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第五章 新たな仲間、姫騎士
第54話 ネイス・クロトン村に、ギルド設立
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「ワタクシは、トレント型世界樹の遺伝子によって作られた存在です。コーキさまの手によって、さらに知恵までいただきました。おかげで、言葉を話せるようになったのです」
ボクが関わったことで、美少女に変身する能力まで手に入れたとも。
「ボク、そんなこと、したっけ?」
全然、心当たりがない。
「なさったでは、ありませんか。たくさん、果物をくださって」
たしかに、ボクはスライムにブドウをあげた。それだけで、会話ができるようになるとは思えないけど。
「あなたとの契約において、翻訳機能が必要だと、さる女神から」
「ああ。転生の特典みたいな感じ?」
あのネコが、話していたことか。
「そうです。異世界人で力を持たない人だから、会話機能があれば意思疎通が容易だと言われまして、つけてくださいました」
だとしたら、女神さまさまかな?
とにかく、話し相手が増えたのはありがたいことだよ。
「じゃあピオナ、あなたをネイス・クロトン村の村長に任命します」
「みなさん、お願いします」
ピオナは、村人から盛大な拍手で迎えられた。誰一人、反論する人はいない。
「さっそくだけど、ピオナをツリーイェンに紹介するね」
「よろしくお願いします」
ボクたちはピオナを連れて、馬車を走らせた。
「ずいぶんと賑やかだね」
ツリーイェンで、さっそくギンコさんから冷やかされる。
「あ、ギンコさん」
「どうしたい、そのべっぴんさんは? あんたの新しいお嫁さんかい?」
「新しいってなんですか?」
なんだか、聞き捨てならない発言が。
「だって、そうじゃないか。こっちではアザレアを口説いて、コラシェルでは天涯孤独になった商人の娘を引き取って、おまけに嫁がドリアードだ。驚いちまうよ」
「いつからボクは、そんなプレイボーイになっちゃったんです?」
どうも、ウワサにオヒレが付きまくっている。
「はじめまして。ドリアードのピオナと申します。忙しいコーキ様に代わり、ネイス・クロトンの村を管理することとなりました」
「そうかい。よろしく頼むよ」
ピオナはギンコさんの手引で、各種手続きを済ませた。主に依頼書の転送や、素材取引のイロハなどを聞く。
「まあ、しっかりしたレディじゃないか。どっかの魔女様とは大違いだ」
「たしかに、ワタシはなにも覚えられなかったけどさっ」
パロンが、ふてくされる。
「そうそう。王都から、報告だよ。新しい村の名前が決定したなら、ギルドを建ててくれないか、ってさ」
商業キルドと冒険者ギルドを、建ててみてはどうかという。
ツリーイェンの受付嬢が、ここのギルマスになってくれるだなんて。
たしかに、いい提案だ。取引も盛んに行われる可能性がある。
「お願いします。名前はネイス・クロトン村といいます」
簡単な事務手続きをして、ここを正式に村として登録するという。
正規の村じゃないから、誰も訪れなかったんだね。
「やったねコーキ。これで、冒険者ギルドも建てられるよ」
「でも、ギルマスを雇わないと」
このあたりで腕のいい冒険者ってなると、ガルバあたりになるのかな。
「ガルバはねえ。お嫁さんの尻に敷かれているようじゃ、ギルマスってのは務まらないよ」
パロンが、難色を示す。
横にいたガルバも、言い返せない。
「みっともないよ。父ちゃん」
「面目ない。だが、あの化け物だらけの荒野でギルマスってなると、オレじゃ力不足なのは確かだ」
残念ながら、ガルバの言うとおりだ。
ボクだって、ガルバの腕を信用していないわけじゃない。
とはいえ、危険すぎる。
「心配ない。アタシがあそこのギルマスとして、派遣される予定だ」
なんと、ギンコさんがギルマスを買ってでてくれるらしい。
「ギンコ、いいの? 現役から離れて、結構な時間が経っているでしょ?」
「腕の心配かい? あんたのトーテムに頼らなくても、魔物はやっつけてきたよ」
ネイス・クロトンへの手土産として、ギンコさんは魔物の素材を大量にくれた。すべて、自分で狩ってきたものだという。
「すごいね。現役バリバリじゃん。けど、ツリーイェンはどうするの?」
「妹が、管理してくれるってさ。カナンっていうんだけどね」
ツリーイェンは元々、ギンコさんとカナンさん姉妹で管理していたそうだ。片方がいなくなっても、問題はないらしい。
「他に必要なのは、商業ギルドだね」
パロンが、また頭を悩ませる。
「そっちは、リオンに任せようって話がついている」
「俺が、ですか?」
リオンが、自分を指さした。
「あんた、前から『自分で商会を開きたい』って、ずっと言っていたじゃないか。ちょうどいい機会だよ」
コラシェルに財団を構える、ティンバーさんからの推薦状を、ギンコさんがリオンに渡す。
「そうですけど、いきなりあんなデカい規模のギルドを任されるなんて」
「どうせ、売買も薬草レベルだよ。難しいことなんてないって。それに、あの村に滞在していたら、ずっとチェスナといっしょにいられるじゃないか」
「やる」
うわ、わかりやすい。
それにしてもギンコさん、リオンの手懐け方に慣れている。
「ギンコ。どうしてそこまで、ウチに肩入れしてくれるんだい? やけに、手が早いじゃないか」
「察しがいいね、パロン。実は、早い話が王都の監視対象になってる」
「この村が?」
「違う。コーキが、だ」
ボクが関わったことで、美少女に変身する能力まで手に入れたとも。
「ボク、そんなこと、したっけ?」
全然、心当たりがない。
「なさったでは、ありませんか。たくさん、果物をくださって」
たしかに、ボクはスライムにブドウをあげた。それだけで、会話ができるようになるとは思えないけど。
「あなたとの契約において、翻訳機能が必要だと、さる女神から」
「ああ。転生の特典みたいな感じ?」
あのネコが、話していたことか。
「そうです。異世界人で力を持たない人だから、会話機能があれば意思疎通が容易だと言われまして、つけてくださいました」
だとしたら、女神さまさまかな?
とにかく、話し相手が増えたのはありがたいことだよ。
「じゃあピオナ、あなたをネイス・クロトン村の村長に任命します」
「みなさん、お願いします」
ピオナは、村人から盛大な拍手で迎えられた。誰一人、反論する人はいない。
「さっそくだけど、ピオナをツリーイェンに紹介するね」
「よろしくお願いします」
ボクたちはピオナを連れて、馬車を走らせた。
「ずいぶんと賑やかだね」
ツリーイェンで、さっそくギンコさんから冷やかされる。
「あ、ギンコさん」
「どうしたい、そのべっぴんさんは? あんたの新しいお嫁さんかい?」
「新しいってなんですか?」
なんだか、聞き捨てならない発言が。
「だって、そうじゃないか。こっちではアザレアを口説いて、コラシェルでは天涯孤独になった商人の娘を引き取って、おまけに嫁がドリアードだ。驚いちまうよ」
「いつからボクは、そんなプレイボーイになっちゃったんです?」
どうも、ウワサにオヒレが付きまくっている。
「はじめまして。ドリアードのピオナと申します。忙しいコーキ様に代わり、ネイス・クロトンの村を管理することとなりました」
「そうかい。よろしく頼むよ」
ピオナはギンコさんの手引で、各種手続きを済ませた。主に依頼書の転送や、素材取引のイロハなどを聞く。
「まあ、しっかりしたレディじゃないか。どっかの魔女様とは大違いだ」
「たしかに、ワタシはなにも覚えられなかったけどさっ」
パロンが、ふてくされる。
「そうそう。王都から、報告だよ。新しい村の名前が決定したなら、ギルドを建ててくれないか、ってさ」
商業キルドと冒険者ギルドを、建ててみてはどうかという。
ツリーイェンの受付嬢が、ここのギルマスになってくれるだなんて。
たしかに、いい提案だ。取引も盛んに行われる可能性がある。
「お願いします。名前はネイス・クロトン村といいます」
簡単な事務手続きをして、ここを正式に村として登録するという。
正規の村じゃないから、誰も訪れなかったんだね。
「やったねコーキ。これで、冒険者ギルドも建てられるよ」
「でも、ギルマスを雇わないと」
このあたりで腕のいい冒険者ってなると、ガルバあたりになるのかな。
「ガルバはねえ。お嫁さんの尻に敷かれているようじゃ、ギルマスってのは務まらないよ」
パロンが、難色を示す。
横にいたガルバも、言い返せない。
「みっともないよ。父ちゃん」
「面目ない。だが、あの化け物だらけの荒野でギルマスってなると、オレじゃ力不足なのは確かだ」
残念ながら、ガルバの言うとおりだ。
ボクだって、ガルバの腕を信用していないわけじゃない。
とはいえ、危険すぎる。
「心配ない。アタシがあそこのギルマスとして、派遣される予定だ」
なんと、ギンコさんがギルマスを買ってでてくれるらしい。
「ギンコ、いいの? 現役から離れて、結構な時間が経っているでしょ?」
「腕の心配かい? あんたのトーテムに頼らなくても、魔物はやっつけてきたよ」
ネイス・クロトンへの手土産として、ギンコさんは魔物の素材を大量にくれた。すべて、自分で狩ってきたものだという。
「すごいね。現役バリバリじゃん。けど、ツリーイェンはどうするの?」
「妹が、管理してくれるってさ。カナンっていうんだけどね」
ツリーイェンは元々、ギンコさんとカナンさん姉妹で管理していたそうだ。片方がいなくなっても、問題はないらしい。
「他に必要なのは、商業ギルドだね」
パロンが、また頭を悩ませる。
「そっちは、リオンに任せようって話がついている」
「俺が、ですか?」
リオンが、自分を指さした。
「あんた、前から『自分で商会を開きたい』って、ずっと言っていたじゃないか。ちょうどいい機会だよ」
コラシェルに財団を構える、ティンバーさんからの推薦状を、ギンコさんがリオンに渡す。
「そうですけど、いきなりあんなデカい規模のギルドを任されるなんて」
「どうせ、売買も薬草レベルだよ。難しいことなんてないって。それに、あの村に滞在していたら、ずっとチェスナといっしょにいられるじゃないか」
「やる」
うわ、わかりやすい。
それにしてもギンコさん、リオンの手懐け方に慣れている。
「ギンコ。どうしてそこまで、ウチに肩入れしてくれるんだい? やけに、手が早いじゃないか」
「察しがいいね、パロン。実は、早い話が王都の監視対象になってる」
「この村が?」
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