オカルト刑事《デカ》 ~スラッシャーと化したヘラギャル VS 百人の退魔師~

椎名 富比路

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第二章 ヘラるスラッシャー対百人の退魔師 ~ピが大事にしていたペットと一つになった。これであたしも、ピの一部ってことだよね~

キリちゃすの過去を調査

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「カオル、お尋ねしたいことがあります。キリチャスとは、どういう配信者だったんです?」

 キリちゃすの地元まで、二〇分ある。

 新幹線に乗りながら、オレは緋奈子ヒナコにキリちゃすの配信内容を聞かれた。

「平たく言えば、炎上系だな」

 こういうのは、実物を見せたほうが早い。

 だが、キリちゃすの動画はほとんどが削除されている。チャンネルも死んでいて、アーカイブも残っていない。他の人間が無断でアップした、過去動画をさらう。

「いえーい、キリちゃすだよぉ」

 カメラに向かって、キリちゃすが手を振っている。が、顔は笑っていなかった。

 マスクもせず、顔を晒している。が、ケバい化粧をしているので実物はわからない。衣装は、一貫している。

 しかし、動画はひどいものだ。

 当時は、「歌ってみた」などおとなしい動画ばかり。しかし、歳を重ねるごとに内容が過激になっていった。露骨な再生数稼ぎが目立つ。

 無断でキャンプをして人の山を燃やしかける、配信を切り忘れた状態で着替える、万引など過去の犯罪歴を晒すなどである。

 あまりの過激すぎる内容に、緋奈子はマユを潜めた。

「小学生の頃から万引とか、筋金入りですね」
「ああ。個人勢じゃなかったら、事務所が詫びるレベルだった」

 いわゆる健康器具を自分の……に当てて、耐久ゲーム実況してる動画を、緋奈子に見せる。具体的な場面は映していないが、声が生々しい。

「声の跳ね具合からして、オーガズムに達していますね」
「やっぱりそうなのか?」
「カオル、そこは食いつくところではありません」

 緋奈子は動画を消した。呆れた表情で、首をかしげる。

「よくこんなので、再生数を伸ばそうと考えましたね」

 オレ自身、配信者の心理状況などはよくわからん。

「問題行動ばっかり起こしていてさ、親ともしょっちゅう衝突していたらしい」

 実家で配信してときは、親が乱入などがあった。

「ただ、不良のガキなんかには人気でさ、カリスマ的な人気はあった」

 特にキリちゃすは、細いながら胸がFカップとデカくてスタイルがいい。エロ系の動画が上がると、爆発的に枠が盛り上がった。

 だからエスカレートしていき、配信をやめられなくなってきたんだと思う。

「理解できませんね。承認欲求とは、そんなに快感なのでしょうか?」
「人は他人から相手にされなくなると、悪いことをしてでも注目されたいって言うからな」

 オレが語ると、緋奈子は首を振った。

「一回だけ警察沙汰になって、活動休止に追い込まれたとか、よその部署から聞いたな」

 しばらくすると、別の家で配信が始まったのである。

 そこから、キリちゃすはおとなしくなっていく。動画内容も、人生相談などが増えていった。

 ダメ人間がダメなりに生きる方法、などである。一般人にとっては、突飛すぎてタメにはならない。が、本当に疲れている相手には説得力のある解答で人気が高かった。

 ただ、順調だった配信内容に陰りが出始める。とある配信中、壁に人影が写ったのだ。

「で、その家が恋人の部屋なんじゃないか、ってウワサが立ったんだよ」

 地下アイドル系で売っていたので、ファンは「裏切られた!」と暴れだす。炎上なんて騒ぎではない。今でも憶測が飛び交っている。

「今から、一週間前くらいだな」

 消えた伝説の地下アイドルは、スラッシャーになって戻ってきた。

「それで、チャンネルも捨ててしまったのでしょうか?」
「今から、真相を調べに行こう。着いたぞ」

 オレはスマホをしまう。

 
 キリちゃすこと灯芯トウシン キリカの、友人関係を当たってみた。

 クラスメイトなどから学生当時の事情を聞く。だがどれも、あまりいい評判を聞かない。

「昔から、暗い子だった」……人と積極的に交わるタイプではなかったという。コミュニティは、最低限にとどめていたらしい。

「成績は上の中だったが、字は汚かった」
「頭はいいが、世渡りは下手な子だった。YESともNOとも言わない子で、めんどくさかった」

 小学校の教師に至っては、こういった評価である。

 六年時に担任をしていた男性教諭が、当時を語った。

 幼いのに、変な色気があったらしい。
 聞けば幼少期から、実の父親から性的な行為を強要されていたとウワサが。あくまでもウワサレベルで、学校側も追求できなかったとのことだ。

 キリカの話をしながら、男性教諭が舌なめずりをした。当時を思い出しているのだろう。

 おいおい、マジか。あんたも狙っていたのかよ。

 緋奈子も、不愉快そうな顔をしていた。

 中学の同級生にも当たってみたが、同じような感じである。

「顔もスタイルもよかったから、男子から言い寄られていた。どの男子も振っていたが、実際はヤるだけヤッたのではと当時でも思う」
「集団に交じるような子ではなかったので、女子からは異様に嫌われていた」
「好きな異性があの子に好意を持ってしまい、私は今でも大嫌い」

 この頃から、問題行為が目立つようになり、補導されることも多かったという。ルックスも、ギャルっぽく変貌したらしい。

 高校に進学してからは、不登校が目立つように。いじめられていたというより、学校に関心がなくなったのではとのこと。

 極めつけは、高校のクラスメイトだったという二人組の女性に聞き込みをした時だ。

「そういえばさ、ヤリモクの男子集めてキリカをマワそうぜ、って話とかしていたよね?」

 やたらケバい女が、愉快そうに笑った。

 警察の前だと言うのに、その女子たちは平然と当時を語る。

「あったよね。いつだっけ?」
「高校卒業のとき」
「そうだそうだ! あったあった!」

  別の女性が、手を叩く。まるで、武勇伝でも話しているかのようだ。よほど、キリカは嫌われていたのだろう。

「その男性たちと、お話はできますか?」

 緋奈子が尋ねると、二人は怯えた顔で「知らない」と首を振る。

「連絡つかないんだよね? メッセが今でも未読のままでさ。あの後、その男子たちは行方不明になったんだよ。どうなっちゃったんだろう?」
「ウチらも消されるのかな?」
「でも、ウチらは話をユミから聞いただけじゃん? 犯行に関わっているわけじゃないしさ、問題なくね?」
「消されるとは?」と、緋奈子が話題に食いつく。
「主犯、ユミっていうんだけど。計画実行の翌日に、自宅で内臓だけの状態で見つかったらしいよ」
「あいつらも死んだんじゃない? って話になってさ。忘れようってなった」

 当時のショックが原因で、記憶が曖昧だったのか。

「彼女が動画配信しているなどというウワサは、ありましたか?」

 二人は総じて、首を振る。

「そんな子じゃなかったよね?」
「うん。ギャルっぽかったけど、自己主張は弱い方だったよ」

 彼女たちは、キリカがキリちゃすとわからないようだ。

 当時のキリカは、ツインテールなど媚びた髪型などにはしていなかったとか。

 しかし、この時点で彼女が『キリちゃす』として活動していた時期と整合性が取れる。不登校だったときに、配信していたのだろう。
 
 そこから、キリちゃすの交友関係は途絶える。

 彼女は、大学へ進学していない。工場で短期間バイトしたというが、そのバイト先もなくなっている。

「……キリちゃすが学生の当時から、魔王が動いていた?」
「それは、ありえるかもな。アイツが活動していたのは、一七歳くらいなんだ。学校で話題になりそうになってさ」

 学生当時のキリちゃすに、魔王は既に目をつけていた可能性がある。

「いつ、接触したのでしょう?」
「キリちゃすが別の家に引っ越したあたりが、怪しいな」

 異性との同棲疑惑が立ち上がった頃だ。

「それにしても、男性のウワサが気になりますね」
「だな。そっちを探った方がいいかもしれん」

 今日の捜査を打ち切ろうと、オレは伸びをする。
 
「遅いから、今日はもう寝ようぜ」
「その前に、よっておきたい場所があります。H県警はどこです?」
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