ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

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最終章 ウッドゴーレムは、荒れ地を発展させました

第82話 闇のウッドゴーレム ヨル

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 村に、一台の馬車が止まったと思えば、ボクそっくりのウッドゴーレムが降りてきたではないか。

「コーキ、いつの間に分裂したの!?」

 ボクを作ったパロンが、あまりのそっくりさんに呆然としている。

「たしかに、よく似ているけど」
 
 黒いボクの見た感じは、たしかにボクそのものだ。けど、細部が微妙に違う。

 まずは体質だ。ボクは木製だけど、彼の身体はサンゴゴーレムだ。ところどころ黒いのは、岩を使っているからだね。厳密には、ロックゴーレムなのだろう。そこに、サンゴがへばりついている。

 ただ、顔の作りや体型などは、ボクに似せてあった。明らかに、ボクを意識しているみたいだけど。

 どういえばいいか、格闘ゲームでいう「コンバーチブルキャラクター」を思わせた。

「真っ黒いコーキ様だって?」「イメチェンかしら?」「微妙にあちことが違うね!」「はて、どちらさまで?」

 黒いゴーレムを取り囲んで、みんな驚いていた。すぐにボクの偽物だって気づいた人はいるみたいだが、ボクをよく知らない人は見分けがつかないだろう。

「あの、コーキさん。たびたび、お邪魔します」

 ハィラさんが、馬車から降りてきた。宝船を沈めた後、別れたっきりだったが。今は、ゴーレム馬車の御者役をつとめている。

「コーキ殿というのは、どこにいる?」

 ゴーレムが、ボクのことを探した。

「ボクですが?」

 みんなを代表して、ボクが黒いゴーレムの前に立つ。

「あなたは、誰ですか?」

「我は、ヨルムンガンド。そなたらから、『闇の世界樹』と呼ばれているものだ」

 アウェイだというのに、彼は怯えるどころか堂々としていた。ハィラさんとは大違いである。

「ヨルムンガンド!?」

 その名前を聞いて、ドムさんが真っ先に動く。

 だが、剣が鞘から出てこなかった。

「剣を収めるがよい、天使の戦士よ。我は事を起こすために、参ったのではない」

「平和的に話し合いでもしに来たとでも、言うのですか?」

「左様だ。しかし、構えを解いてもらわねば、話もできぬ。落ち着かれよ」

「く……」

 ドムさんが、剣を収めた。

「はて。この姿が、もっとも警戒されないと思ったが。ハィラからも、『ちょーにんきですものですよ』と、お墨付きをもろうたというに」
 
 周りの反応に、ウッドゴーレムも困惑している。

 ボクがあげた苗を使って、ヨルムンガンドは自分なりにウッドゴーレムを作ってみたらしい。
 
「警戒するよ! ワタシたちの仲間そっくりに擬態されたら、心理的に追い詰めようとしているのかも、って思われちゃうよ!」

「ふむ。人間とは、かくも難しいものよ」

 ヨルムンガンドの言い分に、パロンも困惑した。

「ご、ごめんなさいっ。ワタシが余計なことを言ったばかりに、ヨルムンガンドさまにご迷惑を」

「よい、従者ハィラよ。自身を責めるではない。調査不足だった我の責任である」

 従者の言葉に耳を傾けるくらいだから、ヨルムンガンドは比較的思考が柔らかめのようである。発想は、斜め上に進んでいるけど。
  
「パロン、あの人って、ヤバいやつなのか?」

「どうだろうね。ただ、コーキのコピー品だから、戦闘力はそれほど高くはないだろうね。敵意も感じない。ガチで、話し合いだけをしに来たみたい」

 
 
 とはいえ、人間の心までは入っていない。対話ができるかどうか自体も、怪しいそうだ。

「あの、闇の世界樹ヨルムンガンド様、呼びにくいので、なんとお呼びすれば?」

 ハィラさんが、助け舟を出してくれた。さすが闇側の巫女さんだ。神様の扱いに慣れている。
 
「うむ。ヨルムンガンドだから、『ヨル』とでも呼んでもらおうか」

「ヨル様ですね。改めて、コーキです。よろしく」

「うむ、よろしく頼む」

 やはりヨル様からは、まったく敵意を感じない。 

「では、ご用件を」

「ふむ。まずは礼を言おう。大変、馳走になった。感謝いたす」

 ヨル様が、ボクたちに頭を下げてくるなんて。

「こちらこそ。お粗末さまでした」

「いやいや。神への供物を、粗末というべきではないな。実際、美味であった。ありがたくいただいたぞ」

 クトーニアンの過激派も、最近はおとなしいという。ハィラさんによると、「供物によって、ヨル様が満足したからではないか」とのこと。

 ヨル様がごきげんになると、クトーニアンも安心できるみたいだね。

「そうだ。我々からもお近づきのしるしをよこしておる。海鮮だ」

 一台の馬車が、村にやって来る。御者は、なんとクトーニアンの魔王様だった。

 すごいぞ、ヨルムンガンド様の持ってきたおみやげは。魚やエビ、貝類だけではない。ウニとかある。

 この世界って、そういうのもちゃんと食べるんだね。初めて知ったよ。

「ヨル様。頼んでいらしたモノを持ってきたのである」

 荷馬車から降りて、魔王がひざまづく。

「よろしい。我自ら、振る舞おうではないか」

 エプロン姿になったヨル様の手による、魚の解体ショーが始まった。ウロコをシャシャっと取って、三枚におろす。

 みんなは不思議がっていたけど、おいしそうだと見ればわかった模様。
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