底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路

文字の大きさ
3 / 71
第一章 底辺配信者、スライムを拾う

第3話 しゃべるスライム ワラビ

しおりを挟む
「ワラビ。キミって、言葉が話せるの?」

 ボクは、しゃべれるようになったワラビに話しかけた。
 話し相手ができたのは、うれしい。でも、なにかの疾患でそうなったのなら大変だ。事情をちゃんと聞かないと。

「先程もいいました、マスターツヨシ。ワタシはゴブリンを倒したことでレベルアップし、言語機能を手に入れたのです」

 プルプルと身体を揺らしながら、ワラビは語る。

 テイマーは普通、スライムなんか育てない。ましてや、言語を理解するまでなんて。なので冒険者の誰も、しゃべるスライムを見たことがなかった。

「わるいスライムじゃないよ」と話すスライムは、ゲームの世界だけじゃない。

「レベルの高い金属型スライムなら、多少の言語は独学で学びます。が、独学なためにカタコトです」

「そうだったんだ。だから、今まで話せなかったんだね?」

「はい。マスターツヨシ。ワタシをここまで辛抱強く育ててくれて、ありがとうございます」

「堅苦しい感謝は抜きにしよう。こちらこそ、話し相手になってくれて、ありがとうね。ワラビ」

 ボクが伝えると、ワラビもプルンと身体を揺らして喜んだ。

「もし、マスターがワタシとお話したくないというのであれば、会話機能はオミットさせていただきますが? 中には、モンスターが言語を話すことに抵抗感があるという方もいますし」

「とんでもない!」

 せっかく話し相手ができたのに、会話できなくなるなんて。

「ありがとうございます。では、今後もお話相手にならせていただきます」

「こちらこそ、ありがとう」

「でもマスターツヨシ、あなたはもっと上を目指しているのでは? ワタシなんかがいては、足手まといなのでは」

「いいんだ」

 最初こそ、もっと強い階層に行けたらなと考えていた。それも、昔のことである。ワラビが成長して、部屋が手狭になったときにでも、上の階層を目指すとしよう。

「今は、キミと過ごすことがいちばん大切なんだ。その際にもっと上の階層を目指す必要ができたら、そのときに考えるさ」

「感謝します。マスターツヨシ」

 健気だなあ。絶対、手放したくない。

「朝食にしよう。いただきます」

 今日はトーストとコーヒーで、朝を済ませる。一緒に食べる相手がいるって、幸せだなあ。

「はい。あーん」

 トーストをちぎって、ワラビにも分けてやる。
 ワラビはトーストを、おいしそうに消化していった。
 一人だと味気ないのに、ワラビがいるだけで癒やされる。

「じゃあ、ダンジョンへ行こう」

 装備を整えて、ダンジョンに出発した。

「今日は、スケルトンのいる階層へいくよ」

「はい。マスターツヨシ。装備を剥ぎ取るんですね?」

「よくわかったねえ」

 スケルトンは、元冒険者だったりする。なので、彼らの装備品をいただこうというわけだ。
 ゴブリンやスケルトンを狩るのは、ダンジョン攻略の基本だったりする。
 これに慣れておかないと、モンスターを倒すときに躊躇してしまう。自分が、骨の仲間入りになったりもするのだ。

 相手だって、目的があって行動している。できるだけ、命のやり取りに慣れておかなければならない。

 標本のようなガイコツが、こちらへ攻撃してきた。のっそりとした動きだが、狙いは的確だ。

「とうっ」

 新調した両手持ちの棍棒で、骨の群れを打ち砕く。

 スケルトンの装備品を物色する。武器は、ろくなものを落とさない。ただし、スケルトン自体が落とす『骨粉』という素材は、異世界の薬草を活性化させる効果がある。薬草や毒消し草を材料とするポーションを大量生産するために必要なのだ。

 ちょっと、数が多すぎるのが気になるけど。

「マスターツヨシ、ワタシはどういった攻撃をすれば?」

「じゃあ、これを持って」

「魔法の杖、術で攻撃ですね?」

 スライムには一応、格闘術はある。とはいえ、ワラビの軽さではスケルトンにダメージは通らなかった。試しに戦わせてみたが、スケルトンの身体をすり抜けてしまう。ならば、魔法を使ってもらうのがいいかなと。

 ワラビは、魔法の杖を飲み込む。

「それ、食べ物じゃないよ?」

「大丈夫です。こちらのほうが、使いやすいので」

 ポゥ、と、ワラビが火の玉を吐いた。
 スケルトンが、炎を浴びて蒸発する。

「自分の身体を使って、魔法を撃ち出す砲台にした?」

「はい。武器を持つより、武器を吸収して肉体の一部にしたのです」

 そのほうが、スライムとしては戦いやすいのだとか。

 スライムの研究って、よほど進んでいないんだな。『冒険者の心得』を読み返してみたけど、ワラビの言っていたような項目はどこにもなかったよ。

 熟練の冒険者でさえ、ワラビたちスライムの生態はよくわかっていないようだ。

「とはいえ、便利なだけのモンスターって扱いはイヤだよ。キミは大切な、パートナーだ」

「ありがとうございます、マスターツヨシ」

 今日の狩りは、ここまでにする。


 
 ワラビの好物がモモとわかったから、スーパーで桃缶と、桃のジャムを買ってあげることにした。ジャムは奮発して、瓶タイプにしてやる。これなら、フルーツの高騰にだって負けない。

 帰ってワラビと夕食を囲みながら、撮った「ダンチューバー」の動画をチェックする。

 ワラビは焼き鮭を、骨だけ丁寧に吐き出しながら消化していた。育ちがいいね。


 相変わらず、再生数は伸びていた。ワラビ効果、すごいな。

『スケルトンをすり抜けていくワラビちゃん、エロくてすこ』

 これは、受付のお姉さんからのコメントだな。エロいって……。

「ごちそうさまでした。ところで、マスターツヨシ。気になるコメントが」

「どれどれ?」

 ボクは、スマホ動画に送られた動画に目を通した。

『あの階層、危ないよ』

 それは、ボクも気になっている。

 なんでもその階層は、心霊スポットであるトンネルに突如現れたダンジョンらしい。そのため、通行制限まで設けられている。

 この間も、「フロアボスのスケルトンキングをソロで退治に行く」といって、ギャル系「ダンチューバー」が行方不明になっていた。救出依頼まで出ていて、上位の冒険者が潜っている。

「用心するに、越したことはありませんね」

「うん」

 ボクたちはできるだけ、浅いエリアを討伐しよう。

 
 ワラビとの約束通り、比較的モンスターが弱いエリアを狩り場とする。

「そこの冒険者、手伝って!」

 若い女性の声で、SOSが。

 男性が胸を抑えながら、苦しそうな顔をしていた。胸からは、出血している。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...