おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~

椎名 富比路

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第十二章 国王、王女追跡大作戦!?

第39話 冒険の書、用途外使用!?

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 昼以降は、美術展の展示物を見学する。女性作家たちによる、個展だそうで。
 珍しいというので、客足も相当なものだ。

 コップ一つとっても、芸術的でありつつ機能美を持つ。主婦が扱うからか?

「見事な色彩ですね。それでいて、家に飾っても景観を損ねない。このカップがあるだけで、場が華やかになりますわ」

「ありがとうございます。食器は使われて初めて存在意義を持ちます。飾っているだけでは、さみしいかなと」

「わかりますわ。このカップを持つ手の暖かさまで、伝わってきますもの」

 カロンリーネが、作家たちと語り合う。

「ソロガス様、ちょっと」

「なんだよ? 飽きたのか?」

「そうではない。ちょっと!」

 フィオが、オレの袖を引っ張って、会場の隅まで連れて行く。
 
 オレが【冒険の書】を使って娘を追跡すると聞いたからか、フィオは青い顔になっていた。
 
「ソロガス義兄あに様、それは用途外使用なのでは?」

「侵略行為ではないから、大丈夫のはずだ」

 聞けば我が娘カロンリーネは、明日の朝アルマーへ向けて発つという。
 商業ギルドの女性責任者と、会うつもりなのだ。

「温泉に入れて、ちょうどいいではないか」

「よいが! それでは、遊びに行っているようなものではないのか? ちゃんと追跡できるのかえ?」

「できるとも。オレだってその辺りは、ちゃんとわきまえてるんだぜ?」

「ホントですかの?」

 夕飯は、ホテルでの食事に。

 女性シェフが、腕を振るう。

 優しい味だな。かといって、物足りなさなんてない。

 オレがフィオをヒソヒソ話していると……。

「あなた、フィオリーヌとなにをコソコソ話し合っているのです?」

「なんでもない。食いたいものがないか、聞いているだけだ」

「妻のわたくしがいながら、親戚と睦言をしているのかと思いましたよ?」

「とんでもないさ! フィオリーヌは、女王陛下になられたのだ。先輩国王のオレに、聞きたいことや相談事が山ほどあるんだ」

「それにかこつけて、逢瀬を重ねるなんてことはございませんわよね?」

「ございませんとも」

 デートなんぞ、恐れ多い。とてもじゃないが、オレとフィオの一連の旅は、およそ貴族や王族がするデートとは程遠い。まさに悪事。ヤンチャなガキの遊びだぜ。

「あなたを参考になさったら、暴君になるとはいいませんが、頼りない国王になりそうですわ」

「ある程度気の抜けた王のほうが、国民の気も引き締まるってもんさ」

 できの悪いトップを持つと、自分たちがなんとかしなければならないと、国民たちの士気がむしろ高まるのである。
 世間様ってのは、そういうもんだろうが。

「なら、よろしいのですが」

 王妃が気にすることなんて、なにもねえよ。
 間違いなんて、起きるはずもなく。



 翌朝、カロンリーネが外出することになった。馬車ではなく、【天使の羽根】という転送アイテムで。一人用で、一週間に一度しか使えない。だが一瞬にして目的地まで到着できるという、超レアアイテムだ。

「レアアイテムが必要なほど、急ぎの用事なのか?」
 
「早めに到着して、お湯に浸かりたくて」

「ああ、アルマーなら仕方がない」

「お父様は、入ったことがございますの?」
 
「騎士時代に何度か、な。アルマーの湯は、一瞬で疲れが取れる。オススメだ」

「ですわよね。では、行ってまいります」

 カロンリーネが、羽根を頭上へ放り投げた。
 

 さて、オレも近々向かうか。

「フィオ。一応、手筈通り」

 オレは、帰宅したフィオに連絡を取る。冒険の書に備わっている、遠隔通話機能だ。
 
『うむ、義兄様。くれぐれも、悟られぬよう』

「わかってる。ついてきてくれ」

『心得た。おそらくカロリーネ様の目的は、アルマーだけではなかろう』

 なんだか、ソワソワしていたからな。

「冒険の書で、転送するぞ」
 
『うむ』

 昨日一日中歩いたので、今日は午後まで公務がない。

 朝のうちに、娘の動向を探ることとしよう。



 アルマーに到着した。

 オレもフィオも、冒険者ルックである。

「ン?」

 冒険者ギルドや商業ギルドを見て回ったが、娘はアルマーにいなかった。

 どういうことだ? カロンリーネは確かに、アルマーへ向かうと言っていたのに。

 一杯食わされたか?

「失礼」

 オレは、たまたま通りかかった商業ギルドのマスターに声をかけた。

「二〇代くらいの若い女が、あんたに会いに来ていないか?」

「さあ。今、ギルドを開けたばかりですので。女性のお客様は、お見えになっていませんね」

 なんとまあ。

「どうするのじゃ、義兄様?」

「探す手段はある」
 
 かくなる上は、アイツに頼もう。

 オレは、アルマーに作った小屋まで向かった。

「なんじゃ、ここは?」

「オレの隠れ家だよ」

「そんなものまで、作っておったとは」

 自由を謳歌するには、ここまでやらんとな。
 

「おやおや。久しいな、ソロガスご主人」

 久しぶりに会ったグラシャ=ラボラスのマーヴェリックは、元気にやっていた。ワッシワッシと、メザシを頬張っている。
 
「なんじゃ、この犬は!? 小さくて、かわいいのじゃ!!」

 フィオが、オレが飼っているグラシャ=ラボラスと対面した。
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