63 / 84
第六章 王都のカレーとドワーフ
第63話 最強のドワーフを介入
しおりを挟む
スプルスさんが言っている最強のドワーフは、鉱山にいるという。
「オレっちが仲間になってもいいんだけどな。さすがに、姫様の護衛をやめるわけにはいかねえ。だから、村に行っても支障のねえ、けどとっておきのヤツを紹介してやるさ」
「楽しみだね、コーキ」
どんなドワーフさんに会えるのか、今から楽しみだ。
道中、王都の商品などを見て回る。
どれもこれも、ボクが作るような素人品ではない。複雑な装飾が施されつつも、それが魔力を帯びたものだと見ただけでわかった。こんな加工技術は、ボクの力では引き出せない。教わったって、ムリだろう。
これが、ドワーフの加工技術なのか。
だとしたら、「アレ」の開発も可能だろう。
王都所有の、鉱山に到着した。
ドワーフの鉱夫たちが、ツルハシを持って金属を掘り出している。
「野郎ども、シケてんじゃねえやい! キン○マついてんだろうが! オトコ見せろや!」
小さい女の子が、腕毛のすごいドワーフの鉱夫たちを鼓舞している。この子が一番、率先して動いているね。
「ナップル、調子はどうだ?」
少女のドワーフに、スプルスさんが語りかけた。
「相っ変わらずだぜ、オヤジ。岩盤が硬くて、攻略できやしねえ」
ナップルという女の子が、ほっぺたに着いた砂を吹く。
周りのドワーフたちは、みんな工具を持って掘り進んでいた。
だが、ナップルは違う。彼女だけが、素手だ。
「すりゃあああああ!」
手に麻製の手袋だけをして、岩に殴りかかっている。それだけで、分厚い岩盤が砕けた。
「ダメだ。もうちょっと行けると思ったんだがな」
十分にすごいのに、本人は納得していない。どれだけストイックなのさ?
「この岩盤が、行く手を遮っていてな」
金ピカでツルンツルンの岩盤が、鉱山に鎮座していた。なるほど、たしかに難敵のようである。
「彼女が、最強のドワーフ?」
「ああ。紹介しよう。コイツはナップル・ブレナディア。三四歳で、オレっちの末娘だ」
こんなに小さいのに、ボクより二つも歳上なのか。
「よろしくな!」
スプルスさんに紹介されて、ナップルが親指を立てる。見た目は一四歳くらいなのに、ボクより五つも歳上だなんて。
「キミにもう一人、娘がいたなんてね」
「三姉妹の末っ子さ。こいつは姉妹の中で一番、頭のできが悪い。それで、鉱夫のマネごとをさせているんだよ。一応これでもモンク、つまり聖職者だぜ」
「ついでにいうと、ちゃんと処女だぜ! パロンの姉御!」
ナップルがまた親指を立てた。
「えっと、おめえだろ? アタシがほしいってのは」
「コーキです。よろしく」
「おう、よろ……おっと」
ナップルは手を差し伸べようとして、自分の手が砂で汚れていると気づく。
「よろしくね、ナップル」
ボクは構わず、ナップルの手を取った。
「よせやい。意識しちまうだろうが。ドワーフの男で、そこまで気が回るヤツはいなかったぜ」
「あはは。それでね、ナップル。相談なんだけど」
「この岩をぶっ叩いてからで、いいか? こいつさえブチのめせば、他のヤツらも作業しやすいからよ」
ナップルがいう岩盤は、確かに硬そうだ。キンキラキンで、尖ったツルハシを叩き込んでも表面がツルツルのままである。ドワーフが手も足も出ないというから、相当なものだろう。
「ボクに任せて」
岩盤の前に立ち、ボクは岩盤に指を添える。
「シャーマンのおめえじゃムリだって、コーキよぉ。ナップルでさえ、ヒビを入れるのがやっとで」
スプルスさんが、心配げに声をかけてきた。
「おおおおおお!」
構わず、ボクは魔力を指から流し込んだ。
「大地よ、ボクに力を貸してくれ!」
願いを聞き届けたのか、ボクの指先から根が生えてきた。
根っこは岩盤に、スルスルと入り込む。岩盤を覆い尽くし、さらに力を込めた。
ツルツルだった岩に、わずかな亀裂が。
「すげえ! 木が、岩を砕いてやがる!」
ナップルも、信じられないものを見るような目になった。
根が内側から、硬い岩をミチミチと破壊する。
「ほええええええ」
「どうだろう? これで、作業はやりやすくなったかな?」
「すげええ! コーキっていうのか。コーキ、おめえつええな! こんな強さを持つドワーフは、他にいねえぞ!」
「岩を砕けても、加工するとなると難しくてさ」
王都のショップなどを見て回ったが、あんな技術はボクには覚えられない。
「あんなの、適当にこねくり回せばチャッチャだぜ! 岩盤を割るほうが、価値があらあ!」
そういうものなの?
「ヴェリシモだ。よろしく頼む」
姫様も、ナップルの手の汚れを気にせず握手を交わす。
「よせやい姫様、ユリの花が咲いちまうじゃねえか」
ナップルが頭をかく。
「それでね、ナップル。相談があるんだけど」
「なんだ?」
「ティンバーさんは、こっちと村を飛空艇で繋ごうって考えているんだよ。だけど、民間人を乗せるには、まだまだお金が掛かりそうなんだ」
「だろうな。運搬か、貴族様を乗せる程度で手一杯だろうよ。安全面においても」
「そうなんだ。だからね、トラムを作ろうと思うんだ」
「トラム……鉄道か」
王都の様子とドワーフさんとの出会いを通じて、真っ先に思いついたのがこれである。
「オレっちが仲間になってもいいんだけどな。さすがに、姫様の護衛をやめるわけにはいかねえ。だから、村に行っても支障のねえ、けどとっておきのヤツを紹介してやるさ」
「楽しみだね、コーキ」
どんなドワーフさんに会えるのか、今から楽しみだ。
道中、王都の商品などを見て回る。
どれもこれも、ボクが作るような素人品ではない。複雑な装飾が施されつつも、それが魔力を帯びたものだと見ただけでわかった。こんな加工技術は、ボクの力では引き出せない。教わったって、ムリだろう。
これが、ドワーフの加工技術なのか。
だとしたら、「アレ」の開発も可能だろう。
王都所有の、鉱山に到着した。
ドワーフの鉱夫たちが、ツルハシを持って金属を掘り出している。
「野郎ども、シケてんじゃねえやい! キン○マついてんだろうが! オトコ見せろや!」
小さい女の子が、腕毛のすごいドワーフの鉱夫たちを鼓舞している。この子が一番、率先して動いているね。
「ナップル、調子はどうだ?」
少女のドワーフに、スプルスさんが語りかけた。
「相っ変わらずだぜ、オヤジ。岩盤が硬くて、攻略できやしねえ」
ナップルという女の子が、ほっぺたに着いた砂を吹く。
周りのドワーフたちは、みんな工具を持って掘り進んでいた。
だが、ナップルは違う。彼女だけが、素手だ。
「すりゃあああああ!」
手に麻製の手袋だけをして、岩に殴りかかっている。それだけで、分厚い岩盤が砕けた。
「ダメだ。もうちょっと行けると思ったんだがな」
十分にすごいのに、本人は納得していない。どれだけストイックなのさ?
「この岩盤が、行く手を遮っていてな」
金ピカでツルンツルンの岩盤が、鉱山に鎮座していた。なるほど、たしかに難敵のようである。
「彼女が、最強のドワーフ?」
「ああ。紹介しよう。コイツはナップル・ブレナディア。三四歳で、オレっちの末娘だ」
こんなに小さいのに、ボクより二つも歳上なのか。
「よろしくな!」
スプルスさんに紹介されて、ナップルが親指を立てる。見た目は一四歳くらいなのに、ボクより五つも歳上だなんて。
「キミにもう一人、娘がいたなんてね」
「三姉妹の末っ子さ。こいつは姉妹の中で一番、頭のできが悪い。それで、鉱夫のマネごとをさせているんだよ。一応これでもモンク、つまり聖職者だぜ」
「ついでにいうと、ちゃんと処女だぜ! パロンの姉御!」
ナップルがまた親指を立てた。
「えっと、おめえだろ? アタシがほしいってのは」
「コーキです。よろしく」
「おう、よろ……おっと」
ナップルは手を差し伸べようとして、自分の手が砂で汚れていると気づく。
「よろしくね、ナップル」
ボクは構わず、ナップルの手を取った。
「よせやい。意識しちまうだろうが。ドワーフの男で、そこまで気が回るヤツはいなかったぜ」
「あはは。それでね、ナップル。相談なんだけど」
「この岩をぶっ叩いてからで、いいか? こいつさえブチのめせば、他のヤツらも作業しやすいからよ」
ナップルがいう岩盤は、確かに硬そうだ。キンキラキンで、尖ったツルハシを叩き込んでも表面がツルツルのままである。ドワーフが手も足も出ないというから、相当なものだろう。
「ボクに任せて」
岩盤の前に立ち、ボクは岩盤に指を添える。
「シャーマンのおめえじゃムリだって、コーキよぉ。ナップルでさえ、ヒビを入れるのがやっとで」
スプルスさんが、心配げに声をかけてきた。
「おおおおおお!」
構わず、ボクは魔力を指から流し込んだ。
「大地よ、ボクに力を貸してくれ!」
願いを聞き届けたのか、ボクの指先から根が生えてきた。
根っこは岩盤に、スルスルと入り込む。岩盤を覆い尽くし、さらに力を込めた。
ツルツルだった岩に、わずかな亀裂が。
「すげえ! 木が、岩を砕いてやがる!」
ナップルも、信じられないものを見るような目になった。
根が内側から、硬い岩をミチミチと破壊する。
「ほええええええ」
「どうだろう? これで、作業はやりやすくなったかな?」
「すげええ! コーキっていうのか。コーキ、おめえつええな! こんな強さを持つドワーフは、他にいねえぞ!」
「岩を砕けても、加工するとなると難しくてさ」
王都のショップなどを見て回ったが、あんな技術はボクには覚えられない。
「あんなの、適当にこねくり回せばチャッチャだぜ! 岩盤を割るほうが、価値があらあ!」
そういうものなの?
「ヴェリシモだ。よろしく頼む」
姫様も、ナップルの手の汚れを気にせず握手を交わす。
「よせやい姫様、ユリの花が咲いちまうじゃねえか」
ナップルが頭をかく。
「それでね、ナップル。相談があるんだけど」
「なんだ?」
「ティンバーさんは、こっちと村を飛空艇で繋ごうって考えているんだよ。だけど、民間人を乗せるには、まだまだお金が掛かりそうなんだ」
「だろうな。運搬か、貴族様を乗せる程度で手一杯だろうよ。安全面においても」
「そうなんだ。だからね、トラムを作ろうと思うんだ」
「トラム……鉄道か」
王都の様子とドワーフさんとの出会いを通じて、真っ先に思いついたのがこれである。
16
あなたにおすすめの小説
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる