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第五章 新たな仲間、姫騎士
第51話 新生 ネイス・クロトン村
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田んぼを作った後、ボクたちは外出する。
ツリーイェンの街に、渓谷郡を攻略した報告をするためだ。
「この木馬は、早いな!」
「ボクの魔力が流れて、このスピードなので。他の人が乗ったら、たいして速度は出ないかと」
木馬をぶっ飛ばすボクを、リオンが追いかけてくる。
「そうか。コーキなら仕方ないな」
さすがのリオンも、商品化はあきらめたっぽい。
ツリーイェンに到着して、ボクは馬を止めた。
「うわ、なんだいこりゃあ! ってコーキかよ」
木馬を見て、ツリーイェンの門番さんが腰を抜かす。
「ボクが作った、木馬ですよ。害はありません」
「なら、いいけどよ」
木馬を見て、門番さんが驚いていた。ボクが作ったと言ったら、納得してくれたけど。
それにしても、道がきれいになった。水が土に行き渡るようになったからか、雑草や花も目立つ。以前は土が枯れ果てて、ひび割れていたのに。
冒険者ギルドに、報告だ。
「こんにちは、ギンコさん」
受付のメイドさんに、あいさつをする。
「よお、コーキ。ほほお、クレキシュ渓谷郡を突破したのか。やるじゃないか」
ギンコさんは、ボクの冒険者ランクをアップしてくれる。
「素材も、すごいじゃないか」
まあ、ほとんどがトレントの鉱石なんだけどね。
「アルラウネのメシベまで、あるじゃないか。どうしたんだ? 魔王の配下だった魔物だろ?」
「どうも渓谷に、悪党のアジトがあったみたいで」
世界樹がそこに封じられていたと、告げた。
悪党は滅びていたが、そこにアルラウネが棲み着いて悪さをしていたと。
「ああ。それで、あそこらへんの魔物が強かったのか」
ギンコさんが、ため息をつく。
「魔法使いなんざ大昔から、まともなことをしてこなかった。ツケが回ったのさ。その歪みを正してくれているのが、ハイエルフってわけだ」
ハイエルフたちは、自然や魔法を本来ある形に正したという。
まあ、そのせいでパロンも異端扱いされちゃったみたいだけど。
「ワタシはいいんだよ。エルフ界には、彼らなりの正しさがある。ワタシ一人が認められたいために、彼らの教義を歪めたりしたくないよ」
パロンは、ハイエルフたちと争うつもりはない。
いがみ合っているわけじゃないとわかった以上、ボクも認識を改めさせようといった気持ち
はなくなった。
「アジトで取れた財宝なんですが、どうしましょう」
「持っておきな。換金するってんなら別だが」
「ギルドで、調査なさってください。ボクはもうほとんどを、使ってしまったので」
さんざん活用してなお、これだけ余っているのである。
「そうかい? では、換金扱いさせてもらおうか」
ギンゴさんが、アジトの財宝を金貨に交換する。
「こんなにもらっても」
ボクタチは、ポーション事業でそれなりに稼げている。栽培など、
「いいから持っておきな。現金は強いよ。それに、あんたらはそれを受け取るほどの仕事をしたんだ。冒険者ランクを二、いや三段階くらい上げたって、お釣りが来るくらいだったんだからね」
「じっくり強くなっていきます。ではこれで」
一気に、お金持ちになっちゃった。
「パロン、キミが使ってよ。ボクじゃ役に立たない」
ボクはお腹もすかない。こういうのは、生活費が必要な人が持つべきだろう。
「ワタシも必要ないんだよね。そうだ。石や鉄を加工できる人を探そうよ」
「ドワーフとかいう種族?」
いるかどうかわからないけど、一応尋ねてみる。
「よく知っているね。そうそうドワーフ。北にいるらしいんだけど」
ドワーフなら、素人のボクらより石や鉄に詳しいかも。
「彼らを雇うかもしれないから、お金はソレまで取っておこう」
「うん。わかったよ」
ムダづかいせず、保管することに。
ツリーイェン近隣にある村にも、おコメを分けてあげた。
炊きあがったおコメを、みんなでおにぎりにして食べている。
「ありがとうございます。なんとお礼を言っていいやら」
おコメを食べて、村長がお礼を言う。
「我が村の若者が、クロトン村に何人か越していきました。独り立ちできるか心配でしたが、こんな立派に仕事を」
村長が、しみじみとおにぎりを噛みしめる。
「クロトン村? アプレンテスの村には、そんな名前があったんですね?」
廃村だから、名前なんてないだろうと思っていたけど。
「はい。とはいえ、こんな立派な村じゃなくて。我々のおじいさんのおじいさんが子供の頃から、廃村になっていたそうです」
そんな昔から、この村は見放されていたんだね。
「以前から、そろそろ村の名前を考えないと、って思っていたけど」
人も増えたし、村として機能しないと、人が安心してこられないよね。
なにより、お姫様が王都からいらっしゃるらしいし。
はじめからクロトン名前があったんなら、考えなくてもいいか。
「でもクロトンってまんまの名前だったら、昔を知っている人は警戒するかも」
「たしかにそうですなあ」
ボクの意見に、村長も同意する。
魔王との争いを覚えている長寿の種族だって、探せばいるだろうし。
「じゃあ、ネイス・クロトン村って名付けよう」
パロンが提案してきた。
「ネイスって?」
「この世界で、『再生』を意味する言葉だよ。ちなみにクロトンは『大地』という意味でさ」
再生する大地の村……それは、いい言葉だね。
世界樹が育つ村としては、最高だ。
ツリーイェンの街に、渓谷郡を攻略した報告をするためだ。
「この木馬は、早いな!」
「ボクの魔力が流れて、このスピードなので。他の人が乗ったら、たいして速度は出ないかと」
木馬をぶっ飛ばすボクを、リオンが追いかけてくる。
「そうか。コーキなら仕方ないな」
さすがのリオンも、商品化はあきらめたっぽい。
ツリーイェンに到着して、ボクは馬を止めた。
「うわ、なんだいこりゃあ! ってコーキかよ」
木馬を見て、ツリーイェンの門番さんが腰を抜かす。
「ボクが作った、木馬ですよ。害はありません」
「なら、いいけどよ」
木馬を見て、門番さんが驚いていた。ボクが作ったと言ったら、納得してくれたけど。
それにしても、道がきれいになった。水が土に行き渡るようになったからか、雑草や花も目立つ。以前は土が枯れ果てて、ひび割れていたのに。
冒険者ギルドに、報告だ。
「こんにちは、ギンコさん」
受付のメイドさんに、あいさつをする。
「よお、コーキ。ほほお、クレキシュ渓谷郡を突破したのか。やるじゃないか」
ギンコさんは、ボクの冒険者ランクをアップしてくれる。
「素材も、すごいじゃないか」
まあ、ほとんどがトレントの鉱石なんだけどね。
「アルラウネのメシベまで、あるじゃないか。どうしたんだ? 魔王の配下だった魔物だろ?」
「どうも渓谷に、悪党のアジトがあったみたいで」
世界樹がそこに封じられていたと、告げた。
悪党は滅びていたが、そこにアルラウネが棲み着いて悪さをしていたと。
「ああ。それで、あそこらへんの魔物が強かったのか」
ギンコさんが、ため息をつく。
「魔法使いなんざ大昔から、まともなことをしてこなかった。ツケが回ったのさ。その歪みを正してくれているのが、ハイエルフってわけだ」
ハイエルフたちは、自然や魔法を本来ある形に正したという。
まあ、そのせいでパロンも異端扱いされちゃったみたいだけど。
「ワタシはいいんだよ。エルフ界には、彼らなりの正しさがある。ワタシ一人が認められたいために、彼らの教義を歪めたりしたくないよ」
パロンは、ハイエルフたちと争うつもりはない。
いがみ合っているわけじゃないとわかった以上、ボクも認識を改めさせようといった気持ち
はなくなった。
「アジトで取れた財宝なんですが、どうしましょう」
「持っておきな。換金するってんなら別だが」
「ギルドで、調査なさってください。ボクはもうほとんどを、使ってしまったので」
さんざん活用してなお、これだけ余っているのである。
「そうかい? では、換金扱いさせてもらおうか」
ギンゴさんが、アジトの財宝を金貨に交換する。
「こんなにもらっても」
ボクタチは、ポーション事業でそれなりに稼げている。栽培など、
「いいから持っておきな。現金は強いよ。それに、あんたらはそれを受け取るほどの仕事をしたんだ。冒険者ランクを二、いや三段階くらい上げたって、お釣りが来るくらいだったんだからね」
「じっくり強くなっていきます。ではこれで」
一気に、お金持ちになっちゃった。
「パロン、キミが使ってよ。ボクじゃ役に立たない」
ボクはお腹もすかない。こういうのは、生活費が必要な人が持つべきだろう。
「ワタシも必要ないんだよね。そうだ。石や鉄を加工できる人を探そうよ」
「ドワーフとかいう種族?」
いるかどうかわからないけど、一応尋ねてみる。
「よく知っているね。そうそうドワーフ。北にいるらしいんだけど」
ドワーフなら、素人のボクらより石や鉄に詳しいかも。
「彼らを雇うかもしれないから、お金はソレまで取っておこう」
「うん。わかったよ」
ムダづかいせず、保管することに。
ツリーイェン近隣にある村にも、おコメを分けてあげた。
炊きあがったおコメを、みんなでおにぎりにして食べている。
「ありがとうございます。なんとお礼を言っていいやら」
おコメを食べて、村長がお礼を言う。
「我が村の若者が、クロトン村に何人か越していきました。独り立ちできるか心配でしたが、こんな立派に仕事を」
村長が、しみじみとおにぎりを噛みしめる。
「クロトン村? アプレンテスの村には、そんな名前があったんですね?」
廃村だから、名前なんてないだろうと思っていたけど。
「はい。とはいえ、こんな立派な村じゃなくて。我々のおじいさんのおじいさんが子供の頃から、廃村になっていたそうです」
そんな昔から、この村は見放されていたんだね。
「以前から、そろそろ村の名前を考えないと、って思っていたけど」
人も増えたし、村として機能しないと、人が安心してこられないよね。
なにより、お姫様が王都からいらっしゃるらしいし。
はじめからクロトン名前があったんなら、考えなくてもいいか。
「でもクロトンってまんまの名前だったら、昔を知っている人は警戒するかも」
「たしかにそうですなあ」
ボクの意見に、村長も同意する。
魔王との争いを覚えている長寿の種族だって、探せばいるだろうし。
「じゃあ、ネイス・クロトン村って名付けよう」
パロンが提案してきた。
「ネイスって?」
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