ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

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第六章 王都のカレーとドワーフ

第63話 最強のドワーフを介入

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 スプルスさんが言っている最強のドワーフは、鉱山にいるという。

「オレっちが仲間になってもいいんだけどな。さすがに、姫様の護衛をやめるわけにはいかねえ。だから、村に行っても支障のねえ、けどとっておきのヤツを紹介してやるさ」

「楽しみだね、コーキ」

 どんなドワーフさんに会えるのか、今から楽しみだ。

 道中、王都の商品などを見て回る。

 どれもこれも、ボクが作るような素人品ではない。複雑な装飾が施されつつも、それが魔力を帯びたものだと見ただけでわかった。こんな加工技術は、ボクの力では引き出せない。教わったって、ムリだろう。
 これが、ドワーフの加工技術なのか。

 だとしたら、「アレ」の開発も可能だろう。
 
 王都所有の、鉱山に到着した。

 ドワーフの鉱夫たちが、ツルハシを持って金属を掘り出している。

「野郎ども、シケてんじゃねえやい! キン○マついてんだろうが! オトコ見せろや!」

 小さい女の子が、腕毛のすごいドワーフの鉱夫たちを鼓舞している。この子が一番、率先して動いているね。

「ナップル、調子はどうだ?」
 
 少女のドワーフに、スプルスさんが語りかけた。

「相っ変わらずだぜ、オヤジ。岩盤が硬くて、攻略できやしねえ」

 ナップルという女の子が、ほっぺたに着いた砂を吹く。

 周りのドワーフたちは、みんな工具を持って掘り進んでいた。

 だが、ナップルは違う。彼女だけが、素手だ。

「すりゃあああああ!」

 手に麻製の手袋だけをして、岩に殴りかかっている。それだけで、分厚い岩盤が砕けた。

「ダメだ。もうちょっと行けると思ったんだがな」

 十分にすごいのに、本人は納得していない。どれだけストイックなのさ?

「この岩盤が、行く手を遮っていてな」

 金ピカでツルンツルンの岩盤が、鉱山に鎮座していた。なるほど、たしかに難敵のようである。 

「彼女が、最強のドワーフ?」

「ああ。紹介しよう。コイツはナップル・ブレナディア。三四歳で、オレっちの末娘だ」

 こんなに小さいのに、ボクより二つも歳上なのか。

「よろしくな!」

 スプルスさんに紹介されて、ナップルが親指を立てる。見た目は一四歳くらいなのに、ボクより五つも歳上だなんて。

「キミにもう一人、娘がいたなんてね」

「三姉妹の末っ子さ。こいつは姉妹の中で一番、頭のできが悪い。それで、鉱夫のマネごとをさせているんだよ。一応これでもモンク、つまり聖職者だぜ」

「ついでにいうと、ちゃんと処女だぜ! パロンの姉御!」

 ナップルがまた親指を立てた。

「えっと、おめえだろ? アタシがほしいってのは」

「コーキです。よろしく」

「おう、よろ……おっと」

 ナップルは手を差し伸べようとして、自分の手が砂で汚れていると気づく。
 
「よろしくね、ナップル」

 ボクは構わず、ナップルの手を取った。

「よせやい。意識しちまうだろうが。ドワーフの男で、そこまで気が回るヤツはいなかったぜ」

「あはは。それでね、ナップル。相談なんだけど」

「この岩をぶっ叩いてからで、いいか? こいつさえブチのめせば、他のヤツらも作業しやすいからよ」

 ナップルがいう岩盤は、確かに硬そうだ。キンキラキンで、尖ったツルハシを叩き込んでも表面がツルツルのままである。ドワーフが手も足も出ないというから、相当なものだろう。
 
「ボクに任せて」

 岩盤の前に立ち、ボクは岩盤に指を添える。

「シャーマンのおめえじゃムリだって、コーキよぉ。ナップルでさえ、ヒビを入れるのがやっとで」

 スプルスさんが、心配げに声をかけてきた。

「おおおおおお!」
 
 構わず、ボクは魔力を指から流し込んだ。

「大地よ、ボクに力を貸してくれ!」

 願いを聞き届けたのか、ボクの指先から根が生えてきた。
 根っこは岩盤に、スルスルと入り込む。岩盤を覆い尽くし、さらに力を込めた。

 ツルツルだった岩に、わずかな亀裂が。
 
「すげえ! 木が、岩を砕いてやがる!」

 ナップルも、信じられないものを見るような目になった。

 根が内側から、硬い岩をミチミチと破壊する。
 
「ほええええええ」

「どうだろう? これで、作業はやりやすくなったかな?」

「すげええ! コーキっていうのか。コーキ、おめえつええな! こんな強さを持つドワーフは、他にいねえぞ!」

「岩を砕けても、加工するとなると難しくてさ」

 王都のショップなどを見て回ったが、あんな技術はボクには覚えられない。
 
「あんなの、適当にこねくり回せばチャッチャだぜ! 岩盤を割るほうが、価値があらあ!」

 そういうものなの? 

「ヴェリシモだ。よろしく頼む」

 姫様も、ナップルの手の汚れを気にせず握手を交わす。

「よせやい姫様、ユリの花が咲いちまうじゃねえか」

 ナップルが頭をかく。

「それでね、ナップル。相談があるんだけど」

「なんだ?」

「ティンバーさんは、こっちと村を飛空艇で繋ごうって考えているんだよ。だけど、民間人を乗せるには、まだまだお金が掛かりそうなんだ」

「だろうな。運搬か、貴族様を乗せる程度で手一杯だろうよ。安全面においても」

「そうなんだ。だからね、トラムを作ろうと思うんだ」

「トラム……鉄道か」

 王都の様子とドワーフさんとの出会いを通じて、真っ先に思いついたのがこれである。
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