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第二章 底辺配信者、畑を手に入れる

第9話 畑近くのダンジョン

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 コルタナさんから、薬草の採れるダンジョンの位置を教わった。レベルの高い薬草を採取できるが、モンスターも強いという。ウチの畑からも近い。

 一度入ったダンジョンに再度入ってみたけど、もう手応えがなくなっていた。それくらい、ボクも強くなっているんだ。

 新天地へ向かうのも、いいかも。

 その前に、ビルドの見直した。

「探索系を増やすか、戦闘時間の持続を長くするか」

 どっちにも気を使うと、中途半端になってしまう。
 今は、探索がしたい。まだ、ボクのレベルでもそれなりに戦えている。職業がテイマーなので、ボク自身のスキルを上げたところでたかが知れていた。ならば戦闘の技能は、ワラビに振ってあげたい。

「戦闘スキルを本格的に上げるのは、ダンジョンに慣れてからにしたいな」

「それでいいと思うぜ。今必要なのは、金策だろう」

「ですよね」

 ボクは、探索系のスキルを上げていった。残ったポイントは、防御系に振る。

 武器はオーソドックスに、ショートソードと盾にした。前回使った棍棒は、ショートソードの材料にしている。草木が生えている中を進むので、刃物がほしい。

「道が複雑だから、今日はワタシが運転するわ。ツヨシくん、ついてきて」

 原付でセンディさんたちの乗る車についていき、ダンジョンへ向かう。ヘルメットはやはり買った。ワラビは、背負って連れて行くことにしている。

 ダンジョンの名は、【迷いの森】というらしい。昔は神隠しに遭う場所として、恐れられていたそうだ。今では解析が進み、ダンジョンと認定されている。

 森がそのままダンジョンになっているなんて。現代日本でも、まだまだ神秘的な場所は残っているんだな。

 さっそく、薬草を摘む。たしかに、育ちのいい薬草ばかりだ。

「ここのコケは、魔素が豊富で絶品ですね。このダンジョンに、住み着いてしまいたいくらいです」

 ワラビはおいしそうに、木の根っこにへばりついてコケを食べている。

「成長痛って、どうして起きるんですか?」

「寄生レベルアップの防止よ」

 強い冒険者に同行して、何もせずにレベルアップをする初心者が、昔は大勢いたらしい。その行為を、他の冒険者は寄生と呼んで忌み嫌う。
 だが、急激なレベルアップは冒険者にも影響が起きる。身体じゅうに痛みが走り、体内の細胞を急速に促進させるのだ。

「だから、最近は順序よくダンジョンを進むように推奨されているの」

 ボクのやったことは、かなりムチャだったみたい。ほぼソロで、ボスと戦っちゃったもんね。

「ツヨシ、ここは昆虫型が多数生息しているから、気をつけろよ」

「そうよ。こんなふうに!」

 コルタナさんが、杖から氷の矢を放った。ハチの大型モンスターを撃ち落とす。

 センディさんも、背後に忍び寄ってきたクモの糸を、振り向きもしないで切り落とした。遠くで、糸を吐いたクモごと真っ二つになっている。

「ワラビ!」

「はい。マスターツヨシ」

 ボクが指示を出すと、ワラビは周辺の警戒を始めた。

「囲まれています」

「よし。迎え撃とう!」

 背負っていた盾を構えて、攻撃に備える。

「来た!」

 人間より大きなカブトムシが、ボクの真上に降下してきた。
 盾で防いだけど、腰が砕けそうになる。なんて重い攻撃だ。これが昆虫型の重量か?

「まだまだ!」

 ボクは角を持って、カブトムシに背負投げを食らわせた。ボキン、と、カブトムシモンスターの角が折れた。さっきの突進を防いだことで、角にヒビが入っていたらしい。

 だが、こっちの盾もダメになった。
 ボクは盾を捨てて、カブトムシと一騎打ちをする。

 カブトムシ型の魔物が、背後を前足で払った。ワラビが、カブトムシの羽根を溶かしていたのだ。これでヤツは、もう飛べない。

 敵にダメージを与えたワラビが、ボクのもとに戻ってくる。

 折れた角を前足でつかみ、カブトムシが剣豪のような構えを取った。まだやる気か。

 木を背にして、相手の動きを探る。

 カブトムシが、角を振り下ろしてきた。

 グルンと回転して、ボクは攻撃をかわす。

 極太の幹が、カブトムシの角によってへし折れた。メキメキと音を立てて、木が倒れる。

「サポートします」

 ワラビが、ボクの足に取りついた。スノーボードのように、足に平べったくまとわりつく。

 たしかに、ボクだけの力じゃ勝てないかも。

 足さばきと回避運動は、ワラビに任せる。ボクは、攻撃に集中した。

 また、カブトムシが突きのために踏み込んでくる。

 ボクも、前に突進した。剣でカブトムシの角をさばく。カウンターで、カブトムシの心臓部を貫いた。

 カブトムシの目から、光がなくなっていく。

 なんとか、倒したようだ。

 ワラビがいなかったら、あんな攻撃方法なんて思いつかなかった。

「ありがとう、ワラビ。ケガはない?」

 元のサイズに戻ったワラビを、抱きしめる。

「はい。マスターツヨシも、ご無事でなによりです」

 センディさんとコルタナさんも、ボクたちを囲んでいた魔物たちを蹴散らしたみたい。

 とはいえ、ボクの武器は溶けてしまっていた。剣の先が半分、酸でなくなっている。これでは、戦闘を続行できない。

「今日はもう、帰りましょう。十分仕事はできたわ」

「だな。ツヨシ、帰ろう」

 二人も疲弊しているが、戦利品を大量にゲットして大満足の模様だ。

 ボクは、倒したカブトムシの角を持って帰ることにした。
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