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第五章 新たな仲間、姫騎士
第55話 村人増加中
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どうも、ボクはとんでもない大活躍をしていたらしい。
「荒れ地だったアプレンテスにも、調査隊が派遣されたらしい」
ティンバーさんから、そう報告を受けたという。
あいにくティンバーさんたちは船旅だったそうで、ボクたちの村には滞在しなかったそうだ。
「で、怪しい動きがないか監視しろってさ」
「王都が、動いたんだね?」
「そういうこった。どっちかっていうと、『見守ってやってくれ』ってニュアンスだったけどね」
「ティンバーが?」
「王都が、かな」
ボクが変な組織や国家に利用されないよう、見張っていてほしいと。
「アタシも同感だ。コーキは、お人好しだからさ」
「わかる。コーキは、いいやつだからね」
「とにかく、アタシは村に滞在させてもらうよ。コーキに悪い虫がつかないように、さ」
こうして、ギンコさんがネイス・クロトン村の一員となった。
ギンコさんは、自分で好きな場所に家を建てる。簡易的な冒険者ギルドも設立して、いよいよ村もそれっぽくなってきた。
リオンも、商業ギルドを立ち上げる。仲間をどんどんと、ネイス・クロトン村に呼んでいるという。
~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~
◆ 幕間 世界樹と王女 ◆
「……いったい、どういうことだ?」
調査隊を率いるヴェリシモ・ダリエンツォ王女は、眼の前の光景に唖然となった。
アプレンテスの方角から雨雲が流れてきたと聞いたときは、耳を疑ったが。
本当に、雨が降っていた。
荒野アプレンテスに、恵みの雨が振り続けている。
幼少期に父の手で連れてきてもらったときは、見渡す限り干ばつ地帯だった。「この地はかつて魔王と人類との戦場だった」と、教わったものである。一国の主である父でさえ、アプレンテスの向こうへは近づこうとしなかった。
今は、花が咲く楽園が広がっている。地面が水を吸って、草を生やす。
だが、それもつかの間であった。瞬く間に雨雲が空を覆い、大雨に襲われる。
「すごいですね! まるで嵐だ」
嵐も一瞬で止み、今度は雪が降ってきたではないか。
「なんだこれは、四季を数時間で体感しているようだ」
天気が変わっていくというより、世界がひとつできあがるような勢いだ。
とにかく、眼の前の山までたどり着けば、体を落ち着かせることができるだろう。
「王女、見えてきました!」
「あれが世界樹だと? ただの山じゃないか」
「違います、あの山みたいに見えているのが、世界樹そのものです!」
まさか、探し回っていた世界樹が、眼の前の山だったとは。
「これは、とんでもないな」
世界樹の木陰で、ヴェリシモは馬から降りた。
「まだ昼間なのに、夜ができている」
正確には、世界樹があまりにも大きすぎて、木陰が夜のように暗いのだ。
「大きな川が、木の根から流れてきています!」
調査をしていた騎士が、報告をしに来る。
ポツポツと、常に小雨が降り続けていた。
アプレンテスに雨が降っていることも、不思議だというのに。
大木の群れは、下手をすると王都より大きいのでは?
「ゴミが、ものすごいな」
木クズや木片、傷んだ装備品など、大量のゴミが地面を占拠していた。
王都へ、「アプレンテスにゴミの不法投棄をしている輩がいる」との報告があったばかり。
「シロアリだ!」
人間より巨大なシロアリが、ワサワサと群がってきた。
「シロアリの魔物だ! 備えよ!」
ヴェリシモが、部下に指示を出す。
剣を構えたが、当のシロアリ共は調査隊を無視した。一心不乱にゴミをかき集め、木のクズを食べては排泄する。
その排泄物から、植物の芽が出始めた。
あちこちにはシロアリの死骸が散乱し、アプレンテスの強い日差しを妨げている。
「まさか。地面が濡れているのは、ゴミが日よけになっているからでは?」
ヴェリシモは、剣を収めた。
ゴミ類を投棄している場所は、シロアリの活動領域のみに限定されているようだ。
投棄の犯人は、ゴミを意図的に投棄した可能性がある。シロアリの習性を見越して。
「害虫でしかないと思っていたシロアリを、荒野の緑化に利用するとは」
調査対象がこれをやったというなら、相手はすごい人物なのかも知れない。
木陰の土はジメジメとしていて、手足の生えたキノコ類のモンスターがウロウロしている。
「曲者!」
騎士の一人が、剣を抜こうとした。
「やめろ。こちらに害を与えようとしている気配はない」
ヴェリシモは、騎士を止める。
フェアリーが、歩いているキノコの傘に乗って昼寝をしていた。
どうもあのキノコも、精霊かなにかのようだ。
国王からは、十分に警戒するように注意を受けている。
だが、ここまで予想に反する光景が見られるとは。
「実に、実に平和だ」
できるなら、ずっとここにいたい。そう思わされるほど、平和そのものの景色が広がっていた。
これが、世界樹というものか。
しかし、のんびりするためにここを訪れたわけじゃない。
調査隊の魔術師が、世界樹の葉や根っこの一部を採取して、分析をした。
「有害な成分はあるか?」
「ございません。それにしても、驚異的な成長速度です。姫様がおっしゃっていたとおり、本当に世界が完成したかのような」
「とにかく、アプレンテスに新しくできた村を探すぞ」
「荒れ地だったアプレンテスにも、調査隊が派遣されたらしい」
ティンバーさんから、そう報告を受けたという。
あいにくティンバーさんたちは船旅だったそうで、ボクたちの村には滞在しなかったそうだ。
「で、怪しい動きがないか監視しろってさ」
「王都が、動いたんだね?」
「そういうこった。どっちかっていうと、『見守ってやってくれ』ってニュアンスだったけどね」
「ティンバーが?」
「王都が、かな」
ボクが変な組織や国家に利用されないよう、見張っていてほしいと。
「アタシも同感だ。コーキは、お人好しだからさ」
「わかる。コーキは、いいやつだからね」
「とにかく、アタシは村に滞在させてもらうよ。コーキに悪い虫がつかないように、さ」
こうして、ギンコさんがネイス・クロトン村の一員となった。
ギンコさんは、自分で好きな場所に家を建てる。簡易的な冒険者ギルドも設立して、いよいよ村もそれっぽくなってきた。
リオンも、商業ギルドを立ち上げる。仲間をどんどんと、ネイス・クロトン村に呼んでいるという。
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◆ 幕間 世界樹と王女 ◆
「……いったい、どういうことだ?」
調査隊を率いるヴェリシモ・ダリエンツォ王女は、眼の前の光景に唖然となった。
アプレンテスの方角から雨雲が流れてきたと聞いたときは、耳を疑ったが。
本当に、雨が降っていた。
荒野アプレンテスに、恵みの雨が振り続けている。
幼少期に父の手で連れてきてもらったときは、見渡す限り干ばつ地帯だった。「この地はかつて魔王と人類との戦場だった」と、教わったものである。一国の主である父でさえ、アプレンテスの向こうへは近づこうとしなかった。
今は、花が咲く楽園が広がっている。地面が水を吸って、草を生やす。
だが、それもつかの間であった。瞬く間に雨雲が空を覆い、大雨に襲われる。
「すごいですね! まるで嵐だ」
嵐も一瞬で止み、今度は雪が降ってきたではないか。
「なんだこれは、四季を数時間で体感しているようだ」
天気が変わっていくというより、世界がひとつできあがるような勢いだ。
とにかく、眼の前の山までたどり着けば、体を落ち着かせることができるだろう。
「王女、見えてきました!」
「あれが世界樹だと? ただの山じゃないか」
「違います、あの山みたいに見えているのが、世界樹そのものです!」
まさか、探し回っていた世界樹が、眼の前の山だったとは。
「これは、とんでもないな」
世界樹の木陰で、ヴェリシモは馬から降りた。
「まだ昼間なのに、夜ができている」
正確には、世界樹があまりにも大きすぎて、木陰が夜のように暗いのだ。
「大きな川が、木の根から流れてきています!」
調査をしていた騎士が、報告をしに来る。
ポツポツと、常に小雨が降り続けていた。
アプレンテスに雨が降っていることも、不思議だというのに。
大木の群れは、下手をすると王都より大きいのでは?
「ゴミが、ものすごいな」
木クズや木片、傷んだ装備品など、大量のゴミが地面を占拠していた。
王都へ、「アプレンテスにゴミの不法投棄をしている輩がいる」との報告があったばかり。
「シロアリだ!」
人間より巨大なシロアリが、ワサワサと群がってきた。
「シロアリの魔物だ! 備えよ!」
ヴェリシモが、部下に指示を出す。
剣を構えたが、当のシロアリ共は調査隊を無視した。一心不乱にゴミをかき集め、木のクズを食べては排泄する。
その排泄物から、植物の芽が出始めた。
あちこちにはシロアリの死骸が散乱し、アプレンテスの強い日差しを妨げている。
「まさか。地面が濡れているのは、ゴミが日よけになっているからでは?」
ヴェリシモは、剣を収めた。
ゴミ類を投棄している場所は、シロアリの活動領域のみに限定されているようだ。
投棄の犯人は、ゴミを意図的に投棄した可能性がある。シロアリの習性を見越して。
「害虫でしかないと思っていたシロアリを、荒野の緑化に利用するとは」
調査対象がこれをやったというなら、相手はすごい人物なのかも知れない。
木陰の土はジメジメとしていて、手足の生えたキノコ類のモンスターがウロウロしている。
「曲者!」
騎士の一人が、剣を抜こうとした。
「やめろ。こちらに害を与えようとしている気配はない」
ヴェリシモは、騎士を止める。
フェアリーが、歩いているキノコの傘に乗って昼寝をしていた。
どうもあのキノコも、精霊かなにかのようだ。
国王からは、十分に警戒するように注意を受けている。
だが、ここまで予想に反する光景が見られるとは。
「実に、実に平和だ」
できるなら、ずっとここにいたい。そう思わされるほど、平和そのものの景色が広がっていた。
これが、世界樹というものか。
しかし、のんびりするためにここを訪れたわけじゃない。
調査隊の魔術師が、世界樹の葉や根っこの一部を採取して、分析をした。
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