っておいて」

 ボクが作ったマッドゴーレムと、パロンが作ったクレイゴーレムに、それぞれ指示を送る。ダンジョンの探索にまでは、連れていけないからね。

 クレイゴーレムは丁寧にも、池に囲いまで作ってくれた。これで嵐で水が埋まってしまう心配はない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...