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第一章 底辺配信者、スライムを拾う
第2話 スライム「ワラビ」の観察日記
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ボクは朝食も取らず、すぐに冒険者ギルドへ。ここが二四時間営業で助かったよ。
「お待ちしておりました、ツヨシさん。『ダンチューブ』であなたの動画、見ましたよっ。すっかり有名人ですねー」
「はい。おかげさまで」
今までボクが撮ってきた分の三〇倍、ワラビで視聴者数を稼いでしまった。
「そうではなくて! ボクの住所などが、特定されてしまっていないでしょうか?」
「ないですね。我がギルドのカメラは、性的なコンテンツ、及びプライバシーに関するものには、修正が入ることになっています」
この手のトラブルは、ちょくちょくあるらしい。
配信切り忘れて、入浴したり着替えたりなど。恋人とイチャイチャする場面が、あったときも。クレジットカードを、間違って晒してしまうことだってある。
中にはモンスターを相手に、エッチなことをする動画もあるそうだ。
もちろん一発NGで、アカウントごと消滅である。
だが一応、ギルドが処理をしてくれるという。
さすがに暴言を吐いていたとかは、流されてしまうそうだが。
「ツヨシさんの場合、住所までの道のりなどは公開されていません」
近所の人だと特定してしまいそうだが、とのこと。
「よかったな、ワラビ。安眠を妨害されることはなさそうだ」
「もしよろしければ、我々の提供する『冒険者の宿』などもご提供させていただきますね」
配信業に専念したい人は、そちらを利用することもあるそうだ。だが、そうなると完全にギルドの管理下となるが。
「それがお嫌でしたら、ダンジョン近くのマンションに住むという手もございます。やや、お高いですが」
こちらは、かなり稼いでいる人用の家である。
「考えておきます。ありがとうございます」
ワラビを撫でながら、ボクはお姉さんに頭を下げた。
「動画、よかったです。『あーんしているところ、すこ』ってコメントは、わたしが打ったんですよー」
うっとりしながら、受付のお姉さんは語る。『すこ』って……。
なんだか、ギルドにまでファンができてしまっているな。
「ですが、スライムをテイムして使役する冒険者は、少ないんです。ほら、やっぱりどうせテイムするなら、強いモンスターと契約したいらしくて」
テイムできるモンスターは、一人につき一体だけらしい。
それで、スライムは不人気なのだとか。
「こんなにカワイイのに」
ボクが言うと、ワラビがぷるんとボクの肩の上で飛び跳ねた。
「いいご主人さまと出会えて、よかったですね。ワラビちゃん」
プルプルッ、とお姉さんの声にワラビが呼応する。
「今日はどのダンジョンにいたしますか?」
「いつもの階層へ」
ボクはそろそろ、次の階層へ向かおうと思っていた。しかし、ワラビを強くするほうが先だ。
『こんにちは。ツヨシです。今日は、スライムのワラビを育てたいと思います』
階層の入り口で、ボクは配信を始める。こんなとき、スマホやカメラを構えないってのは楽だ。武器を装備していては、撮影機材を携帯できない。できるだけ動きやすい格好で、冒険したいもんね。
ゴブリンを相手にする。まずはボクが適当に弱らせて、ワラビにとどめを刺させた。
「よし。やったぞ。成功だ」
ボクは手を叩いて喜んだ。テイムしてから、初勝利である。
ワラビは、ゴブリンを吸収した。
といっても、グロい描写などはない。ワラビが抱きついたら、勝手にゴブリンの死体は光の粒子となって分解された。後は、持っていた石斧とカブトだけになる。
ゴブリンの所持品も、ワラビは分解して養分とした。
この調子で、ゴブリンを狩り続ける。
ワラビが、ゴブリンの死体を分解しているときだ。
洞窟の裏道に、光るものが。
「危ない!」
ボクは、ワラビをかばうために前へ出る。
「痛い!」
隠れていたゴブリンアーチャーに、腕を射抜かれてしまった。
「この!」
落ちていた石斧を、ダンジョンの奥へ投げ飛ばす。
アーチャーの顔面に、石斧がクリーンヒットした。どうにか、倒せたようだ。
「大丈夫か、ワラビ……」
なんだか、急に身体から力が抜けてきた。腕が、青くなっている。当たった矢に、毒が仕込まれていたのか。
プルプルーッ、と、ワラビがボクに駆け寄った。ボクの腕にしがみつき、念入りにマッサージをする。
段々と、身体が軽くなっていく気がした。ワラビが、毒を吸い出してくれたのか。
「ありがとう。ワラビ。助かったよ」
ボクは治った腕で、ワラビを撫でる。
もしワラビがいなかったら、ボクはこのダンジョンに取り残されてモンスターに食べられていたかも。
身体は回復したが、体力が落ちていた。ここは、引き返さないと。
帰り道でモンスターを狩ろうと思ったが、どういうわけか何も出てこない。
これ幸いと、出口へ急いだ。
「動画を見ました。大丈夫ですか、ツヨシさん?」
「おかげさまで」
「救援部隊を派遣しようとしたのですが、ご自分で解決なさっていたので、見守ることにしました」
帰り道でモンスターに襲われなかった理由は、冒険者たちが退治してくれていたからか。感謝しないとね。
「今日はキミの好きなのを買ってあげる。助けてくれたお礼だから」
報酬をもらって、いつものスーパーへ。
とあるコーナーへ立ち寄った瞬間、妙なことが。
プルプルッ、と、一際ワラビが飛び上がる。
「桃が、ほしいのかい?」
そういえば、フルーツを食べるかどうか、チェックしていなかった。レモン味のポーションを、飲んだんだ。果物だって、食べるよね。うっかりしていた。
「じゃあ、買えるだけ買ってあげるね」
ボクが桃を買うと、ワラビが喜んだ。
他のお客さんも、微笑ましく見つめている。
そそくさに、ボクは自分の買い物を済ませた。見世物じゃないからね。
「はい。あーん」
桃を切り分けて、ワラビに食べさせる。
「うわ、すごい」
あれだけ買ってきた桃が、一瞬でなくなった。飛びつき具合が、他の食材と比較しても段違いである。
「こんなに食いついてくれるなら、モモって名前にしてあげたらよかったかもね」
そんなことを話したら、ワラビが横移動した。ワラビという名前、気に入ってくれているんだな。それはテイマーとして、ちょっと誇らしい。
「キミがしゃべれたら、もっとキミのことを知れるんだけど……」
まあ、高望みしてもしょうがないよね。
「ボクは、キミが言葉を話せなくても、大好きだよー」
撫でてあげると、ワラビはプルプルっと寄り添ってきた。ああ、かわいいなあ。
さすがに今日は疲れた。もう寝よう。
翌朝、ボクは聞いたこともない女性の声で目を覚ました。
「お仕事の時間です。起きてくださいマスターツヨシ」
「う、ん……あれ? キミは、ワラビだよな?」
「はいマスターツヨシ。レベルが上がって、言葉を話せるようになりました」」
なんと、ワラビがボクに語りかけてきたではないか。
「お待ちしておりました、ツヨシさん。『ダンチューブ』であなたの動画、見ましたよっ。すっかり有名人ですねー」
「はい。おかげさまで」
今までボクが撮ってきた分の三〇倍、ワラビで視聴者数を稼いでしまった。
「そうではなくて! ボクの住所などが、特定されてしまっていないでしょうか?」
「ないですね。我がギルドのカメラは、性的なコンテンツ、及びプライバシーに関するものには、修正が入ることになっています」
この手のトラブルは、ちょくちょくあるらしい。
配信切り忘れて、入浴したり着替えたりなど。恋人とイチャイチャする場面が、あったときも。クレジットカードを、間違って晒してしまうことだってある。
中にはモンスターを相手に、エッチなことをする動画もあるそうだ。
もちろん一発NGで、アカウントごと消滅である。
だが一応、ギルドが処理をしてくれるという。
さすがに暴言を吐いていたとかは、流されてしまうそうだが。
「ツヨシさんの場合、住所までの道のりなどは公開されていません」
近所の人だと特定してしまいそうだが、とのこと。
「よかったな、ワラビ。安眠を妨害されることはなさそうだ」
「もしよろしければ、我々の提供する『冒険者の宿』などもご提供させていただきますね」
配信業に専念したい人は、そちらを利用することもあるそうだ。だが、そうなると完全にギルドの管理下となるが。
「それがお嫌でしたら、ダンジョン近くのマンションに住むという手もございます。やや、お高いですが」
こちらは、かなり稼いでいる人用の家である。
「考えておきます。ありがとうございます」
ワラビを撫でながら、ボクはお姉さんに頭を下げた。
「動画、よかったです。『あーんしているところ、すこ』ってコメントは、わたしが打ったんですよー」
うっとりしながら、受付のお姉さんは語る。『すこ』って……。
なんだか、ギルドにまでファンができてしまっているな。
「ですが、スライムをテイムして使役する冒険者は、少ないんです。ほら、やっぱりどうせテイムするなら、強いモンスターと契約したいらしくて」
テイムできるモンスターは、一人につき一体だけらしい。
それで、スライムは不人気なのだとか。
「こんなにカワイイのに」
ボクが言うと、ワラビがぷるんとボクの肩の上で飛び跳ねた。
「いいご主人さまと出会えて、よかったですね。ワラビちゃん」
プルプルッ、とお姉さんの声にワラビが呼応する。
「今日はどのダンジョンにいたしますか?」
「いつもの階層へ」
ボクはそろそろ、次の階層へ向かおうと思っていた。しかし、ワラビを強くするほうが先だ。
『こんにちは。ツヨシです。今日は、スライムのワラビを育てたいと思います』
階層の入り口で、ボクは配信を始める。こんなとき、スマホやカメラを構えないってのは楽だ。武器を装備していては、撮影機材を携帯できない。できるだけ動きやすい格好で、冒険したいもんね。
ゴブリンを相手にする。まずはボクが適当に弱らせて、ワラビにとどめを刺させた。
「よし。やったぞ。成功だ」
ボクは手を叩いて喜んだ。テイムしてから、初勝利である。
ワラビは、ゴブリンを吸収した。
といっても、グロい描写などはない。ワラビが抱きついたら、勝手にゴブリンの死体は光の粒子となって分解された。後は、持っていた石斧とカブトだけになる。
ゴブリンの所持品も、ワラビは分解して養分とした。
この調子で、ゴブリンを狩り続ける。
ワラビが、ゴブリンの死体を分解しているときだ。
洞窟の裏道に、光るものが。
「危ない!」
ボクは、ワラビをかばうために前へ出る。
「痛い!」
隠れていたゴブリンアーチャーに、腕を射抜かれてしまった。
「この!」
落ちていた石斧を、ダンジョンの奥へ投げ飛ばす。
アーチャーの顔面に、石斧がクリーンヒットした。どうにか、倒せたようだ。
「大丈夫か、ワラビ……」
なんだか、急に身体から力が抜けてきた。腕が、青くなっている。当たった矢に、毒が仕込まれていたのか。
プルプルーッ、と、ワラビがボクに駆け寄った。ボクの腕にしがみつき、念入りにマッサージをする。
段々と、身体が軽くなっていく気がした。ワラビが、毒を吸い出してくれたのか。
「ありがとう。ワラビ。助かったよ」
ボクは治った腕で、ワラビを撫でる。
もしワラビがいなかったら、ボクはこのダンジョンに取り残されてモンスターに食べられていたかも。
身体は回復したが、体力が落ちていた。ここは、引き返さないと。
帰り道でモンスターを狩ろうと思ったが、どういうわけか何も出てこない。
これ幸いと、出口へ急いだ。
「動画を見ました。大丈夫ですか、ツヨシさん?」
「おかげさまで」
「救援部隊を派遣しようとしたのですが、ご自分で解決なさっていたので、見守ることにしました」
帰り道でモンスターに襲われなかった理由は、冒険者たちが退治してくれていたからか。感謝しないとね。
「今日はキミの好きなのを買ってあげる。助けてくれたお礼だから」
報酬をもらって、いつものスーパーへ。
とあるコーナーへ立ち寄った瞬間、妙なことが。
プルプルッ、と、一際ワラビが飛び上がる。
「桃が、ほしいのかい?」
そういえば、フルーツを食べるかどうか、チェックしていなかった。レモン味のポーションを、飲んだんだ。果物だって、食べるよね。うっかりしていた。
「じゃあ、買えるだけ買ってあげるね」
ボクが桃を買うと、ワラビが喜んだ。
他のお客さんも、微笑ましく見つめている。
そそくさに、ボクは自分の買い物を済ませた。見世物じゃないからね。
「はい。あーん」
桃を切り分けて、ワラビに食べさせる。
「うわ、すごい」
あれだけ買ってきた桃が、一瞬でなくなった。飛びつき具合が、他の食材と比較しても段違いである。
「こんなに食いついてくれるなら、モモって名前にしてあげたらよかったかもね」
そんなことを話したら、ワラビが横移動した。ワラビという名前、気に入ってくれているんだな。それはテイマーとして、ちょっと誇らしい。
「キミがしゃべれたら、もっとキミのことを知れるんだけど……」
まあ、高望みしてもしょうがないよね。
「ボクは、キミが言葉を話せなくても、大好きだよー」
撫でてあげると、ワラビはプルプルっと寄り添ってきた。ああ、かわいいなあ。
さすがに今日は疲れた。もう寝よう。
翌朝、ボクは聞いたこともない女性の声で目を覚ました。
「お仕事の時間です。起きてくださいマスターツヨシ」
「う、ん……あれ? キミは、ワラビだよな?」
「はいマスターツヨシ。レベルが上がって、言葉を話せるようになりました」」
なんと、ワラビがボクに語りかけてきたではないか。
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