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第五章 新たな仲間、姫騎士
第58話 姫騎士を救出
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「……ダリエンツォだって?」
パロンが、つぶやく。
たしかダリエンツォって、王都の名前だよね。
つまりあの人は、お姫様ってことか。
「私を捕らえたつもりか!」
大剣を手首の回転だけで振り回して、ヴェリシモ姫が触手から脱出した。
すごい。お姫様って聞いていたけど、強いじゃないか。
しかし、魔物は全貌すら見えないほど巨大である。
「コーキ、こっち!」
パロンの誘導で、海岸へ。
海岸のそばで、騎士が魔物と戦っていた。船を守っている。
怪物は四本脚の、大型魚類だ。魚といえど顔だけで、身体はイソギンチャクをまとわりつかせた異形である。
「お前たちは逃げよ! 王都に報告を」
「しかし姫!?」
「私に構うな! ぐあああ!」
モンスターが、女性騎士が乗る船を転覆させた。
「危ない!」
ボクはツタを展開して、沈んだ船から船員たちを助け出す。
「ここはボクに任せて、魔物を!」
「助かる! おのれ! このヴェリシモ・ダリエンツォは、ただでは死なぬ!」
ヴェリシモ姫、は大剣を手に魔物へと立ち向かう。
「我が屍は、この地を再生させる糧となりて、お前たち魔物が住めぬ世界を作るのだ!」
相手にダメージを与えているが、それでも、周りが見えていない。後ろに気を取られて、今にも魔物のシッポ攻撃を背中に叩き込まれようとしている。
「そんなのダメだよ!」
ボクは、姫騎士に体当たりをした。
「なにをする!?」
横に倒れた女騎士が、半身を起こす。
「痛った!」
シッポをまともに食らって、ボクは地面に叩きつけられた。
「ボクが相手だ!」
杖をハンマーに変形させて、ボクは魔物に殴りかかった。
「どおお、りゃ!」
モンスターが盛大に吹っ飛ぶ。
触腕が、ボクめがけて襲いかかる。
「うわっ、【ファイアーボール】!」
ボクは人間より大きなサイズの火球で、触腕を吹き飛ばす。
だが、触腕だったものは魔物の前足部分に引っ込む。ビデオの逆再生みたく、足が再生した。この触腕は、見覚えがあるぞ。さっき見たやつだ。
「あの手足は、さっきのイソギンチャクだよ!」
「魔物が、魔物に寄生したのか!」
パロンの表情は、恐怖より知的好奇心の方が勝っていそう。
「一気に潰すよ! 【アタックトーテム】!」
灰も残さず、焼き尽くしてやる! でないと、パロンが死体を持って帰っちゃいそうなので!
トーテムで四方を囲み、魔物にファイアボールを大量に叩き込む。息をする暇さえ与えない。
「みんなの怒りを、ぶつけてやる!」
ファイアボールで袋叩きになった魔物が、大爆発を起こした。
「うわ、なんだ!?」
飛び散った肉片も、炭化していく。
「これは……【セイントファイア】!」
女騎士さんが、ボクの技を見て驚いている。
「なに、その魔法?」
ずっと使っているが、この魔法の正確な属性なんて知らない。
「パロン、セイントファイアってなに?」
「聖なる属性の、ファイアボールのこと」
ただの火ではなく、邪悪を打ち払う炎を弾丸として放つ魔法だという。そんな力が、ボクに備わっていたとは。
ボクは、ステータス表を確認してみた。
おお、ファイアボールがセイントファイアという魔法に変わっていた。普通の火属性に、【光】という属性が付与されていた。アンデッド・悪魔系に特攻だと説明がある。
「聖職についていないと、あんな浄化魔法は使えない。ジョブを【シャーマン】にして正解だったかもね」
「トーテムにも、付与されているんだね」
そんな殺意高めの、スキルだったとは。
「私も……く!」
立とうとした姫騎士さんが、よろめく。
「ちょっと足を見せて……やっぱりだ。コーキ!」
パロンが、ヴェリシモさんのドレスアーマーをめくる。
足に、斑点ができていた。
さっき診た船員さんたちと、同じ模様である。
「コーキ、ブドウを用意して」
騎士の容態を診て、パロンはボクを呼ぶ。
女性の腕には、斑点ができていた。
「イソギンチャクの毒にやられたんだね。これを食べて」
ボクは、自分の身体からブドウを出す。
「私に構うな。ブドウなんて食べても」
「いいから食べるんだ!」
ムリやり、ヴェリシモ姫の口にブドウを放り込む。
「んっ! ううんぐう!」
「ちょっとお下品だけど、ガマンしてね」
ブドウをムリヤリ詰め込んだので、姫様のホッペタがパンパンになった。
「んぐ。は、身体が!」
シャッキリした姫様が、すっくと立つ。
他の船員や騎士たちにも、同様の処置を施した。
みんな、元気になる。
「助かった! 魔物は任せてあなたたちは――」
「パロン手伝って! よいしょ!」
ヴェリシモ姫が語りかけている中、ボクはパロンとともに沈んだ船を引き上げた。
「コーキ、乾燥完了!」
炎魔法で、船を乾燥させる作業も済ませる。
「敵はまだいる! 死んじゃダメだ! あなたは逃げなさい!」
姫様に、逃げるよう誘導した。
「そういうわけにはいかない! ここは私たちの領土だ、魔物の手に渡すわけには」
「じゃあ、人を呼んできて!」
「しかし! あなたがただけでは」
「早く!」
「……すぐ戻る!」
船を操って、女騎士が逃げていく。これでいい。
魔物たちは船を追おうとした。
そうはいかない。
パロンが、つぶやく。
たしかダリエンツォって、王都の名前だよね。
つまりあの人は、お姫様ってことか。
「私を捕らえたつもりか!」
大剣を手首の回転だけで振り回して、ヴェリシモ姫が触手から脱出した。
すごい。お姫様って聞いていたけど、強いじゃないか。
しかし、魔物は全貌すら見えないほど巨大である。
「コーキ、こっち!」
パロンの誘導で、海岸へ。
海岸のそばで、騎士が魔物と戦っていた。船を守っている。
怪物は四本脚の、大型魚類だ。魚といえど顔だけで、身体はイソギンチャクをまとわりつかせた異形である。
「お前たちは逃げよ! 王都に報告を」
「しかし姫!?」
「私に構うな! ぐあああ!」
モンスターが、女性騎士が乗る船を転覆させた。
「危ない!」
ボクはツタを展開して、沈んだ船から船員たちを助け出す。
「ここはボクに任せて、魔物を!」
「助かる! おのれ! このヴェリシモ・ダリエンツォは、ただでは死なぬ!」
ヴェリシモ姫、は大剣を手に魔物へと立ち向かう。
「我が屍は、この地を再生させる糧となりて、お前たち魔物が住めぬ世界を作るのだ!」
相手にダメージを与えているが、それでも、周りが見えていない。後ろに気を取られて、今にも魔物のシッポ攻撃を背中に叩き込まれようとしている。
「そんなのダメだよ!」
ボクは、姫騎士に体当たりをした。
「なにをする!?」
横に倒れた女騎士が、半身を起こす。
「痛った!」
シッポをまともに食らって、ボクは地面に叩きつけられた。
「ボクが相手だ!」
杖をハンマーに変形させて、ボクは魔物に殴りかかった。
「どおお、りゃ!」
モンスターが盛大に吹っ飛ぶ。
触腕が、ボクめがけて襲いかかる。
「うわっ、【ファイアーボール】!」
ボクは人間より大きなサイズの火球で、触腕を吹き飛ばす。
だが、触腕だったものは魔物の前足部分に引っ込む。ビデオの逆再生みたく、足が再生した。この触腕は、見覚えがあるぞ。さっき見たやつだ。
「あの手足は、さっきのイソギンチャクだよ!」
「魔物が、魔物に寄生したのか!」
パロンの表情は、恐怖より知的好奇心の方が勝っていそう。
「一気に潰すよ! 【アタックトーテム】!」
灰も残さず、焼き尽くしてやる! でないと、パロンが死体を持って帰っちゃいそうなので!
トーテムで四方を囲み、魔物にファイアボールを大量に叩き込む。息をする暇さえ与えない。
「みんなの怒りを、ぶつけてやる!」
ファイアボールで袋叩きになった魔物が、大爆発を起こした。
「うわ、なんだ!?」
飛び散った肉片も、炭化していく。
「これは……【セイントファイア】!」
女騎士さんが、ボクの技を見て驚いている。
「なに、その魔法?」
ずっと使っているが、この魔法の正確な属性なんて知らない。
「パロン、セイントファイアってなに?」
「聖なる属性の、ファイアボールのこと」
ただの火ではなく、邪悪を打ち払う炎を弾丸として放つ魔法だという。そんな力が、ボクに備わっていたとは。
ボクは、ステータス表を確認してみた。
おお、ファイアボールがセイントファイアという魔法に変わっていた。普通の火属性に、【光】という属性が付与されていた。アンデッド・悪魔系に特攻だと説明がある。
「聖職についていないと、あんな浄化魔法は使えない。ジョブを【シャーマン】にして正解だったかもね」
「トーテムにも、付与されているんだね」
そんな殺意高めの、スキルだったとは。
「私も……く!」
立とうとした姫騎士さんが、よろめく。
「ちょっと足を見せて……やっぱりだ。コーキ!」
パロンが、ヴェリシモさんのドレスアーマーをめくる。
足に、斑点ができていた。
さっき診た船員さんたちと、同じ模様である。
「コーキ、ブドウを用意して」
騎士の容態を診て、パロンはボクを呼ぶ。
女性の腕には、斑点ができていた。
「イソギンチャクの毒にやられたんだね。これを食べて」
ボクは、自分の身体からブドウを出す。
「私に構うな。ブドウなんて食べても」
「いいから食べるんだ!」
ムリやり、ヴェリシモ姫の口にブドウを放り込む。
「んっ! ううんぐう!」
「ちょっとお下品だけど、ガマンしてね」
ブドウをムリヤリ詰め込んだので、姫様のホッペタがパンパンになった。
「んぐ。は、身体が!」
シャッキリした姫様が、すっくと立つ。
他の船員や騎士たちにも、同様の処置を施した。
みんな、元気になる。
「助かった! 魔物は任せてあなたたちは――」
「パロン手伝って! よいしょ!」
ヴェリシモ姫が語りかけている中、ボクはパロンとともに沈んだ船を引き上げた。
「コーキ、乾燥完了!」
炎魔法で、船を乾燥させる作業も済ませる。
「敵はまだいる! 死んじゃダメだ! あなたは逃げなさい!」
姫様に、逃げるよう誘導した。
「そういうわけにはいかない! ここは私たちの領土だ、魔物の手に渡すわけには」
「じゃあ、人を呼んできて!」
「しかし! あなたがただけでは」
「早く!」
「……すぐ戻る!」
船を操って、女騎士が逃げていく。これでいい。
魔物たちは船を追おうとした。
そうはいかない。
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