ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

文字の大きさ
49 / 84
第四章 クレキシュ大渓谷と、魔王の元配下アルラウネ

第49話 農耕器具作り

しおりを挟む
「パロンがそこまで、強い発言をするなんてね」
 
「だって、少なからずワタシたちの生活にまで影響しているはずじゃん。でも、ワタシたちは異世界から来た人物は、コーキしか知らない。こちとら、長寿のハイエルフだよ? そんなワタシたちにさあ、伝承が行き渡っていないなんておかしいじゃんか」

 たしかに。
 仮に勇者か魔王、もしくは宗教団体の誰かが転生者だった場合、もっと世間は快適になっているはずだ。
 しかし、その文明は見当たらない。

「勇者か魔王だって、ひょっとしたら転生者だったかもしれない。それなら、変わった文明を持った一族だったって証明になる。しかし、それら文献をワタシは見たことがないよ」

 ボクが思っていたことを、パロンも語った。

 痕跡があれば、ボクにだってわかる。
 どこにもないということは、ボク以外に転生者はいないってことか。
 エルフのパロンが、ボク以外の転生者を知らないって言うなら、そのとおりなのかもね。

 事実、クレキシュ大渓谷の技術は、魔法が中心だった。科学力が使われていたが、それも一部である。文化レベルも、相当低かった。魔法に依存している様子が、うかがえる。

「だから、安心しておコメを育てたら?」

「それもそうだね」

 おコメに罪はない。

 ありがたく、ボクたちでいただくことにしよう。

「ささ、おいしいおコメを作ってくれるんだろ? 作業に戻ろう」

「そうだね」
 
 種モミを苗にしている間、田んぼを作る。ゴーレムにも手伝ってもらい、適当な広さに耕す。本当にアバウトだ。探り探りで。魔物の死体を混ぜた腐葉土を、肥料にした。スライムも手伝ってくれる。

「はあ、はあ、ひい」

 クワを振りながら、思った。ボクたちだけでやると、ちょっと時間がかかり過ぎかな、と。

 広すぎて、全然先に進まないや。パロンが作った農具でも、手間がかかる。

 移民のみんなが手分けして耕してくれても、人力では限界があった。

「麦も大変だけど、コメも苦労するね」

 イチから作るとなると、どんな作物も一筋縄ではいかない。

 牛がすきを引いて、がんばっている。
 のっそりのっそりと、田んぼが出来上がっていった。

 それもそれで、癒やされる。

 とはいえ、もうちょっとスピードを上げたいね。
 
「よし」

 ボクは倉庫から、壊れたイスや古くなった馬車を出す。用途をどうしようか、悩んでいたものばかりだ。腐らせてキノコを生やすか、腐葉土に混ぜちゃうかと思って、一応保管しておいたのである。

 今は、トレント世界樹がくれた鉄もあった。これなら、アレが作れるかも。

「ここをこうして、こうだ」
 
 頭の中に機械をイメージして、組み立てていく。
 
「できた!」

 壊れた馬車を、田んぼ用のマシンに改造した。ゴーレムと融合させて、ボクがいなくても動かせるようにする。我ながら、いい出来ではないか。

「コーキ、なにそれ?」
 
「トラクターだよ。ボクのいた世界にある、農作物用の機械……カラクリだね。手早く畑を耕せる、道具なんだ」

 さっそくトラクターに乗り込んで、畑を耕す。

 ハンドルを動かすボクの姿に、アザレアやガルバが羨望の眼差しを向けている。

「やってみます?」

「頼む! 乗せてくれ!」

 ボクは承諾して、みんなの分もトラクターを作った。

 これで、鉄は使い切っちゃったかな。

「一つの田んぼにつき、一台ですよー」

「おーう」

 移民たちが、それぞれ自分たちの田んぼで、トラクターを動かす。

 ボクの魔力で動く木製トラクターが、畑を田んぼに変えていく。

 仕組みもボクはよくわかっていないし、耕運の知識なんてなにもない。

 けど、たしかにトラクターは動いている。他の人が動かしても、十分に働いていた。

「すっごいね。すぐに田んぼができあがったよ」
 
「こういうのって、手でやったほうがいいのかな、って思っていたけど」

 異世界を題材にした作品でも、コメ作りってたいてい手作業だよね。

「ドローンができたからね。トラクターなんかも作れるんじゃないかって」
 
 ボクも手作業にするか迷ったが、結局トラクターなどの農業機械を使うことにした。あと、作れるから、というコトもある。冒険に出る可能性もあるから、誰かに任せたいという考えもあった。

 あっという間に育った苗を、泥に植えていく作業を始める。 

 この調子で、どんどん田んぼ用の機械を作った。

「さて、ボクは田植え機も作っておこう」

 田植え用の機械も、開発する。

「ねえコーキ、ワタシはどうしていようか?」

 パロンたちのおコメは、ボクが作っているからね。クコも、することがない。

「じゃあ、作物用の防虫剤を作ってくれる? 空から撒けるように、道具も作っておくよ」

 栄養がたっぷり詰まっている作物は、虫も大好物だ。また、病気にもなりやすい。

 虫が逃げていき、病気をも防げる薬品は、作っておきたい。

 完全無農薬野菜は、たしかに健康的である。
 けど、他の畑も同様の処置をしておかないと、被害が出てしまう。土から作り直しになっちゃったり。
 そのため無農薬栽培者は、それ以外の農家に嫌われたりするのだ。
 
 薬学に詳しいパロンなら、きっとその問題を解決してくれるはず。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

転生したら無自覚に世界最強になっていた件。周りは僕を崇めるけど、僕自身は今日も日雇い仕事を探しています。

黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ異世界に転生した元サラリーマンの星野悠。 彼に与えられたのは「異常な魔力」と「無自覚に魔術を使う能力」。 しかし自己評価が低すぎる悠は、自分のチート能力に全く気づかない。 「困っている人を助けたい」――その純粋な善意だけで、魔物を一撃で消滅させ、枯れた大地を蘇らせ、難病を癒してしまう。 周囲が驚愕し、彼を英雄と崇めても、本人は「たまたまです」「運が良かっただけ」と首を傾げるばかり。 これは、お人好しな青年が、無自覚なまま世界を救ってしまう、心温まる勘違いと奇跡の物語。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

処理中です...