底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路

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第五章 底辺配信者 対 魔族三人衆!

第32話 状況報告

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 ダンジョンを出て、ボクたちは一旦ギルドに戻る。

「すいません。息切れがこんなに早く来るなんて」

 ヒヨリさんが、落ち込む。

「いや。とんでもねえよ、お前たちは。めちゃがんばった方なんだぜ? 先に進もうとか言い出さない分、エラいぞ」

 ここまで疲労しているセンディさんは、初めて見た。

 思いの外、消耗が激しい。四層は、敵がひっきりなしに出てくる。行き着くヒマがないくらいだ。

 あそこまで準備したのに、まだ足りないというのか。

「しかも、まだ入り口よ? どんだけ、殺意の密度が濃いのよ?」

 コルタナさんも、さすがに厳しかったらしい。グチが溢れるほどに。

「本来四層以降は、もっと大人数の騎士団とかで挑むのよ。それこそ泊まり込みで」

『しばらく、あの階層に留まって鍛えた方がいい』

 経験者のメイヴィス姫とコンラッドが、アドバイスをくれる。

「そうしましょう。ワラビ、攻略はもうちょっと先になるよ」

「地道に行きましょう」

 ギルドに戻って、ボスの存在を報告をした。

「ただでさえ強い魔族が、三体も確認されるとは」

 ギルド受付の石田さんが、考え込む。

 魔族は、めったに冒険者の前には現れない。魔物を配置し、背後から指示を出す程度だという。それが、様子を見に来ただけとはいえ、自分から顔見世に現れた。

「あなた方を脅威だと、判断した証拠です」

「そこまでか? 敗走に近いぜ」

「だからです。引き際も心得ている。ほとんどの上位冒険者は、四層到達に浮足立って命を落としていますから」

 上位勢で生き残っているのは、自分を保てている人たちだけらしい。

「なんせ視聴者が、爆発的に上がりしますから。今が稼ぎどきだと突っ込んじゃうんですよ。さんざん注意はしていたんですが」

「いわゆる、撮れ高か」

「はい。それだけ四層攻略動画は、バズるので」

 軽めの階層でレベルを上げまくった冒険者ほど、四層で油断するという。

「三層にあったトラップなど、比較になりません。フロア自体がトラップという階層までありますし」

 北海道にある五層建てダンジョンを攻略したところ、四層全てがいわゆるモンスター部屋にすぎなかったそうだ。ボスは五層に存在していた。四層はモンスターのドロップもレアリティが低く、訓練場にすらならない場所だったとか。

「つまり、攻略しなくてもいい階層もあるってわけか?」

「そのとおりです」

「どうして、そんなフロアに?」

「五層のボスが、トラップを仕掛けたのです」

 さっき話にあった冒険者の全滅も、そのダンジョンで起きたことだという。

「冒険者の中には、マップ全部を埋めないと気がすまない人がいます。そんな人達を狙って、思わせぶりな道へと誘導して魔物に襲わせるのです」

 なんて、タチの悪い。


「魔族には、狡猾な奴らが多いんだな」

「はい。平安時代とかの鬼退治などで、人間側もダンジョン攻略に貢献していたといわれていますが」

 最近では、地球人の活躍は見られないという。

 その状況も、リスナー獲得狙いに拍車をかけた。我先に討伐しようと。

「ちゃんと準備していただきたいと、冒険者には再三お伝えしているのです。異世界の現地冒険者でさえ、苦戦するというのに。なんのために、ミスリルなんて用意していると思っているのか。それがあったって、魔族に油断は禁物だからです」

 ウンザリした様子で、石田さんがため息をつく。

 ミスリルをギルド側が最初から装備品に加工しないのも、準備期間中に自らを鍛えてほしいからだそう。

「地球側に、チートなどという便利機能はないんです。なぜ異世界の女神たちが人間にチートを与えているか、よく考えていただきたいんですよ」

 苛立ち気味に、石田さんは話した。

 その点ボクたちは、あまり暴走をしない。撮れ高とか、意識していないからだ。

「まあ、ワラビさんはほぼチートのような強さを誇っています。それでも気を抜けば、犠牲者は出てしまいます」

「心得ています」

「ありがとうございます。ワラビさん。あなたは人間より人間を理解なさっていますね」

「それほどでも」

 石田さんが「トラップダンジョンの話でしたね」と、内容を戻す。

「ダンジョン『プンスカ・スマイル・パーク』の売りは、『異世界の疑似体験』でした」

 異世界の存在を身近に感じてもらい、異世界も生きていること、だが危険も伴うことを知ってもらうことが目的だったとか。

 センディさんからも、同じように聞いたな。

「中でも人気だったのが、トラップダンジョンの存在でした」

 遊園地によくある迷路系アトラクションが、あのパークにも存在するらしい。

「いわゆる、脱出ゲームのような感じですか?」

「いえ。そこまで知力を必要とはしません」

 ゲームによくあるトラップを再現したものだとか。

「そこの案内役が、例の三体です」

 キグルミキャストの案内で、異世界を体験するのだ。

「なんで、そいつらが暴走を? 地球を裏切ったのか?」

 石田さんは、首をふる。

「魔族が、破棄されたキグルミを乗っ取ったのでしょう。魔族は地球にその魔力を維持するため、手頃な肉体を求めていますし」

「自分から、魔物になったってこと?」

「そうですね。魔物でいたほうが、地球では動きやすいので」

 自身の肉体をグレードダウンするほど、地球は魅力的だというのか?

「魔族って、やけに地球にこだわるんですね?」

「転生冒険者にやられ放題で、現地に居場所がないのでしょう。それで一刻も早く、地球へ攻め込みたいのかもしれません」

 その事態から地球を守るのが、ボクたちの役割なわけだ。
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