底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路

文字の大きさ
34 / 71
第五章 底辺配信者 対 魔族三人衆!

第34話 スライムたちの癖《へき》

しおりを挟む
 一旦ダンジョンから出て、石田さんに状況を報告に向かう。
 カギで次のステージに行くのは、まだ準備が足りない。

「ケット・シーはネコの獣人なので、役に立つかなと思ったんですよ。でも、失敗したら危ないと思ったので。一旦ピオンで試してみたら、こうなりました。まあ、ほとんどはピオンのお腹に消えちゃいましたが」

「ごちそうさまー」

 実験として、ピオンに持たせていたのだという。

「一応、ドロップアイテムとして【マタタビスティック】を手に入れていたので、それも効果があったのかもしれません」

 ヒヨリさんはピオンに、マタタビのスティックも持たせていたらしい。

「え? ワラビ、そんなアイテムゲットした?」

「いえ。激レアアイテムです。ワタシは、持っていませんね」

 モンスターには、アイテムドロップ率がある。ケット・シーは、【ネコの爪】という魔法石を落とす。テイムモンスターに食べさせると、魔力がわずかに上昇する。これでも、結構レアアイテムだ。マタタビスティックは、それを上回るレアドロップ率を誇る。

 マタタビを、ヒヨリさんに見せてもらう。たしかに、マタタビの香りだ。

「最初はマタタビでおびき寄せる作戦でした。しかし、ピオンがネコおやつを食べ始めて、おっこちしちゃったんです。それで、ケット・シーが寄ってきて」

「あっさりカギを」

「はい……」

 この香りとおやつにつられて、ケット・シーがピオンにまとわりついたという。

「もうピオンは、戦闘要員にするのはかわいそうすぎて。せっかくなので探索系に極振りしています。幸運度を伸ばしました」

「うんがいいー」

 ピオンが、飛び跳ねた。

「とんだコミック・リリーフだな」

「でも、こういうタイプのモンスターが、最後に私たちに幸運をもたらしてくれるのよ」

「まったくだ」

 そのおかげで、ボクたちはカギをゲットできわけだし。



 受付まで、戻ってきた。
 センディさんが、受付の石田さんにウォード錠を見てもらう。

「見た目こそただのアンティーク錠なのですが、こちらを見てください」

 カギの持ち手を、石田さんが指差す。

「ここに、紋章がありますよね? これは、パークのロゴなんですよ。この三つの紋章をかけ合わせると」

 パズルのように、石田さんがカギを三つ重ねる。

「これで一つのカギになるのです」

 キーの持ち手が重なると、ウサギの顔のシルエットとなった。次の相手は、クビポロリとかいうウサギのキグルミキャラだろう。

「おおーっ」

「このキーは、お預かりします。次のフロアも、お気をつけて」

 貴重品アイテムを石田さんに預けて、ボクたちは一旦帰ることにした。


 
 家に帰りながら、ワラビと初めてであったときを思い返す。



 たしか当時のボクは、ドッグフードやキャットフード、果ては離乳食まで買ってきた。ワラビが何を食べるか、わからないためである。ワラビが普通の食べ物も消化できることを知ったのは、ありがたかったけど。



 ヒヨリさんが、ボクたちにシチューを振る舞う。

「あー、なんだか、生きて返ってきたなって気がするぞ」

 シチューを食べながら、センディさんが缶ビールを開ける。

「ツヨシさんが持て余していた食材は、すべてピオンが食べ尽くしました。実に助かっています。ごめんなさい。食費を払わなくて」

「いやいや。お礼をいうのはこっちだよ」

 事実ボクは、在庫の処理に困っていた。

 畑をお世話してくれているヒヨリさんやピオンに、こちらは頼りっぱなしだから。

「でも、ワラビって意外と好みがあるよね」

 ワラビは、大根を生で食べられる。しかし大根おろしにすると口にしない。具材ゴロゴロのシチューを食べることはあっても、具材が溶け切ったドロドロのカレーが出てくると落ち込む。

「ワタシは、溶かすのが好きなのです。元々溶け切っているものが、あまり好きではないので」

「なるほど!」

 ミスリルなんかの固形物のほうが、ワラビは好みなんだ。そりゃあ、離乳食なんて食べないや。

「じゃあ、桃は? ワラビの大好物だよね?」

「桃に関しては、種が好きなのです」

 ワラビの話を聞いて、ヒヨリさんが「ああ」と手を叩く。

「だからワラビさんの進化系統には、『ポイズン・スライム』があったんですね?」

「どういうこと、ヒヨリさん?」

「桃の種には、アミグダリンやプルナシンという毒があるのです。他にも、梅や杏にも含まれています」

 熟す前の桃の種には、毒があるという。体内に入ると、毒性を放つ。なんと、青酸カリと同じシアン化合物だ。

「といっても、アミグダリンの致死量は、およそ桃一〇〇個分だそうですが」

 じゃあ、安心かな?

「あーでも、ワラビなら一〇〇個じゃきかないかも」

「一日で、それだけ食べたりはしません」

 ワラビが、ふてくされる。

「なんだ。ワラビのそんな態度、初めて見るなぁ」

「ずっとワラビちゃんを見ているけど、どんどん人間っぽくなってくるわね」

 センディさんとコルタナさんが、ボクたちを見て笑う。

 ボクもワラビも、つられて笑った。

 薬局のお嬢様に育てられたピオンは、薬品系はもちろん、ペットフードも嫌がらずに食べる。

「ピオンが苦手なものって、なにかある?」

「そうですね……モンスターは食べませんね」

 ああ、ワラビと逆だ。

 ワラビは、なんでも溶かすことを楽しむ。

 ピオンは、薬品や健康食品も好んで食べる。

 スライムにも、それぞれの個体でいろんなへきや個性があるようだ。

「次は、四層の中心部だ。おそらく、モンスターラッシュになる」

 パークの目玉に、モグラたたきがあったらしい。

 その管理者が、クビポロリの元となったウサギキャラだったそうだ。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...