ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

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最終章 ウッドゴーレムは、荒れ地を発展させました

第83話 世界樹の旅立ち

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「ありがとうございます。魚醤までいただいて」

「よい。では食べてみてくれ」
 
「いただきます、ヨル様」

 ウチで採れたワサビをつけて、と。

「おいしいです」

 語彙力が、ワサビと一緒に溶けていく。

 こんなおいしい赤身、初めて食べた。

 これいいなあ。運搬技術が発達していないはずなのに、新鮮だ。魔法で運んできたのだろう。

「うまい! これプリプリですね」

 ぶっちゃけウニなんて、回転寿司で一回だけ頼んだくらいだけど。珍味かどうかは、食べてみればわかる。

「いや、コーキ、それは食べ物なのか?」

「あれ? ヴェリシモ王女って、現地人ですよね。海沿いに王都があるのに、ウニをご存知ない?」

 詳しく聞くと、やっぱり食べないんだとか。

「ウニといって、高級食材なんですよ」

「あんなトゲトゲの身体に、こういった高級食材が詰まっているなんて、誰も想像しないぞ」

  そういっていたヴェリシモさんも、ウニをひとくち食べて顔がほころんだ。

「いいね。繊維を壊さない魔法技術は、興味があるよ。クセが強いけど、おいしいよ」

 逆に、パロンはウニに興味を持つ。

「そうなのか、魔女殿?」

「うん。平気平気」

 パロンに促されて、ヴェリシモさんも食べてみる。

「なるほど。偏見を持ってはいけないな」

 ヴェリシモさんは、ウニに関心を持ったみたいだ。

「おいしいよね。やっぱり未知のものってのは、自分で味わって判断しないと、価値がわからないよね」

「これはよい。酒が進む料理である」

 さすが新しい物好きのエルフと森の賢人は、適応力が早い。

「メシに刺身を乗せて、ぜいたくにいただくぜ!」

 ナップルも、自分なりに海鮮丼にして食べている。

 ボクも、ナップルをマネして食べ進めた。

 いつの間にか、アザレアとチェスナも同じように、海鮮丼を楽しんでいる。

 異世界では、お寿司のような上品な料理より、ゴハンに乗せるだけの海鮮丼がウケるみたい。

 
 ボクたちも、振る舞いしなければ無礼というもの。山の幸で、お返しをした。

「どうぞ。山菜の天ぷらです」

「いただこう」

 ヨル様は天ぷらを、塩をほんの少しだけまぶして召し上がる。通だなあ。教えてもいないのに。

「ほう、野菜に小麦の衣をつけて食うのか。ここの野菜は、生でも十分うまいと思っていた。手を加えると、また格別な味となるな。風味や楽しみ方に、変化が出る」

「そうであろう? コイツをやっておくれ。もう病みつきじゃ」

 賢人クコが、日本酒をヨル様に振る舞った。

「うむ……ああ、これは止まらぬ。かわりを持て」

 ヨル様の食欲が、天井を突破したらしい。

 ボクは急いで、料理を作り続けた。

 宴は終わり、ボクはヨル様と向き合う。 

「ごちそうさまでした。それで、お話でしたね。みなさんは、どうなさるおつもりで?」

「それなんだが、別れを言いに来たのだ」

 ヨルさんは、新天地を探すという。
 クトーニアンの巫女ハィラさんを、お嫁さんにもらって。
 
「アプレンテスにとどまっていては、またクトーニアンの悪者がいつ自分を利用しに来るかわからぬ。安住の地を求め、海へ繰り出そうかと思うておる」

「人間との戦いは、避けられないのですか?」

「魔物にも人間にも、悪党はいよう。それと同じなのだ。人同士の争いは、避けられぬ」

 どうあっても、世界にはクトーニアンの悪神を利用する者がいる。彼らは悪行の世界でしか、生きられない。

「そういう者たちに力を与えぬよう、我は人の触れられぬ、別天地で生きることにしたのである」

 だとしたら、結構な海の底を目指すのかも知れない。

「お気をつけて」

「お主もな。コーキ」

 翌日、ボクらはヨルさんを港町でお見送りする。

 港に、沈めたはずの宝船が浮かんできた。穴は開いたままだが、神通力で浮遊している。

「さらばだ。世話になった」

「では参りましょう、ヨル様」

 ハィラさんも、ヨルさんとの結婚はまんざらではない様子だ。頼られるのは、うれしいみたい。

「いいですね。神様とご結婚なんて」

 ピオナが、うらやましそうに告げた。

「コーキは、これからどうする?」

 ヨルさんの背中を見守りながら、パロンが聞いてくる。

「ボクも、世界を見て回ろうかな。今まで旅してきた軌跡を、見ていきたい」

「ついていくよ」

 パロンに続いて、ピオナも「お供いたします」と言った。

 
 
 数日後、ボクはパロンたちと、クレキシュ渓谷郡に行くことに。

 改めて、ネイス・クロトン村の人たちとあいさつをしていく。

 思えばなにもなかったこの場所から、本格的な世界樹生活が始まったのだ。

「ギンコさん、行ってきます」

「気をつけなよ。それにしても、大所帯になったね」

 ギルドマスターのギンコさんにあいさつをして、出かける。

「ピオナさん、村長代行は任せてください」

 チェスナが、胸の前で両手を握りしめた。
 最初こそ幼さが残っていたが、今ではすっかり頼もしい店員さんである。

「このダンディ・リオン財団が、チェスナ及びネイス・クロトン村をお守りすると誓おう」

「オレとアザレアがいるのも、忘れちゃいけねえぜ」

 ガルバが、リオンの肩に腕をかけた。

 人間族の冒険者とはいえ、みんなすごい戦いを経て強くなった。そこらの魔物は、逃げ出すだろう。

「じゃあ、行ってくるぞ」

「スプルス、留守を任せる」

 ナップルとヴェリシモさんは、ボクに同行する。

 トレント型世界樹のネットワークを使って、一瞬でクレキシュまで飛んだ。
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