84 / 84
最終章 ウッドゴーレムは、荒れ地を発展させました
第84話 最終話 ウッドゴーレムが緑化した荒れ地たち
しおりを挟む
渓谷に到着すると、相変わらず小雨が振り続けている。邪教クトーニアンたちを洗い流すかのように。
「うわああ。随分と立派になって」
大きな川となった渓谷を見て、ボクはため息をついた。
「木々が生い茂っているよ」
「アプレンテスの中でも、群を抜いて荒れ放題だったのにのう」
パロンとクコが、当時を振り返る。
砂漠だった地面には、木々が生えていた。
きっと隣にあるシドの森から、動植物たちが戻ってきたんだ。彼らが植物を食べて、種を運ぶことにより、これからも自然が循環していくだろう。
薬草の採取だろうか、冒険者たちの姿も見られた。こちらを見て、手を振ってくる。
ボクたちも、手を上げて返した。
「街まで、できてるよ!」
いつの間にか、居住地までできあがっているではないか。
「ウチより、立派じゃない?」
「そうだね。あっ、獣人族だ」
管理しているのは、獣人族さんたちみたいである。
「ボクたちが使った休憩所を拠点に、都市が出来上がってるね」
さっそく、街に入ってみた。
「こんにちは、コーキといいます」
「ああ、コーキさん! すいません。あなたの許可を取らず、アプレンテス地域に勝手に棲み着いてしまって」
獣人族さんたちが集まってきて、みんなしてボクに頭を下げてくる。
「実はここ、シドの森に住んでるブナさんからの紹介で」
「ほう、ブナが!」
賢人クコと親しい、シドの森の管理者だ。
「独り立ちできる、いい物件がないかと相談したら、アプレンテスをススメられましてね」
「ブナのやつが、そんな話をのう。あやつにしては、たいした仕事じゃわい」
クコも、感心している。
「大丈夫ですよ。ブナさんはボクも知っています。アプレンテス全土を、ボクが管理してるってわけではないので。アプレンテスは広いです。ガンガン住んであげてください。ボクも、すべてを管理できるわけじゃないですから」
「そうおっしゃっていただけると、ありがたいです」
今後も、彼らによって街は発展していくはずだ。
世界樹の様子を見に行く。
「前に見たときより、大きくなったな」
「そうだな。相変わらず、木の下にいると、宇宙の中に放り込まれた気分になる」
世界樹を見上げながら、ヴェリシモさんがつぶやいた。
天空城に行く際に見かけたが、それ以上に大きくなっている。
「お久しぶりです、主殿」
ピオナがトレントの幹におでこを当てた。元主に、あいさつをする。
「ええ。コーキさまの側で大切にしてもらっております」
頭をトレントから離し、こちらに戻ってきた。
「もういいの?」
「はい。情報は村の世界樹を通して共有しておりましたので、顔見世だけの用事ですね」
ボクたちはお酒と野菜をお供えして、トレントの森を後にする。
「他のトレントの様子も、見に行こう」
「いいね。行こう行こう」
各トレントは、クレキシュにある大型の世界樹と、すべて根っこで繋がっている。
ボクたちは、そのネットワークを伝っていけばいい。
次の目的地は、オーヒアレファ火山脈である。
「採掘しても、岩に価値がない」として、ボクたちも見捨てざるを得なかった土地だった。
今は、どうなっているのだろう?
「おお、すっげ!」と、ナップルが興奮してツルハシを振るう。
「どうしたの、ナップル?」
「岩に魔力が戻ってやがる!」
ナップルが岩を掘ると、魔石がザクザク出てきた。
「まあ、魔石つっても大した量じゃないんだが、それでも、土地が蘇っている証拠だ!」
これなら作業員もオーヒアレファに戻ってくるだろうと、ナップルは喜ぶ。
オーヒアレファは、悪い方のクトーニアンが拠点にしていたせいで、土地がもっとも交配していた。
それが数日もしないうちに、世界樹の養分を土地が吸って、ここまで魔力が回復している。
自然も戻っていて、再開発の目処も立ちそうだ。
「火山活動も活発だから、それだけ気をつけないといけないけどな。それでも、山が息を吹き返したことには変わりないぜ。ドワーフがまた、活発に活動できるだろうよ!」
「よかったね、ナップル」
王都ダリエンツォの温泉に浸かって、旅の疲れを落とす。
「みんなして、混浴しなくても」
裸の女性たちに囲まれて、ボクは肩身が狭い。
「いや、コーキはノーカンだからいいのだ」
「そうそう! こんな絶壁見ても、うれしくねえだろう?」
ヴェリシモさんとナップルがそう言うが、賛同できないよ。
ネイス・クロトン村まで、戻ってきた。
「コーキ、次は、どこへ行こうか?」
「そうだね。船で新天地を目指そうかな」
「いいね! 夢が広がるよね。ついていくよ」
パロンがバンザイしながら、ボクに抱きついてくる。
「船なら、こちらで用意しよう」
ティンバーさんが、新しい船を用意してくれるそうだ。
「ありがとうございます。ですが、人手だけください。自分の身体で船を作って、旅をします」
ここから先は、どこまでの冒険になるかわからない。だから、王都のお世話になるのも気がひけた。
「わかった。いい人材がいるから、手配しよう」
数週間後、ボクの船が完成する。
王都の港から、新しい大陸を目指す。
「ワタシたちも準備OKだよ、コーキ」
「出発しよう、パロン!」
さあ、次の大陸には、どんな自然が待っているんだろう。
(おしまい)
「うわああ。随分と立派になって」
大きな川となった渓谷を見て、ボクはため息をついた。
「木々が生い茂っているよ」
「アプレンテスの中でも、群を抜いて荒れ放題だったのにのう」
パロンとクコが、当時を振り返る。
砂漠だった地面には、木々が生えていた。
きっと隣にあるシドの森から、動植物たちが戻ってきたんだ。彼らが植物を食べて、種を運ぶことにより、これからも自然が循環していくだろう。
薬草の採取だろうか、冒険者たちの姿も見られた。こちらを見て、手を振ってくる。
ボクたちも、手を上げて返した。
「街まで、できてるよ!」
いつの間にか、居住地までできあがっているではないか。
「ウチより、立派じゃない?」
「そうだね。あっ、獣人族だ」
管理しているのは、獣人族さんたちみたいである。
「ボクたちが使った休憩所を拠点に、都市が出来上がってるね」
さっそく、街に入ってみた。
「こんにちは、コーキといいます」
「ああ、コーキさん! すいません。あなたの許可を取らず、アプレンテス地域に勝手に棲み着いてしまって」
獣人族さんたちが集まってきて、みんなしてボクに頭を下げてくる。
「実はここ、シドの森に住んでるブナさんからの紹介で」
「ほう、ブナが!」
賢人クコと親しい、シドの森の管理者だ。
「独り立ちできる、いい物件がないかと相談したら、アプレンテスをススメられましてね」
「ブナのやつが、そんな話をのう。あやつにしては、たいした仕事じゃわい」
クコも、感心している。
「大丈夫ですよ。ブナさんはボクも知っています。アプレンテス全土を、ボクが管理してるってわけではないので。アプレンテスは広いです。ガンガン住んであげてください。ボクも、すべてを管理できるわけじゃないですから」
「そうおっしゃっていただけると、ありがたいです」
今後も、彼らによって街は発展していくはずだ。
世界樹の様子を見に行く。
「前に見たときより、大きくなったな」
「そうだな。相変わらず、木の下にいると、宇宙の中に放り込まれた気分になる」
世界樹を見上げながら、ヴェリシモさんがつぶやいた。
天空城に行く際に見かけたが、それ以上に大きくなっている。
「お久しぶりです、主殿」
ピオナがトレントの幹におでこを当てた。元主に、あいさつをする。
「ええ。コーキさまの側で大切にしてもらっております」
頭をトレントから離し、こちらに戻ってきた。
「もういいの?」
「はい。情報は村の世界樹を通して共有しておりましたので、顔見世だけの用事ですね」
ボクたちはお酒と野菜をお供えして、トレントの森を後にする。
「他のトレントの様子も、見に行こう」
「いいね。行こう行こう」
各トレントは、クレキシュにある大型の世界樹と、すべて根っこで繋がっている。
ボクたちは、そのネットワークを伝っていけばいい。
次の目的地は、オーヒアレファ火山脈である。
「採掘しても、岩に価値がない」として、ボクたちも見捨てざるを得なかった土地だった。
今は、どうなっているのだろう?
「おお、すっげ!」と、ナップルが興奮してツルハシを振るう。
「どうしたの、ナップル?」
「岩に魔力が戻ってやがる!」
ナップルが岩を掘ると、魔石がザクザク出てきた。
「まあ、魔石つっても大した量じゃないんだが、それでも、土地が蘇っている証拠だ!」
これなら作業員もオーヒアレファに戻ってくるだろうと、ナップルは喜ぶ。
オーヒアレファは、悪い方のクトーニアンが拠点にしていたせいで、土地がもっとも交配していた。
それが数日もしないうちに、世界樹の養分を土地が吸って、ここまで魔力が回復している。
自然も戻っていて、再開発の目処も立ちそうだ。
「火山活動も活発だから、それだけ気をつけないといけないけどな。それでも、山が息を吹き返したことには変わりないぜ。ドワーフがまた、活発に活動できるだろうよ!」
「よかったね、ナップル」
王都ダリエンツォの温泉に浸かって、旅の疲れを落とす。
「みんなして、混浴しなくても」
裸の女性たちに囲まれて、ボクは肩身が狭い。
「いや、コーキはノーカンだからいいのだ」
「そうそう! こんな絶壁見ても、うれしくねえだろう?」
ヴェリシモさんとナップルがそう言うが、賛同できないよ。
ネイス・クロトン村まで、戻ってきた。
「コーキ、次は、どこへ行こうか?」
「そうだね。船で新天地を目指そうかな」
「いいね! 夢が広がるよね。ついていくよ」
パロンがバンザイしながら、ボクに抱きついてくる。
「船なら、こちらで用意しよう」
ティンバーさんが、新しい船を用意してくれるそうだ。
「ありがとうございます。ですが、人手だけください。自分の身体で船を作って、旅をします」
ここから先は、どこまでの冒険になるかわからない。だから、王都のお世話になるのも気がひけた。
「わかった。いい人材がいるから、手配しよう」
数週間後、ボクの船が完成する。
王都の港から、新しい大陸を目指す。
「ワタシたちも準備OKだよ、コーキ」
「出発しよう、パロン!」
さあ、次の大陸には、どんな自然が待っているんだろう。
(おしまい)
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる