ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

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第四章 クレキシュ大渓谷と、魔王の元配下アルラウネ

第43話 スライムとの遭遇

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「とにかく、馬を引かなくても馬車を動かせたりはするかな?」

「じゃあ、コーキの方がすごいじゃん」

 そうなっちゃうのかぁ。まあ褒めてもらえるのは、悪い気はしないけど。

「いやいや、もっと速く走れるんだって」

「動かせる段階で、コーキのほうがすごいよ」

 これ以上問答をしても、パロンは意見を曲げなさそう。

 仕方なく、ボクは説明を続けた。

「この渓谷は、一部が円形に広がっている。それに、この辺りは山が大きい。水を貯めるにはぴったりだろう」

 ボクたちが作っている池より、遥かに大規模なダムである。異世界に、これだけ高度な施設があったなんて。

「その大型ダムが、水が枯れたことによって機能をなくしたと」

「あるいは、管理する人が逃げちゃったか」

 とにかく、大昔の人は、相当に高い文明を持っていたに違いない。こんなクラスのダムを作れるんだから。

「このダムって、いつ頃からあったんだろう?」

「構造的に、魔王が誕生したより、前にあったような気がするよ」

 古代文明を、魔王が奪い取って使っていた?

 だとしたら、どうして魔王を倒しても機能しているんだろう?

「この先に、植物の反応があるんだ。行ってみたいんだけど」

「いいよ。とことん探索して、謎を解き明かそう」

 休憩を終えて、ボクたちはさらに奥へと進むことにした。
 
「ダムって、コーキの世界にもあったんだよね? こんなアイアンゴーレムとかもいたの?」
 
「いないよ。点検担当者も警備員さんもいたけど、みんな人間だったよ」

 ロボットや監視カメラなど、ハイテクは使っているけど。

「先に行けば、ダムの水源が見つかるかも」

 休憩を終えて、ボクたちはさらに奥へ。

 広い空間に、たどり着いた。

 そこには、大きな箱型の魔物が棲み着いている。

「あの大型個体が、ボスみたい!」
 
 アイアンゴーレムの中で、ひときわ大きいモンスターがいた。戦車くらいのサイズだ。

 頭部の大砲が、こちらを狙う。

「危ないパロン」

 パロンの身体をつかんで、飛び上がる。

 同時に、砲撃が着弾した。火球は味方のゴーレムまで、ふっとばしちゃった。

「ホントに戦車みたいだね!」

 ゴーレムの砲撃から、ボクもパロンも逃げ惑う。さっきまでの敵とは段違いの強さである。

「ワシも忘れるなよ。【ソーンバインド】!」

 クコが、ツタの攻撃魔法で戦車ゴーレムの足を捕らえた。鉄と土魔法の相性が悪く、足程度しか絡ませられない。が、ボクが殴りかかるには十分だ。

 どうにか、他のゴーレムと同じ攻略法だったみたい。ツタを使って魔法石を抜き、ゴーレムをやっつけた。

「ん?」

 ニュルッと、液体状のモンスターが、大型機械の体から抜け出てくる。

「これはスライムだね」
 
 パロンの見立てでは、これはスライムというモンスターらしい。
 
 実際のスライムなんて、初めて見たよ。

 スライムはゼリー状の物体で、目が点々の黒豆である。ガチのファンタジー世界だから、もっとおどろおどろしい姿を想像したけど。

「なんか、弱っているみたいだけど」

 皮膚が弱いから、鉄で覆っていたのか。

「今のうちに、倒さないと」

「待ってパロン。あれを見て」

 とどめを刺そうとしたパロンを、ボクは止めた。

「ゴーレムが守っている先に、なにかあるよ」

 近づく度に、樹木のある反応が強くなっていく。この先には、きっと何かがあるはずだ。
 
「ホントだ。土の匂いがする」

 スライムの方も、ボクの手のひらでずっとおとなしい。

 土の香りを追って、ボクたちは先を進む。

「連れていくの?」
 
「なんかね、抵抗しなくなったんだ」
 
 ボクの身体に流れている魔力を、わずかながら吸っているような。
 
「スライム、死んでしまいそうだね」

「待って。ブドウをあげよう」

 ボクは、スライムにもブドウをあげた。

 よかった。食べてくれている。これで回復すればいいが。

「襲ってきたんだよ? コーキ、このコを助けるの?」

「この土地を守っていただけだよ。その防衛システムが、過剰だっただけで。話せばわかるかも」

 ボクたちだって、ここの土地を再生させに来たんだ。目的は同じじゃないか。

 しぼんでいたスライムは、段々と元気を取り戻す。ボクの肩の上で、ぴょんぴょん飛び跳ねた。色も心なしか、キレイになったような。泥のような茶色だったのに、みずみずしい水色に変わった。ブドウを食べたからだろう。やや紫っぽくなってくる?

「元気になったみたい」
 
 飛び跳ねるのをやめて、スライムはニューっと身体を伸ばした。

「どうした? 何をいいたいのかな?」

「なにか、指しているね。コーキ、行ってみよう」

 しばらく歩くと、出口が見えてきた。

「コーキよ、得体のしれぬ場所についたぞよ」

「なんだここは。ドーム?」

 土がある、ドーム状の広場まで出てくる。

 天井は、半円状のガラス窓に守られていた。

「コーキ、あれを見て!」

 パロンが、中央にある葉っぱを指差す。これは、なにかの苗か。

「……折れた、木?」

 広場の奥地に、しおれた木があった。

「こんなところに、木があるね?」

「木も何も、これ、世界樹のひとつだよ!」

 これも、世界樹?
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