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第六章 王都のカレーとドワーフ
第68話 オーヒアレファ火山脈
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がんばって働いてくれたドワーフさんたちも、お風呂から上がってきた。
ボクが壊した石を運んで、道を整備してくれていたのである。
お風呂の後は、ナップルとヴェリシモと夕飯を食べることに。
今日の献立は、村で採れた野菜と、村で育ったチキンで、オムライスだ。
「村にいたら、こんなおいしい料理を毎日食べているのか?」
オムライスのケチャップで、ヴェリシモさんの口の周りが汚れている。
鶏は近所の村から譲ってもらい、卵から育てた。
「おいしいです。ボクも毎日、ピオナには感謝しています」
いくら「ボクが作るよ」と言っても、ピオナは毎回ゴハンを作ってくれる。
「久々に、主人が帰ってきましたもの。腕によりをかけたいのです」
ピオナは、ずっとこんな感じだ。
「ホント、コーキはいいお嫁さんをもらったよ。お母さんとして、鼻が高いね」
「お母さんって」
まあ実質、パロンはボクの母親みたいなもんだけど。
「コーキはホントに、パロン殿の子どもなのか?」
ほら、ヴェリシモさんが過剰反応しちゃったじゃん。
「えっとですね……なんと申し上げればいいのか」
「食事中も顔も隠さなければならないようだし、なんか事情があるようでな」
どうしよう。まだみんなには、ボクがウッドゴーレムってのは内緒だし。
「師匠であることは確かじゃ。育ての親のようなもんじゃよ」
「なるほど。納得した」
賢人クコのナイスフォローにより、ヴェリシモさんは理解できたようだ。
「コーキの顔には、深い傷があってのう。あまり気分のよいものではないので、コーキ自身も隠すように心得ておるようじゃ」
「そうか。むやみに詮索しないほうがいいな」
「そうしてもらえると、助かるぞい」
どうにか、ヴェリシモさんにもわかってもらえたみたい。
これからは、ボクもそうやって乗り切ろう。
「うめぇ!」
「だよな。うめえよな、オヤジ!」
スプルスさんとナップルが、ボクたちの作ったおコメに満足している。
「野菜との相性が、実に最高で。王都でも、こんなに丁寧な育ち方はしねえぜ。コメの可能性も、広がったな」
「トマトとコメがこんなに合うなんて、知らなかったぜ」
オムライスを食べながら、ナップルは口周りを真っ赤にする。
使用したケチャップは、王都で取れた香辛料とトマトを加工したものだ。
「それにしても、ヴェリシモには関心だよね。人間にも、アプレンテス再生を望んでいる存在がいるなんてね。おかげで、こんなおいしいお魚にありつけたよ」
漁港でもらったお魚も、食卓に並んでいる。
「人間どもは真っ先に、この地を見捨てたのに」
「まったくよのう。ヴェリシモは、大したもんじゃ……」
パロンとクコが、魚の干物をかじる。こちらも、漁港からの贈り物だ。
「とんでもない。当然のことをしたまでだ。実際は、ナップルたちドワーフに助けられっぱなしで。私自身は、何もしていないに等しいんだ。本当の貢献者は、ナップルたちなんだ」
二人から評価され、ヴェリシモさんは謙遜をする。
「ヴェリシモさんは、この地を復活させようと色々工夫しているんでしょ? ボクも手を貸しますよ。どこまでできるか、わからないけど」
「おかげで道も、ここまで広くなったからね。ガルバたちがコラシェルまでトラムを伸ばしてくれているから、きっともっと栄えると思うよ」
村を覆っていた岩山が道路の素材になり、ボクたちの村もだんだんと充実していくことだろう。
「まさかこの土地に来て、温泉に入れるなんて思わなかったよ」
「いつもは自分で沸かすか、川で水浴びだったもんね」
ボクの肉体は、お風呂を必要としない。けど、ボクの魂としてはほしいと願っていた。火山がなさそうだから、ムリかもと思ったけど。
「温泉があるってことは、ここって火山に近いのかな?」
「だとしたらダンジョンは、火に包まれた場所なのかもね」
「そういえば、ここはオーヒアレファ火山脈と繋がっているようだ」
オーヒアレファ火山脈とは、王都所有の鉱山から近い場所にある、火山だという。
この山脈とも、絶妙に繋がっているらしい。
「火山が近いから、ある程度の資源も拝めるって期待していたのにな。微妙な成果しか、出てこねえんだよなぁ」
ナップルが、腕を組む。
「オーヒアレファ付近は、貴重な魔法石などが採れる神聖な場所だ。その影響が出ないとは」
ヴェリシモさんも、不思議がっている。
「やはり、地下にいる存在が、資源のパワーを吸い取っているようです。火山地帯に近づくほど、植物の成長も滞っていますので」
トレントたちが、避けるくらいだもんね。
「その証拠に、御覧ください」
「あっ」
山を覆っていた木々が、すっかりやせ細っていた。
「我々の力を、吸い取るとは。山の下にいるのは、かなりの強敵なようです」
ボクたちも、がんばって英気を養わないとね。
それから数日、パロンを連れ立って、アプレンテス地帯の調査にあたった。この付近に点在する、ダンジョンの探索だ。
ダンジョンはまだ三つしか見つけていない。
だがどれも、例の邪教絡みの遺跡だった。
(第六章 おしまい)
ボクが壊した石を運んで、道を整備してくれていたのである。
お風呂の後は、ナップルとヴェリシモと夕飯を食べることに。
今日の献立は、村で採れた野菜と、村で育ったチキンで、オムライスだ。
「村にいたら、こんなおいしい料理を毎日食べているのか?」
オムライスのケチャップで、ヴェリシモさんの口の周りが汚れている。
鶏は近所の村から譲ってもらい、卵から育てた。
「おいしいです。ボクも毎日、ピオナには感謝しています」
いくら「ボクが作るよ」と言っても、ピオナは毎回ゴハンを作ってくれる。
「久々に、主人が帰ってきましたもの。腕によりをかけたいのです」
ピオナは、ずっとこんな感じだ。
「ホント、コーキはいいお嫁さんをもらったよ。お母さんとして、鼻が高いね」
「お母さんって」
まあ実質、パロンはボクの母親みたいなもんだけど。
「コーキはホントに、パロン殿の子どもなのか?」
ほら、ヴェリシモさんが過剰反応しちゃったじゃん。
「えっとですね……なんと申し上げればいいのか」
「食事中も顔も隠さなければならないようだし、なんか事情があるようでな」
どうしよう。まだみんなには、ボクがウッドゴーレムってのは内緒だし。
「師匠であることは確かじゃ。育ての親のようなもんじゃよ」
「なるほど。納得した」
賢人クコのナイスフォローにより、ヴェリシモさんは理解できたようだ。
「コーキの顔には、深い傷があってのう。あまり気分のよいものではないので、コーキ自身も隠すように心得ておるようじゃ」
「そうか。むやみに詮索しないほうがいいな」
「そうしてもらえると、助かるぞい」
どうにか、ヴェリシモさんにもわかってもらえたみたい。
これからは、ボクもそうやって乗り切ろう。
「うめぇ!」
「だよな。うめえよな、オヤジ!」
スプルスさんとナップルが、ボクたちの作ったおコメに満足している。
「野菜との相性が、実に最高で。王都でも、こんなに丁寧な育ち方はしねえぜ。コメの可能性も、広がったな」
「トマトとコメがこんなに合うなんて、知らなかったぜ」
オムライスを食べながら、ナップルは口周りを真っ赤にする。
使用したケチャップは、王都で取れた香辛料とトマトを加工したものだ。
「それにしても、ヴェリシモには関心だよね。人間にも、アプレンテス再生を望んでいる存在がいるなんてね。おかげで、こんなおいしいお魚にありつけたよ」
漁港でもらったお魚も、食卓に並んでいる。
「人間どもは真っ先に、この地を見捨てたのに」
「まったくよのう。ヴェリシモは、大したもんじゃ……」
パロンとクコが、魚の干物をかじる。こちらも、漁港からの贈り物だ。
「とんでもない。当然のことをしたまでだ。実際は、ナップルたちドワーフに助けられっぱなしで。私自身は、何もしていないに等しいんだ。本当の貢献者は、ナップルたちなんだ」
二人から評価され、ヴェリシモさんは謙遜をする。
「ヴェリシモさんは、この地を復活させようと色々工夫しているんでしょ? ボクも手を貸しますよ。どこまでできるか、わからないけど」
「おかげで道も、ここまで広くなったからね。ガルバたちがコラシェルまでトラムを伸ばしてくれているから、きっともっと栄えると思うよ」
村を覆っていた岩山が道路の素材になり、ボクたちの村もだんだんと充実していくことだろう。
「まさかこの土地に来て、温泉に入れるなんて思わなかったよ」
「いつもは自分で沸かすか、川で水浴びだったもんね」
ボクの肉体は、お風呂を必要としない。けど、ボクの魂としてはほしいと願っていた。火山がなさそうだから、ムリかもと思ったけど。
「温泉があるってことは、ここって火山に近いのかな?」
「だとしたらダンジョンは、火に包まれた場所なのかもね」
「そういえば、ここはオーヒアレファ火山脈と繋がっているようだ」
オーヒアレファ火山脈とは、王都所有の鉱山から近い場所にある、火山だという。
この山脈とも、絶妙に繋がっているらしい。
「火山が近いから、ある程度の資源も拝めるって期待していたのにな。微妙な成果しか、出てこねえんだよなぁ」
ナップルが、腕を組む。
「オーヒアレファ付近は、貴重な魔法石などが採れる神聖な場所だ。その影響が出ないとは」
ヴェリシモさんも、不思議がっている。
「やはり、地下にいる存在が、資源のパワーを吸い取っているようです。火山地帯に近づくほど、植物の成長も滞っていますので」
トレントたちが、避けるくらいだもんね。
「その証拠に、御覧ください」
「あっ」
山を覆っていた木々が、すっかりやせ細っていた。
「我々の力を、吸い取るとは。山の下にいるのは、かなりの強敵なようです」
ボクたちも、がんばって英気を養わないとね。
それから数日、パロンを連れ立って、アプレンテス地帯の調査にあたった。この付近に点在する、ダンジョンの探索だ。
ダンジョンはまだ三つしか見つけていない。
だがどれも、例の邪教絡みの遺跡だった。
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