ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

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最終章 ウッドゴーレムは、荒れ地を発展させました

第80話 闇の世界樹 浄化作戦

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 天使と魔王たちは、ボクのお酒で意気投合したみたい。

「ほれ見い。ワシの言ったとおりになったわい」

 クコが、胸を反らす。
 
 天使の勢力は、ボクたちが「闇の世界樹」を退治している間、ケンカをしないことを約束してくれた。

「この時期のみと言わず、いつでも我が城に参られよ! 歓迎しようぞ魔王殿!」

「そうであるか! 我々も、海鮮でお出迎えするのである!」

 セラフ王とサンゴの魔王が、意気投合した。いくらなんでも、急に仲良くなりすぎじゃない?

 でもまあ、これで地上はひとまず安心かな。

「話を総合すると、クトーニアンには、闇の世界樹なる神がいると」

「左様だ。セラフ殿。闇の世界樹は、意思を持っておらぬ。国民の感情を吸い上げて、我々の世界を構築しておるのだ」

 しかし、最近はずっと悪い方向へ進んでいたらしい。

 その悪い感情が、古代の魔王などを呼び寄せてしまったという。

 勇者が魔王を倒してくれたとはいえ、荒れた土地がすぐに元通りになるわけでもなかった。

 闇の世界樹は、自分の生命維持に、アプレンテスの土地にある魔力を、ほぼほぼ吸い尽くしてしまっていたのである。
 
 ボクがアプレンテスを蘇らせたことで、闇の世界樹もまた勢いを取り戻した。

 とはいえ、クトーニアンにも餌を上げてしまう結果に。

 どうしたものか。

「コーキ殿、知恵をお借りしたい。闇の世界樹には、我々天使も困っていたところぞ。なんせ、こちらの攻撃が通用せぬ」

 セラフさんが、ボクに頭を下げてきた。

「海へ一撃を食らわせるだけでは、ダメなんですか?」

「うむ。特殊な結界が張っておってな」

 物理的な攻撃も魔法も、すべて術式障壁で弾き飛ばしてしまうらしい。天使族が直接、世界樹に切りかかったこともあるそうだ。しかし、まるで効果がなかったという。

「向こうから襲ってくることは、まずないのだ。ただ闇の世界樹は、ダークサイドのクトーニアンを大量に産み落として、送り込んでくるのだ」

 魔王によると、世界樹自体が攻撃をしてくる気配はないらしい。しかし、攻撃しようとするとクトーニアンが襲ってくるという。

 単純に一回攻撃したら、三倍は跳ね返ってくるそうだ。なんて、めんどくさい。

「それで、ボクに声をかけてくれたんですね?」

「うむ。お主なら、平和的に解決してくれそうだったのだ。頼めるか?」

「やってみます」

 とはいうものの、どうやって闇の世界樹なんておとなしくさせればいいのやら。

「あ、あなたは、クトーニアン過激派のリーダーを倒しています。なので、邪魔は入らないと、お、思うのです」

 ハィラさんのいうことは、信じていいみたい。

「え、例の木乃伊ミイラのことかな?」

「おそらく、そうですね。ハィラさんの話によると」

 ピオナが、そう推理する。

 あのミイラは、闇の世界樹を盾に自分の思想を周りに押し付けていたそうだ。

「闇の世界樹だって、自分の居場所がほしいだけかもしれないね。その思想を悪用されただけで」

「その発想は、ありませんでした」

 これは、案外大変かもしれない。

 天使たちに任せていたら、本当に世界は焦土になっていたことだろう。初期のアプレンテスどころか、世界すべてが荒野になっていたかもしれない。

「わかりました。対話を試みます」

「対話とな?」

「はい」

 闇の世界樹と話し合ってみて、交渉可能な相手かどうか、確かめる。

「それでダメなら?」

「……あきらめて攻撃しましょう」

 ボクが言うと、パロンが手を握ってきた。

「コーキ、ワタシもついていこう。なんたって、キミの作り主だからね。キミのよりどころになって、キミの精神が闇の世界樹に汚染されないように見守るよ」

「ありがとう、パロン」

 ボクも手を握り返す。

 こうしてボクたちは、本格的な対話作戦を開始した。




 ボクは闇の世界樹に提供する、「お供え」を作り出す。果物、お野菜、お米、お酒などを次々と生み出した。あとは、ボクの苗も。

 それを、ボクの身体で作った舟形の器に盛り付ける。いわゆる「舟盛り」だ。
 
 盛りや飾り付けは、ヴェリシモ王女やハィラさんなども手伝ってくれた。

 チェスナはアザレアとともに、村にある薬草やお花を、輪っかや花束にしていく。
 意外に器用だったのは、ギンコさんだ。お供え用の衣服を、丁寧に縫っている。

「あたしをなんだと思ってんのさ? こう見えて、妹の服を仕立ててあげていたのは、あたしなんだよ?」
 
 商業ギルドのダンディ・リオンたち行商人一行は、酒樽を馬車に積んで海へと運んでいった。

「おーい、コーキ!」

 小型のグライダーに乗って、ティンバーさんが海側から現れた。

「完成したんですね?」

「おう。お前さんの言うように、闇の世界樹へのお供えものとして改造したぞ」

 現場では、ナップルとスプルスさんが、仕上げに入っているという。

「ティンバーに、なにをお願いしていたの?」

「ボクたちが使っていた船を、改造してもらったんだ。お供えするために」

「船を、供物にするの?」

「そうだよ。『宝船』っていうんだ」
 
 
 ボクは闇の世界樹に、宝船を送るのだ。
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