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第二章 人妻ダークエルフ忍者と、旅立つ
第15話 剣術のスキル習得
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『ごきゅごきゅ。べはああああー』
【ファミリア】がテーブルの上で、ジョッキのミルクを二杯、飲み干した。リスくらい小さいのに、どこに大量のミルクが入るのか。
旅の酒場にて、ボクたちは夕飯を食べている。
「ファミリアが意思を持つのは、聞いたことがあるわ。けど、あたしのファミリアがそうなっちゃうなんてね」
「でもソーニャさん、仲間が増えていいじゃん」
ボクは鳥の手羽先を、ファミリアに少し分けて上げた。
ファミリアは『うほー』と、料理を楽しんでいる。
「ヒューゴにとっては他人事だから、そう言えるのよ」
ミートボールパスタを、ソーニャさんは不機嫌そうに頬張った。
「とはいえ精霊って、別にゴハンもあげないでいいんでしょ?」
ファミリアなどの精霊は本来、実体を持たない。術師の魔力を微量だけ吸って生きている。ミルクやお菓子だって、精霊からすればただの嗜好品だ。エネルギーを補給するわけじゃない。
「ほしかったらヒューゴ、あんたが飼いなさいよ。元は、あんたが選んだ宝石の影響なんですからねっ」
酔った素振りを見せて、ソーニャさんがボクを指す。ボクらが飲んでいるのはジンジャーエールだから、酔いたくても酔えないんだけど。
「ムリだよ」
ソーニャさんの魔力で、この精霊は生きてるんだから。
『ソーニャ、よろしくなー』
トンボの羽の生えた少女型ファミリアが、酔ったフリをしてソーニャさんにダル絡みしている。
「はいはい。それはそうと、アンタは何ができるのよ?」
ソーニャさんが、自分の肉団子をファミリアに食べさせる。ムダだとわかっているが、楽しげだからあげているだけみたい。
『隠しアイテムとか、隠れている敵を見つけだすぞー。れっつごー』
「そう。頼りにしているわ」
レモン味のジンジャーエールを、ソーニャさんが豪快に煽った。
「まあいいわ。鉱山でこき使ってあげましょ」
『こきつかえー』
精霊が、ソーニャさんの言葉を復唱する。言葉の意味をわかっているのか、いないのか。
話は通じるようだが、必要最低限の会話しかできないみたい。
翌朝、ボクはセーコさんと合流した。
「おはようございます、セーコさん。なにかわかりましたか?」
「特には。でも、情報は聞けたよ。【フルドレン】って種族が絡んでいるらしい」
フルドレン!
「それって、トロル族の?」
「よく知っているね。そうさ」
フルドレンは、人間とトロルとの混血種だ。人間社会に混じって、人に悪さをするのが彼らの目的である。
おそらく、魔王の復活を目論んでいるのでは、とのこと。
オークにさらわせた子どもたちも、「人質ではなく、魔王の贄だったのでは」との話だ。
「私はアンタたちに、フルドレンに関して教えてないよ。誰から聞いた?」
「ドワーフのヘッテピさんから、教わりました」
「あの店主かい? だったら、話が早いね。トロルトゥースに行くんだろ?」
「はい」
これから、ヘッテピさんとも合流予定だ。
「いいタイミングだ。そのフルドレンが、トロルトゥース鉱山にアジトを設けている可能性が出てきた」
単なる鉱山だと思っていた場所が、敵の本拠地になっているかもしれないとは。
「わかりやすいね。あちらは魔法鉱石を確保して、自軍を強化できる。こちらはトロルトゥース山を塞がれたら、外交路を絶たれてジリ貧になってしまう。単純な計算さ」
ふむ。流通を止めるのも、戦争の手段だもんね。
「やみくもに立ち向かっても、返り討ちに合うだろう。ちょいとアンタに、稽古をつけてやる」
ギルドで騒ぎが起きたせいで、ロクに稽古をつけてもらえなかった。
「ものの数時間で、身につくものなんですか?」
「スキルを習得するだけならね。それを磨き上げるのは、自分でやりな」
使い方だけを教えるから、練度は自分で上げろとのこと。
スキルは誰でもなんでも、覚えることだけなら可能だ。魔力の結晶である【スキルポイント】を、覚えたいスキルに割り振ればいい。
覚えようと思えば、スキルの数は千を超える。
ただし、活用するなら自分のファイティングスタイルにあっているかどうかが重要だ。ムダにスキルだけ覚えても、使う必要性がなかったら意味がない。
ボクのレベルで覚えられそうな技は、全部で三つある。
「最初は、【爆炎撃】な。こいつは単純だ」
炎をまとわせた剣で、斬るだけ。
「ここまでは、あんたも普段から戦闘でやってただろ?」
「そうですね。名前があるとは、知りませんでしたけど」
「炎龍撃は、そこから相手の表皮を爆発させるんだよ」
火炎魔法で爆発を起こして、装甲を破壊する。そこへさらに、火炎属性を乗せた剣で切る技だ。つまり、二重の付与魔法が必要になってくる。
「次は、【分身の舞い】だ」
分身の術で、自分の影を戦わせる技だ。魔力を実体化させて、飛ばすのである。
「はあはあ。こっちは難しいですね!」
「こっちの習得は、やめたほうがいいね」
ボクは、スキルポイントをリセットした。
魔法戦士といえど、魔力で実体を作るのは難しい。
別のスキルへ、振り直すことにした。
「最後は、【つばめ返し】な。やり方だけ覚えておきな」
こちらも、多段攻撃だ。一度斬って、返す刀でもう一度すくい上げるように打ち込む。魔法の加護のない、純粋な剣術である。それゆえに、魔法戦士のボクには習得が難しい。覚えることはできるが、ボクに活用できるかなぁ。
「難しいです。切り返しが、思うようにいきませんね」
「爆炎撃も効かない装甲の分厚いやつに、試してみなよ」
「ありがとうございます」
ひとまず、一ポイントだけ振ってみて、様子を見ることにした。
【ファミリア】がテーブルの上で、ジョッキのミルクを二杯、飲み干した。リスくらい小さいのに、どこに大量のミルクが入るのか。
旅の酒場にて、ボクたちは夕飯を食べている。
「ファミリアが意思を持つのは、聞いたことがあるわ。けど、あたしのファミリアがそうなっちゃうなんてね」
「でもソーニャさん、仲間が増えていいじゃん」
ボクは鳥の手羽先を、ファミリアに少し分けて上げた。
ファミリアは『うほー』と、料理を楽しんでいる。
「ヒューゴにとっては他人事だから、そう言えるのよ」
ミートボールパスタを、ソーニャさんは不機嫌そうに頬張った。
「とはいえ精霊って、別にゴハンもあげないでいいんでしょ?」
ファミリアなどの精霊は本来、実体を持たない。術師の魔力を微量だけ吸って生きている。ミルクやお菓子だって、精霊からすればただの嗜好品だ。エネルギーを補給するわけじゃない。
「ほしかったらヒューゴ、あんたが飼いなさいよ。元は、あんたが選んだ宝石の影響なんですからねっ」
酔った素振りを見せて、ソーニャさんがボクを指す。ボクらが飲んでいるのはジンジャーエールだから、酔いたくても酔えないんだけど。
「ムリだよ」
ソーニャさんの魔力で、この精霊は生きてるんだから。
『ソーニャ、よろしくなー』
トンボの羽の生えた少女型ファミリアが、酔ったフリをしてソーニャさんにダル絡みしている。
「はいはい。それはそうと、アンタは何ができるのよ?」
ソーニャさんが、自分の肉団子をファミリアに食べさせる。ムダだとわかっているが、楽しげだからあげているだけみたい。
『隠しアイテムとか、隠れている敵を見つけだすぞー。れっつごー』
「そう。頼りにしているわ」
レモン味のジンジャーエールを、ソーニャさんが豪快に煽った。
「まあいいわ。鉱山でこき使ってあげましょ」
『こきつかえー』
精霊が、ソーニャさんの言葉を復唱する。言葉の意味をわかっているのか、いないのか。
話は通じるようだが、必要最低限の会話しかできないみたい。
翌朝、ボクはセーコさんと合流した。
「おはようございます、セーコさん。なにかわかりましたか?」
「特には。でも、情報は聞けたよ。【フルドレン】って種族が絡んでいるらしい」
フルドレン!
「それって、トロル族の?」
「よく知っているね。そうさ」
フルドレンは、人間とトロルとの混血種だ。人間社会に混じって、人に悪さをするのが彼らの目的である。
おそらく、魔王の復活を目論んでいるのでは、とのこと。
オークにさらわせた子どもたちも、「人質ではなく、魔王の贄だったのでは」との話だ。
「私はアンタたちに、フルドレンに関して教えてないよ。誰から聞いた?」
「ドワーフのヘッテピさんから、教わりました」
「あの店主かい? だったら、話が早いね。トロルトゥースに行くんだろ?」
「はい」
これから、ヘッテピさんとも合流予定だ。
「いいタイミングだ。そのフルドレンが、トロルトゥース鉱山にアジトを設けている可能性が出てきた」
単なる鉱山だと思っていた場所が、敵の本拠地になっているかもしれないとは。
「わかりやすいね。あちらは魔法鉱石を確保して、自軍を強化できる。こちらはトロルトゥース山を塞がれたら、外交路を絶たれてジリ貧になってしまう。単純な計算さ」
ふむ。流通を止めるのも、戦争の手段だもんね。
「やみくもに立ち向かっても、返り討ちに合うだろう。ちょいとアンタに、稽古をつけてやる」
ギルドで騒ぎが起きたせいで、ロクに稽古をつけてもらえなかった。
「ものの数時間で、身につくものなんですか?」
「スキルを習得するだけならね。それを磨き上げるのは、自分でやりな」
使い方だけを教えるから、練度は自分で上げろとのこと。
スキルは誰でもなんでも、覚えることだけなら可能だ。魔力の結晶である【スキルポイント】を、覚えたいスキルに割り振ればいい。
覚えようと思えば、スキルの数は千を超える。
ただし、活用するなら自分のファイティングスタイルにあっているかどうかが重要だ。ムダにスキルだけ覚えても、使う必要性がなかったら意味がない。
ボクのレベルで覚えられそうな技は、全部で三つある。
「最初は、【爆炎撃】な。こいつは単純だ」
炎をまとわせた剣で、斬るだけ。
「ここまでは、あんたも普段から戦闘でやってただろ?」
「そうですね。名前があるとは、知りませんでしたけど」
「炎龍撃は、そこから相手の表皮を爆発させるんだよ」
火炎魔法で爆発を起こして、装甲を破壊する。そこへさらに、火炎属性を乗せた剣で切る技だ。つまり、二重の付与魔法が必要になってくる。
「次は、【分身の舞い】だ」
分身の術で、自分の影を戦わせる技だ。魔力を実体化させて、飛ばすのである。
「はあはあ。こっちは難しいですね!」
「こっちの習得は、やめたほうがいいね」
ボクは、スキルポイントをリセットした。
魔法戦士といえど、魔力で実体を作るのは難しい。
別のスキルへ、振り直すことにした。
「最後は、【つばめ返し】な。やり方だけ覚えておきな」
こちらも、多段攻撃だ。一度斬って、返す刀でもう一度すくい上げるように打ち込む。魔法の加護のない、純粋な剣術である。それゆえに、魔法戦士のボクには習得が難しい。覚えることはできるが、ボクに活用できるかなぁ。
「難しいです。切り返しが、思うようにいきませんね」
「爆炎撃も効かない装甲の分厚いやつに、試してみなよ」
「ありがとうございます」
ひとまず、一ポイントだけ振ってみて、様子を見ることにした。
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