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第二章 底辺配信者、畑を手に入れる

第8話 畑をもらう

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 ボクたちは、センディさんから提供された土地を確認しにいく。

「すごい、荒れ地ですね」

 畑は雑草が生い茂っており、住居用の小屋も小さい。ただ、ちゃんと整備すれば住めそうだ。

「オレの父が所有している土地だったんだが、買い取った」

 手に入れたところまでは、よかった。だけど、知り合いの建設会社が各事業に手を出しすぎて倒産してしまう。おかげで荒れ放題に。

「もっと信頼できるヤツに任せればよかったんだが、今では土地ごと負債になっちまった。だから、所有してもらえたらってな。どうだ、ギルド長?」

 センディさんが、ギルド長に確認を要求する。

「ふむ。各ダンジョンへ向かう拠点としては、悪くないね。ただ、土の状態が最悪だね」

「そこは、ワラビの腕の見せどころってもんだろ?」

 ワラビは言われなくても、平べったい状態になった。畑の端から端まで長細くなったワラビは、モップのように畑の雑草を食べ始める。
 雑草を分解して、肥料にもしているようだ。
 何体にも分裂して、手分けして雑草抜きと耕しを行う。

「マスターツヨシ、あとは種と水さえあれば、問題ありません」

「わかったよ。では、種を何粒かください」

 ボクはギルド長から種を受け取って、ワラビが耕した土に植えていく。 

「スライムは、気に入ったみたいだぜ?」

「たしかに、このためのスライムとも言える」

「こんなボロッボロの畑を、テイムしたスライムが緑化したってんなら、ワラビの実力がガチだった証明になる」

「キミの言うとおりだね。わかった。ここをギルド指定の土地として活用させていただく」

 ボクたちが栽培する費用は、すべてギルドが持ってくれるという。

「マジかよ? タダでツヨシに譲ってやるって言ってるのに」

「これだけ広大な荒れ地を、無料というわけにはいかない。費用はすべて、ギルドが支払わせてもらうよ」

「いいのかよ?」

「こちらは、テイムモンスターの資料をいただけるのだ。これっぽっちの土地を買っても、お釣りが来るくらいさ」

 ならばと、できた野菜も分けることで手を打った。

 データも受け取るわけで、その価値は十分にあるという。

 それだけ、ワラビは興味深い存在らしい。

「ではツヨシさん、ワラビさん、必要なものがあったら言ってくれ。では」

「はい。では、モモの木をください」

 ワラビが好きなモモを、この畑で育てようと思う。

「わかった。手配しよう」

 ギルド長は、ボクたちを残して去っていく。

「そうと決まれば、オレたちも引っ越しの準備をするかな」

「みんなも、ここに住むの?」

「オレたちは、パーティだからな」

 ひとまずセンディさんが、業者に連絡をした。小屋の整備を、してくれるという。

 コルタナさんは、ソロ狩りに向かうという。この畑に適した薬草を、探すらしい。

「薬草が作れたら、ポーションも自作できるわ。安上がりだし、人に売ることも可能よ」

 農薬の材料も、育ててくれるそうだ。

「それはいいですね。よろしくお願いします」

「でしたらコルタナ様、こちらの土と草の成分表です」

 この畑にある土に含まれた栄養素を、ワラビがデータ化してくれていた。そんなことまで、できるのか。

「ありがとう、ワラビちゃん。いい薬草が採れそうね」

 杖を持って、コルタナさんはダンジョンへと向かった。
 ボクは、近くの川から水を引いてくる。用水路があるため、比較的簡単に作業ができた。

「センディさん、ありがとうございます」

「いいってことよ。土地の有効活用ができるんだ。オレのためでもあるから、ワケないさ」

 でも、生まれて初めて、自分の城ができる。

 一生かかっても、家なんて手に入らないと思っていた。

「家で希望があったら、言ってくれ」

「ワラビが走り回れる広さが、ほしいです」

「お前さんってホントに、ワラビファーストだな」

「ボクの生きがいは、ワラビなので」

「わかった。そうしよう」

 ボクがセンディさんからもらった畑は、四面ある。

 三面に穀類と野菜を植えておいた。

「畑で量産できそうな薬草を、採ってきたわ」

 コルタナさんがダンジョンから持ち帰った薬草を、畑の一角に植えた。

「あとは、これで土を病気から守ればいいわ」

 ボクはコルタナさんから、枝豆の種をもらう。
 残った一面は、イネ科やマメ科の緑肥作物を植えた。緑肥とは、肥料になる作物をいう。緑肥を育てて土を鍛えつつ、雨や寒さ、病気から土を守るんだ。

 何も育てないで土を守るのは、大昔の話なんだって。

「ビールがうまくなるな」

「もう、センディはお酒のことばっかり」

 三人とワラビで談笑をした。

「そうだ、ツヨシ。もうひとつプレゼントがあるぜ」

 ボロ小屋の倉庫から、センディさんが何かを引っ張ってくる。これは……。

「原付だ!」

 センディさんはなんと、単車をプレゼントしてくれた。八〇年代産の骨董品レベルである。

「遠出したいって、言っていたしな。オレたちは車がある。ツヨシを乗せてもよかったが、乗せる度に遠慮していたし。それに、二人で活動できるものがいいかなってさ」

「ありがとうございます。何から何まで」

「ワラビと、走ってこいよ。あとはやっておくから」

「はい。オイルを入れに行ってきます」

 ガソリンは、多少残っていた。近くのガソスタまで、走ってこようかな。

 ワラビを頭に乗せて、ボクは原付のエンジンを掛けた。指定のヘルメットじゃないと、怒られるかな。一応、買っておこう。

「風が気持ちいいね。ワラビ」

「はい。マスターツヨシ。どこまでも行けそうです」

 次は、行ったこともない遠くのダンジョンまで行ってみよう。

 電車でのダンジョン巡りとは、もうおさらばだね。
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