57 / 84
第五章 新たな仲間、姫騎士
第57話 魔物を倒しに、船作り
しおりを挟む
「治った! ウソみたい! 長寿のハイエルフさえ恐れる、大災害級の病なのに!?」
これ、治ったんだ。ボクにも役に立つことができた。
この調子で、ボクはどんどん自分の身体からブドウを育てる。
「はやく、ブドウをみんなに」
ブドウを食べた人々は、次々に体調がよくなっていく。
「ありがとうございました! なんとお礼を言っていいやら!」
「礼には及びません。もしよければ、我々と交流を」
「はい! ぜひ! うちは海が近いので、海産物などをご提供できます!」
海か! 海の幸なんて、最高だ! それだけで、十分だよ。大収穫だ。
「し、信じられん」
船員さんたちを看病していた騎士さんたちが、ボクの能力に驚いている。
「王都の魔術師が作った秘薬でさえ、症状を抑えるのがやっとだったのに」
完治させちゃったのは、ボクのブドウだけだったみたい。
自分でも、よくわかっていない。漢方効果かな? 違うか。
「勇者殿。あなたの名前を、お聞かせ願いたい」
ボクが、勇者だって?
「違います。ボクはただの冒険者ですよ。コーキといいます」
「彼はアプレンテスを開拓した、勇者だよ」
「ちょっとパロン!?」
パロンが、ボクのことを誇張して騎士さんたちに紹介した。
「おお。あなたが。実は我々王立調査団は、アプレンテスを開拓している人物を探していたのです。あなたがそうなので?」
「はい。ネイス・クロトンという村を設立しました」
「そうだったのか。滅びたクロトン村を、蘇らせるとは」
しかし、調査団のリーダーであるヴェリシモ王女の姿は、見当たらない。
「ところで、お姫様は? 調査隊を結成なさったと聞いたけど」
パロンが聞くと、騎士団たちは沈んだ顔になった。
「王女は、ヴェリシモ様は単身で、病原体である化け物を退治しに向かったのだ」
たしかにイソギンチャクの魔物を倒さないと、被害はドンドン拡大してしまう。
とはいえ、一人でなんてムチャだよ。
『コーキ様、この海岸沿いにある岩だらけの島に、毒を持ったイソギンチャクが生息しています。その魔物を倒さなければ、大繁殖してしまうでしょう』
よし、ではイソギンチャク退治だ。
「船は、どうするのさ。コーキ?」
「作るよ」
港町コラシェルに行った際に、壊れた船も取り込んでいたのだ。
海岸沿いに移動して、船を作成する。
「コーキ。キミって、なんでも作れるんだね?」
『素敵です、コーキ様』
パロンとピオナが、ボクの造船に見とれていた。
「木でできているものは、あらかた作りたいと思っていたからね」
ボクは黙々と、作業を進める。
「こんな感じかな?」
ボクが作っているのは小さい船だが、ある程度は強度をつけておいた。船から魔物と相対する可能性があるからだ。
岩山の規模がどれだけか、わからない。足場がない可能性もある。
「よし、みんな乗って!」
ピオナやパロンを乗せて、船を進ませた。
『コーキ様、ワタクシがナビゲートをいたします。そのまま船を進めてくださいませ』
「わかった。頼むよ。ピオナ」
ピオナのナビに従って、小島を目指す。
『見えてきました。コーキ様、あそこです』
毒々しい紫色のイソギンチャクが、岩場でウジャウジャと巣を作っていた。
魔物は、小島に棲み着いて繁殖していたようである。
『霧状の物体は、どうやらあのイソギンチャクの卵だったようです』
「うえええ。これが人に寄生していたのか」
パロンが、吐き気を催した。
本来なら、動物に取り憑いて数を増やすという。この世界では火葬文化があるから、そう大量発生は防げていた。おまけに、接触感染までするという。
空気感染しないことが、せめてもの救いか。そうでなければ、我がネイス・クロトン村も危なかった。
「仕留めるよ! 【サンダーソード】!」
パロンが、雷撃を剣にまとわせる。イソギンチャクの魔物を、一刀のもとに斬り伏せた。パロンに剣術の心得はないけど、雷撃の力で身体速度を上げているのだ。
「【アタック・トーテム】!」
ボクは船の先にトーテムを設置して、ファイアボールを放った。
パロンとの連携で、ボクたちはイソギンチャクの魔物の数を減らす。
他に残っている毒素や、残存している魔物はいないか確認した。どうやら、大丈夫らしい。
「どこから、沸いてきたんだろう?」
「わからない。でもまだ世界には、こんな怖い魔物がいるのかも」
「なんか、物騒だね」
「いや。アプレンテス地方周辺くらいだよ。ヤバイ魔物が出るのは。それよりも、ワタシたちだけで対処は難しいかも」
ボクたちに足りないのは、戦闘力だもんね。
「冒険者ギルドができたのは、ちょうどよかったかも?」
「そのようだ。まずはギンコに頼んで戦力をよこしてもら……」
パロンが言いかけて、ボクたちは悲鳴を聞いた。
「女性の声だね」
「なんか男らしい声だけど!」
「村の向こう側だ!」
「よし」
急いで、声のする方角へ、船を進める。
「うわあああ!」
赤と黒の軍服を着た女性が、モンスターに襲われていた。
「おのれ化け物め! このヴェリシモを傷つけられると思うな!」
王女様だと思しき女性が、ひときわ大きなイソギンチャクの魔物の触手に絡め取られている。
これ、治ったんだ。ボクにも役に立つことができた。
この調子で、ボクはどんどん自分の身体からブドウを育てる。
「はやく、ブドウをみんなに」
ブドウを食べた人々は、次々に体調がよくなっていく。
「ありがとうございました! なんとお礼を言っていいやら!」
「礼には及びません。もしよければ、我々と交流を」
「はい! ぜひ! うちは海が近いので、海産物などをご提供できます!」
海か! 海の幸なんて、最高だ! それだけで、十分だよ。大収穫だ。
「し、信じられん」
船員さんたちを看病していた騎士さんたちが、ボクの能力に驚いている。
「王都の魔術師が作った秘薬でさえ、症状を抑えるのがやっとだったのに」
完治させちゃったのは、ボクのブドウだけだったみたい。
自分でも、よくわかっていない。漢方効果かな? 違うか。
「勇者殿。あなたの名前を、お聞かせ願いたい」
ボクが、勇者だって?
「違います。ボクはただの冒険者ですよ。コーキといいます」
「彼はアプレンテスを開拓した、勇者だよ」
「ちょっとパロン!?」
パロンが、ボクのことを誇張して騎士さんたちに紹介した。
「おお。あなたが。実は我々王立調査団は、アプレンテスを開拓している人物を探していたのです。あなたがそうなので?」
「はい。ネイス・クロトンという村を設立しました」
「そうだったのか。滅びたクロトン村を、蘇らせるとは」
しかし、調査団のリーダーであるヴェリシモ王女の姿は、見当たらない。
「ところで、お姫様は? 調査隊を結成なさったと聞いたけど」
パロンが聞くと、騎士団たちは沈んだ顔になった。
「王女は、ヴェリシモ様は単身で、病原体である化け物を退治しに向かったのだ」
たしかにイソギンチャクの魔物を倒さないと、被害はドンドン拡大してしまう。
とはいえ、一人でなんてムチャだよ。
『コーキ様、この海岸沿いにある岩だらけの島に、毒を持ったイソギンチャクが生息しています。その魔物を倒さなければ、大繁殖してしまうでしょう』
よし、ではイソギンチャク退治だ。
「船は、どうするのさ。コーキ?」
「作るよ」
港町コラシェルに行った際に、壊れた船も取り込んでいたのだ。
海岸沿いに移動して、船を作成する。
「コーキ。キミって、なんでも作れるんだね?」
『素敵です、コーキ様』
パロンとピオナが、ボクの造船に見とれていた。
「木でできているものは、あらかた作りたいと思っていたからね」
ボクは黙々と、作業を進める。
「こんな感じかな?」
ボクが作っているのは小さい船だが、ある程度は強度をつけておいた。船から魔物と相対する可能性があるからだ。
岩山の規模がどれだけか、わからない。足場がない可能性もある。
「よし、みんな乗って!」
ピオナやパロンを乗せて、船を進ませた。
『コーキ様、ワタクシがナビゲートをいたします。そのまま船を進めてくださいませ』
「わかった。頼むよ。ピオナ」
ピオナのナビに従って、小島を目指す。
『見えてきました。コーキ様、あそこです』
毒々しい紫色のイソギンチャクが、岩場でウジャウジャと巣を作っていた。
魔物は、小島に棲み着いて繁殖していたようである。
『霧状の物体は、どうやらあのイソギンチャクの卵だったようです』
「うえええ。これが人に寄生していたのか」
パロンが、吐き気を催した。
本来なら、動物に取り憑いて数を増やすという。この世界では火葬文化があるから、そう大量発生は防げていた。おまけに、接触感染までするという。
空気感染しないことが、せめてもの救いか。そうでなければ、我がネイス・クロトン村も危なかった。
「仕留めるよ! 【サンダーソード】!」
パロンが、雷撃を剣にまとわせる。イソギンチャクの魔物を、一刀のもとに斬り伏せた。パロンに剣術の心得はないけど、雷撃の力で身体速度を上げているのだ。
「【アタック・トーテム】!」
ボクは船の先にトーテムを設置して、ファイアボールを放った。
パロンとの連携で、ボクたちはイソギンチャクの魔物の数を減らす。
他に残っている毒素や、残存している魔物はいないか確認した。どうやら、大丈夫らしい。
「どこから、沸いてきたんだろう?」
「わからない。でもまだ世界には、こんな怖い魔物がいるのかも」
「なんか、物騒だね」
「いや。アプレンテス地方周辺くらいだよ。ヤバイ魔物が出るのは。それよりも、ワタシたちだけで対処は難しいかも」
ボクたちに足りないのは、戦闘力だもんね。
「冒険者ギルドができたのは、ちょうどよかったかも?」
「そのようだ。まずはギンコに頼んで戦力をよこしてもら……」
パロンが言いかけて、ボクたちは悲鳴を聞いた。
「女性の声だね」
「なんか男らしい声だけど!」
「村の向こう側だ!」
「よし」
急いで、声のする方角へ、船を進める。
「うわあああ!」
赤と黒の軍服を着た女性が、モンスターに襲われていた。
「おのれ化け物め! このヴェリシモを傷つけられると思うな!」
王女様だと思しき女性が、ひときわ大きなイソギンチャクの魔物の触手に絡め取られている。
20
あなたにおすすめの小説
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
転生したら無自覚に世界最強になっていた件。周りは僕を崇めるけど、僕自身は今日も日雇い仕事を探しています。
黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ異世界に転生した元サラリーマンの星野悠。
彼に与えられたのは「異常な魔力」と「無自覚に魔術を使う能力」。
しかし自己評価が低すぎる悠は、自分のチート能力に全く気づかない。
「困っている人を助けたい」――その純粋な善意だけで、魔物を一撃で消滅させ、枯れた大地を蘇らせ、難病を癒してしまう。
周囲が驚愕し、彼を英雄と崇めても、本人は「たまたまです」「運が良かっただけ」と首を傾げるばかり。
これは、お人好しな青年が、無自覚なまま世界を救ってしまう、心温まる勘違いと奇跡の物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる