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第一章 ウザい後輩に弱みを握られ、交際を迫られた。
ウザ後輩と、呼び名 2
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「出たいのは、確かなんだな」
「はい。でも、あたしは育ててもらった恩があるので、自立して返したいとは思ってるッス」
「俺と付き合っているヒマなんてないんじゃ?」
「先輩とのお付き合いも、それに含まれてるッス。自力でカレシを作ったッスって自慢するッス」
半分脅しだったけどな!
「それなんだけどさぁ。お前、何がしたんいだ? 俺なんかと付き合ってさ」
ただでさえ、俺は注目されてしまっている。
斉藤クルミを助けたヒーローとして。
悪目立ちと言ったほうがいいかもしれない。
誰も、俺とクルミとの仲を詮索しようとしなかった。
誠太郎も、気を使っていたように思う。
「いやあ、自分でもこんな気持ち初めてでして」
頭をかきながら、クルミは苦笑いを浮かべる。
「何かを企んでいると言うワケでは、ないんだな?」
もし脅迫だったら、俺に思い当たる節はない。
どこかで恨みでも買ったか?
「ホントに、理由なんてないんッスよ。気がついたら、先輩が気になる人になっていて」
「姉さんに対するあこがれとか?」
こっそり青春を謳歌しているもんな、あの二人は。
「うーん、それはあるかも」
以前、「風呂に入れ」と姉を呼びに行ったら、アンズ先輩はベッドでゴロゴロしながらニヤけていたという。
なぜか、その光景が鮮明に浮かんできた。
「先輩は、あたしのこと、どう思っていたッスか」
「可愛くて、頭が良さそうな子だな、と」
「ふむふむ。他には?」
「まさか、こんなにウザ絡みしてくるやつだとは思ってなかったな!」
意趣返しとして、正直な感想を述べる。
「カノジョにしたいとか、意識してなかったッスか?」
目をキラキラさせながら、クルミは尋ねてきた。
「まったく」
「タイプじゃなかったんスか?」
ガーン、という擬音がなりそうな顔で、クルミは悲しげにしょげる。
「そうじゃなくて。俺みたいなやつなんて眼中にない、って思っていたんだよ」
クルミのようなタイプは、お見合いや紹介などで、将来の相手を決めるものだと思っていた。意中の人と恋に落ちるイメージが沸かない。
「意外ッスか? あたしが先輩のことスキだなんて」
「考えが及ばない」
最も理想から遠いタイプだと思っていた。
ガリ勉とヤンキーが付き合うというドラマは、漫画などによくあるが。
そんなのはフィクションだけだと思っている。
「聞くっすけど、今は、あたしのこと、スキッスか」
あまりに真剣に視線を向けてくるので、照れてしまう。
「ま、まあな。悪いやつじゃないからな」
頭をかきながら、事実を伝えた。
「ありがとうッス」
尋ねてきた本人が照れてどうするんだと。
「でも、窮屈だろうな。隠れて交際って」
「実際、しんどそうです。スマホで連絡を取り合ってるんスけど、メイドさんが来るとサッと隠さないといけないんで」
メイドがいるのか。
斉藤家に入ったことないから、知らないんだよな。
緊急会議はいつも、誠太郎の家だし。
ネコ飼ってるから、ずっとお泊まりしたい。
「どうしたんです? 顔がデレッとしてますよ」
「なんでもない」
「もしかして、先輩もあたしとメッセしたいですか?」
「はあ?」
心臓が跳ね上がるのを悟られまいと、ややキツめに返してしまう。
「せっかくスマホの番号教えたのに、連絡がないッスから」
「用事がない」
アドレスをもらっても、特に話すことがなかった。
なので、絶賛放置中という有様だ。
「メッセって。お前の話を聞いていると難易度高そう」
「それは姉さんの場合でしょ? あたしは抜かりないッス」
胸に手を当てて、クルミはドヤ顔をする。
「いかがです。今からスマホをフリフリして、メッセの連絡先欲しくないッスか?」
実際にスマホを手で揺らしながら、クルミが聞いてきた。
「お前に、リスクがないなら」
「……はーあ」
何が不満なのか、クルミがため息をつく。
「ここまで来て、人の心配って。優しいのはいいッスけど、警戒しすぎに見られるッス」
頬を膨らませて、クルミは不満を口にした。
困難が分割されるどころか、雪だるま式に積み上がっている気がする!
「そこまで言うなら、交換しようぜ」
アプリは、妹に無理矢理入れられた。方法も教わっている。
「えっと、設定は」
俺がもたついていると、クルミが俺の手からスマホを取り上げ、設定を始めた。
「大杉先輩とフリフリしなかったんスか?」
「相手から一方的に送られたんだよ」
教えてくれる友達もおらず、今に至る。
「できたッス」
クルミが俺にスマホを返す。
「ありがとな。じゃあ、いくぞ」
お互いのスマホをフリフリした。
「おおっ。先輩のが、入ってきます」
「紛らわしい表現するな」
「あたしのスマホの中、あったかいッスか?」
「やかましい!」
ニヤニヤするクルミをたしなめていると、連絡先交換は終わった。
メッセのアドレスを教え合うだけで、どうしてこんなに怒っているんだろう。無駄にカロリーを消耗した気がする。
「はあ。男の人のアドレス、初めて聞いちゃいました。先輩はあたしの初めてを奪っていきます」
「また人聞きの悪いことを」
「でも、先輩はお姉ちゃんとアクセスしてるんでしょ?」
「してねえよ。誠太郎とは頻繁に連絡しているらしいけど」
アンズは連絡するとしても、定例会議の連絡だけだ。
それもグループ共通メッセージのみである。
俺個人にメールを送るなど、ありえない。
「その分、あたしがバンバンメッセ送りますね」
「勉強しろ」
「はーい。それじゃあ」
本当にメッセのアドレスを交換しただけで、クルミは帰って行く。
まあ、いいか。あまり長居して交際がバレるのも問題だし。
今日は、俺が料理当番だ。
夕飯の材料を買って帰ろう。
「はい。でも、あたしは育ててもらった恩があるので、自立して返したいとは思ってるッス」
「俺と付き合っているヒマなんてないんじゃ?」
「先輩とのお付き合いも、それに含まれてるッス。自力でカレシを作ったッスって自慢するッス」
半分脅しだったけどな!
「それなんだけどさぁ。お前、何がしたんいだ? 俺なんかと付き合ってさ」
ただでさえ、俺は注目されてしまっている。
斉藤クルミを助けたヒーローとして。
悪目立ちと言ったほうがいいかもしれない。
誰も、俺とクルミとの仲を詮索しようとしなかった。
誠太郎も、気を使っていたように思う。
「いやあ、自分でもこんな気持ち初めてでして」
頭をかきながら、クルミは苦笑いを浮かべる。
「何かを企んでいると言うワケでは、ないんだな?」
もし脅迫だったら、俺に思い当たる節はない。
どこかで恨みでも買ったか?
「ホントに、理由なんてないんッスよ。気がついたら、先輩が気になる人になっていて」
「姉さんに対するあこがれとか?」
こっそり青春を謳歌しているもんな、あの二人は。
「うーん、それはあるかも」
以前、「風呂に入れ」と姉を呼びに行ったら、アンズ先輩はベッドでゴロゴロしながらニヤけていたという。
なぜか、その光景が鮮明に浮かんできた。
「先輩は、あたしのこと、どう思っていたッスか」
「可愛くて、頭が良さそうな子だな、と」
「ふむふむ。他には?」
「まさか、こんなにウザ絡みしてくるやつだとは思ってなかったな!」
意趣返しとして、正直な感想を述べる。
「カノジョにしたいとか、意識してなかったッスか?」
目をキラキラさせながら、クルミは尋ねてきた。
「まったく」
「タイプじゃなかったんスか?」
ガーン、という擬音がなりそうな顔で、クルミは悲しげにしょげる。
「そうじゃなくて。俺みたいなやつなんて眼中にない、って思っていたんだよ」
クルミのようなタイプは、お見合いや紹介などで、将来の相手を決めるものだと思っていた。意中の人と恋に落ちるイメージが沸かない。
「意外ッスか? あたしが先輩のことスキだなんて」
「考えが及ばない」
最も理想から遠いタイプだと思っていた。
ガリ勉とヤンキーが付き合うというドラマは、漫画などによくあるが。
そんなのはフィクションだけだと思っている。
「聞くっすけど、今は、あたしのこと、スキッスか」
あまりに真剣に視線を向けてくるので、照れてしまう。
「ま、まあな。悪いやつじゃないからな」
頭をかきながら、事実を伝えた。
「ありがとうッス」
尋ねてきた本人が照れてどうするんだと。
「でも、窮屈だろうな。隠れて交際って」
「実際、しんどそうです。スマホで連絡を取り合ってるんスけど、メイドさんが来るとサッと隠さないといけないんで」
メイドがいるのか。
斉藤家に入ったことないから、知らないんだよな。
緊急会議はいつも、誠太郎の家だし。
ネコ飼ってるから、ずっとお泊まりしたい。
「どうしたんです? 顔がデレッとしてますよ」
「なんでもない」
「もしかして、先輩もあたしとメッセしたいですか?」
「はあ?」
心臓が跳ね上がるのを悟られまいと、ややキツめに返してしまう。
「せっかくスマホの番号教えたのに、連絡がないッスから」
「用事がない」
アドレスをもらっても、特に話すことがなかった。
なので、絶賛放置中という有様だ。
「メッセって。お前の話を聞いていると難易度高そう」
「それは姉さんの場合でしょ? あたしは抜かりないッス」
胸に手を当てて、クルミはドヤ顔をする。
「いかがです。今からスマホをフリフリして、メッセの連絡先欲しくないッスか?」
実際にスマホを手で揺らしながら、クルミが聞いてきた。
「お前に、リスクがないなら」
「……はーあ」
何が不満なのか、クルミがため息をつく。
「ここまで来て、人の心配って。優しいのはいいッスけど、警戒しすぎに見られるッス」
頬を膨らませて、クルミは不満を口にした。
困難が分割されるどころか、雪だるま式に積み上がっている気がする!
「そこまで言うなら、交換しようぜ」
アプリは、妹に無理矢理入れられた。方法も教わっている。
「えっと、設定は」
俺がもたついていると、クルミが俺の手からスマホを取り上げ、設定を始めた。
「大杉先輩とフリフリしなかったんスか?」
「相手から一方的に送られたんだよ」
教えてくれる友達もおらず、今に至る。
「できたッス」
クルミが俺にスマホを返す。
「ありがとな。じゃあ、いくぞ」
お互いのスマホをフリフリした。
「おおっ。先輩のが、入ってきます」
「紛らわしい表現するな」
「あたしのスマホの中、あったかいッスか?」
「やかましい!」
ニヤニヤするクルミをたしなめていると、連絡先交換は終わった。
メッセのアドレスを教え合うだけで、どうしてこんなに怒っているんだろう。無駄にカロリーを消耗した気がする。
「はあ。男の人のアドレス、初めて聞いちゃいました。先輩はあたしの初めてを奪っていきます」
「また人聞きの悪いことを」
「でも、先輩はお姉ちゃんとアクセスしてるんでしょ?」
「してねえよ。誠太郎とは頻繁に連絡しているらしいけど」
アンズは連絡するとしても、定例会議の連絡だけだ。
それもグループ共通メッセージのみである。
俺個人にメールを送るなど、ありえない。
「その分、あたしがバンバンメッセ送りますね」
「勉強しろ」
「はーい。それじゃあ」
本当にメッセのアドレスを交換しただけで、クルミは帰って行く。
まあ、いいか。あまり長居して交際がバレるのも問題だし。
今日は、俺が料理当番だ。
夕飯の材料を買って帰ろう。
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