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第十二章 国王、王女追跡大作戦!?
第38話 娘の様子がおかしい
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「最近、娘の様子がおかしいんだ」
キヤネン国へ公務にやってきたフィオに、オレは相談を持ちかける。
一人娘カロンリーネ・キヤネン第一王女は、二〇代ながら未だに嫁の貰い手がない。
お見合いをしても、袖にする始末。水をぶっかけられて帰っていった貴族も、いたなあ。お気の毒に。
「わたくしは、自分で財を成して、女性の社会進出を促進させるのです。結婚なんてしている場合ではございません」
これが、口癖だ。
自分が社会を変えられると、信じて疑っていない。
しかし、夜な夜などこかへ出かけているようなである。
オトコかも? ついに、お目当ての殿方ができたとか?
で、公務でボッティからこちらにきたフィオリーヌ王女に、相談を持ちかけたわけだ。
「カロンリーネ第一王女様じゃろ、ソロガス義兄様? どうせ冒険者とつるんで、食道楽の旅をしているに違いありませぬ」
「フィオ。お前は女だから、そういう見方をするんだよ」
「女だからこそ、わかることもありまする。恋をする女というのは、どこか気配や匂いがするものでございましょう。ですが本日お会いした感じだと、特別殿方の様子などうかがえませんでしたぞ」
「わかるのか? さすがだな」
「さっきは女だから見誤るとか、申しておりませんでしたかの?」
ジト目で、フィオがオレを見る。
「いやいや。言葉のアヤってもんだ」
「とにかく、お気になさるなら、後をつけるしかございませんのう」
やっぱ、そうなるか。
「妾も、カロンリーネ様がどのような活動をなされているか、気にはなっておりまする。女性の先輩として、見習うところもあるやもしれませぬからな」
フィオがカロンリーネのマネごとをしたら、とんでもないじゃじゃ馬になりそうだが。
「ひとまず公務と称して、カロンリーネ王女様のお仕事ぶりを見学なされませ」
相手の出方や思惑を知らずして、判断をするべきではない。いっそ打って出て、相手を知ることも大事ってことか。
「わかった。見学に行こう。フィオもついてきてくれ。女性の意見も聞きたい」
「義兄様。お妃様も、連れてまいりましょう」
「そうだな」
フィオを含め、オレたちは一家総出で、カロンリーネの仕事を見学させてもらうことにした。
カロンリーネの業務は、女性の労働環境を見て回ることだ。
休憩は取れているか、主婦が労働する際に育児は夫婦で分担されているか、などである。
「わたくしはなにも、『女性に特別な待遇をせよ』とは言いませんわ。正当な評価をせよと言っているのです」
「はい。心得ています。我が社には、女性の管理職もおります。正しく、評価をした結果です」
「ご意見、ありがとうございますわ」
カロンリーネが、織物職場の社長と話し合う。
決して、押し付けがましい訳ではない、と。
昼食は、女性数名で切り盛りする鉄板料理屋へ。
ホテルで見るような、ステーキハウスではない。場末の、鉄板焼屋である。
カウンターに、オレたち一家が一列に並ぶ。
「義兄様、なんじゃ、この料理は。シャレにならぬほど、うまし」
「これは、【お好み焼き】だ。メシに合うんだよ」
王妃たちは未知の料理に困惑する中、オレはただ一人、コテで切り分けてみんなにシェアをしていく。使用人を使わず、自分で。
「これは、うまいな。焼き加減が、最高だ。生地とキャベツの分量がちょうどいい」
身近に、こんな最高のメシが食える店があるとはね。いつも深夜に【冒険の書】を使うから、こういった店には入れないんだよなあ。
王妃と息子夫婦は、みんなで一枚のお好み焼きをシェアして、メインは肉料理だけ。やっぱり、未知の料理には慣れないか。
カロンリーネは、小さいお好み焼きを食らう。
デカいサイズを一枚丸ごと食っているのは、オレとフィオくらいだ。
「あなた、随分と下々のお食事に慣れている感じですが?」
「んあ?」
お好み焼きをオカズにドンブリメシをかき込んでいると、王妃からツッコまれた。
「メシってのは、こうやって食うものさ。なあ?」
「そうですじゃ。姉様」
フィオが、同じようにドンブリを傾けている。メシ粒がホッペについているのも構わず。
「孫までマネをするので、やめてください」
息子夫婦の方を見ると、孫娘がオレたちのマネをしてメシをガツガツと食っていた。
「よく噛んで食べなさいよ」
「はーい」
オレが伝えると、孫娘は行儀よく食い始める。お好み焼きも、直接コテで鉄板から食ってやがった。教えていないのに。息子よりよっぽど、教え甲斐があるなあ。
「この店は、何年ほど続いていますの?」
「かれこれー、四〇年くらいかねー?」
オバちゃん同士でゲラゲラと笑い合いながら、店員たちはカロンリーネからの質問に答える。
「後継ぎなどは? みなさん、結構なお歳ですわよね?」
「そんときゃ、そんときよ。あたしだって、ババアが歳になって、自然と後を継いだものさー。若い頃は、ババアとケンカケンカの毎日だったのにさ」
「そういうものですのね」
「孫も手伝いに来てくれるからさー。別に困ってねーんだわー」
「男性の働き手などは?」
「いらないよー。息が合わんのよ。旦那は畑をやってくれたらえーがね」
また、ガハハーとオバちゃんたちが笑い出す。
「ありがとうございます。ごちそうさまでしたわ」
「またどうぞー」
全員で、お好み焼き屋を後にした。
うますぎて、フィオと焼きそばまでもらってしまったぜ。
カロンリーネ王女は特に、変わった様子はないな。普通だ。
「のう、言ったとおりぞよ。カロリーネ様に限って、殿方とどうなるとかはないものじゃ」
「いざとなったら、【冒険の書】を使う」
キヤネン国へ公務にやってきたフィオに、オレは相談を持ちかける。
一人娘カロンリーネ・キヤネン第一王女は、二〇代ながら未だに嫁の貰い手がない。
お見合いをしても、袖にする始末。水をぶっかけられて帰っていった貴族も、いたなあ。お気の毒に。
「わたくしは、自分で財を成して、女性の社会進出を促進させるのです。結婚なんてしている場合ではございません」
これが、口癖だ。
自分が社会を変えられると、信じて疑っていない。
しかし、夜な夜などこかへ出かけているようなである。
オトコかも? ついに、お目当ての殿方ができたとか?
で、公務でボッティからこちらにきたフィオリーヌ王女に、相談を持ちかけたわけだ。
「カロンリーネ第一王女様じゃろ、ソロガス義兄様? どうせ冒険者とつるんで、食道楽の旅をしているに違いありませぬ」
「フィオ。お前は女だから、そういう見方をするんだよ」
「女だからこそ、わかることもありまする。恋をする女というのは、どこか気配や匂いがするものでございましょう。ですが本日お会いした感じだと、特別殿方の様子などうかがえませんでしたぞ」
「わかるのか? さすがだな」
「さっきは女だから見誤るとか、申しておりませんでしたかの?」
ジト目で、フィオがオレを見る。
「いやいや。言葉のアヤってもんだ」
「とにかく、お気になさるなら、後をつけるしかございませんのう」
やっぱ、そうなるか。
「妾も、カロンリーネ様がどのような活動をなされているか、気にはなっておりまする。女性の先輩として、見習うところもあるやもしれませぬからな」
フィオがカロンリーネのマネごとをしたら、とんでもないじゃじゃ馬になりそうだが。
「ひとまず公務と称して、カロンリーネ王女様のお仕事ぶりを見学なされませ」
相手の出方や思惑を知らずして、判断をするべきではない。いっそ打って出て、相手を知ることも大事ってことか。
「わかった。見学に行こう。フィオもついてきてくれ。女性の意見も聞きたい」
「義兄様。お妃様も、連れてまいりましょう」
「そうだな」
フィオを含め、オレたちは一家総出で、カロンリーネの仕事を見学させてもらうことにした。
カロンリーネの業務は、女性の労働環境を見て回ることだ。
休憩は取れているか、主婦が労働する際に育児は夫婦で分担されているか、などである。
「わたくしはなにも、『女性に特別な待遇をせよ』とは言いませんわ。正当な評価をせよと言っているのです」
「はい。心得ています。我が社には、女性の管理職もおります。正しく、評価をした結果です」
「ご意見、ありがとうございますわ」
カロンリーネが、織物職場の社長と話し合う。
決して、押し付けがましい訳ではない、と。
昼食は、女性数名で切り盛りする鉄板料理屋へ。
ホテルで見るような、ステーキハウスではない。場末の、鉄板焼屋である。
カウンターに、オレたち一家が一列に並ぶ。
「義兄様、なんじゃ、この料理は。シャレにならぬほど、うまし」
「これは、【お好み焼き】だ。メシに合うんだよ」
王妃たちは未知の料理に困惑する中、オレはただ一人、コテで切り分けてみんなにシェアをしていく。使用人を使わず、自分で。
「これは、うまいな。焼き加減が、最高だ。生地とキャベツの分量がちょうどいい」
身近に、こんな最高のメシが食える店があるとはね。いつも深夜に【冒険の書】を使うから、こういった店には入れないんだよなあ。
王妃と息子夫婦は、みんなで一枚のお好み焼きをシェアして、メインは肉料理だけ。やっぱり、未知の料理には慣れないか。
カロンリーネは、小さいお好み焼きを食らう。
デカいサイズを一枚丸ごと食っているのは、オレとフィオくらいだ。
「あなた、随分と下々のお食事に慣れている感じですが?」
「んあ?」
お好み焼きをオカズにドンブリメシをかき込んでいると、王妃からツッコまれた。
「メシってのは、こうやって食うものさ。なあ?」
「そうですじゃ。姉様」
フィオが、同じようにドンブリを傾けている。メシ粒がホッペについているのも構わず。
「孫までマネをするので、やめてください」
息子夫婦の方を見ると、孫娘がオレたちのマネをしてメシをガツガツと食っていた。
「よく噛んで食べなさいよ」
「はーい」
オレが伝えると、孫娘は行儀よく食い始める。お好み焼きも、直接コテで鉄板から食ってやがった。教えていないのに。息子よりよっぽど、教え甲斐があるなあ。
「この店は、何年ほど続いていますの?」
「かれこれー、四〇年くらいかねー?」
オバちゃん同士でゲラゲラと笑い合いながら、店員たちはカロンリーネからの質問に答える。
「後継ぎなどは? みなさん、結構なお歳ですわよね?」
「そんときゃ、そんときよ。あたしだって、ババアが歳になって、自然と後を継いだものさー。若い頃は、ババアとケンカケンカの毎日だったのにさ」
「そういうものですのね」
「孫も手伝いに来てくれるからさー。別に困ってねーんだわー」
「男性の働き手などは?」
「いらないよー。息が合わんのよ。旦那は畑をやってくれたらえーがね」
また、ガハハーとオバちゃんたちが笑い出す。
「ありがとうございます。ごちそうさまでしたわ」
「またどうぞー」
全員で、お好み焼き屋を後にした。
うますぎて、フィオと焼きそばまでもらってしまったぜ。
カロンリーネ王女は特に、変わった様子はないな。普通だ。
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