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第一章 ウザい後輩に弱みを握られ、交際を迫られた。
ウザ後輩と、ラーメン
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フードコートは、買い物客で賑わっていた。
お目当てのラーメン屋へ。
「本当に、この安いラーメンでいいのか?」
少し行った先に、行列のできるラーメン屋がある。グルメサイトでも最高得点を叩き出すほどだ。味は保証できるに違いない。
が、クルミはフードコートのラーメンがいいという。
しかも、ここはチェーン店だ。どこでも食える。俺たちの地元でも。
「安いラーメンがいいんッスよ。アイスも付くし」
アイスとセットでも五〇〇円と、超お値打ちである。
「腹とか痛くならないか?」
熱いと冷たいでは、食い合わせに難があると思うのだが?
チチチと、クルミは指を左右に振る。偉そうに。
「何を言ってるんスかー? 向かいのハンバーガーなんて、熱々のポテトに冷たいシェイクが付いてるんスよ。どうってことないッス」
的確な指摘だ。
隣のドーナツ屋も、飲茶とシューアイスを売ってる。
どこも似たようなもんだな。
「ミニラーメンと、炊き込みごはん、カップアイスのセットください」
元気よく、クルミがオーダーした。
「アイスのソースはいかがいたしましょうか?」
「えーっと、イチゴで」
俺も同じセットを頼み、席につく。
幸いなことに、まだフードコートは空いている。気が早いのか混雑を避けたのか、先に食べている家族連れがチラホラいる程度だ。
「おっ、来たぜ」
料理ができたと、呼び出しベルが鳴る。さすがチェーン店だ。早い。
「いただきまーす! うーん、おいしいッス! たまに食べたくなるんスよ、こういうの!」
ズルズルと、クルミは下品にラーメンをすする。
これでデートとのたまうのだから、コイツの腹の内が分からない。
「俺もいただきます」
麺とスープを、同時にいただく。
「うん、たしかにうまい」
「本格的な味とは違うんでしょうけど、優しい味ッス」
ガチのラーメン屋だと、味の暴力で殴られた感じがする。
その点、チェーン店のラーメンは約束された安定性を持つ。求めている味に包まれるイメージだ。
たまには、安いラーメンを食うのもいいものだな。
「こういったラーメン食べたの、久しぶりかもッス」
炊き込みごはんにも、クルミは箸をつける。
「うーんっ、炊き込みごはんもサイコーッスね。ラーメンのスープが、汁物としての顔を覗かせるッス」
クルミは、ごはんを口に入れては、レンゲでスープを飲む。
「普段、どういうの食ってるの?」
「外で食べるときは贅沢するッスね。回らないお寿司とか、柔らかいお肉とか。あたしはステーキなら硬いのが好きッス」
柔らかい肉を好むのは、日本人だけだそう。
「お前の普段の生活なんて、想像もつかん」
「お金持ちって言っても、みんなとそんなに変わらないッスけどね」
服にも食べるものにも、あまり金をかけないらしい。
「コンビニのおにぎりとか食うのか?」
「食うッスよ。おうちで防災訓練をするときとか。さすがに贅沢を言ってられないッス」
「おうちで防災訓練すること自体が、普通じゃねえよ。自治体が『やりましょう』っつっても、そんなに集まらねえんだぞ」
家族の防災意識が高いのは、いいことだが。
「おにぎりの具は、何が好きなんだ?」
「昆布ッス」
「おばあちゃんの舌だな」
てっきり、ツナマヨがくると思ったが。
「でもでも、塩だけってのも、他の料理に合うので好きッスね。最近の非常食って、おいしいッスからおかずになるッス」
「うん、おばあちゃんだ」
クルミが、ジト目になる。
「それはディスってるッスか?」
「ほめてんだよ。コンビニ飯に偏見がないのはいいからな」
近頃のコンビニフードは、神経質なほど健康面に配慮している。
「とはいっても、贅沢なものは食べてるだろ?」
「どうでしょうねえ」と、クルミは首を傾げた。
「少なくとも、あたしのところは普通ッス。ただ、この手のジャンク系は食べたくても食べさせてもらえません。栄養が偏るからって」
金銭感覚はまともな分、過剰に口うるさいらしい。
「あたしだってねー、たまには体に悪いものを食べたいときだってあるんスよ! インスタントラーメンとか、カップラーメンとか!」
なんか、アンズ会長と同じようなことを言い出したぞ。
あいつも二言目には「ラーメン食べたい!」と叫ぶし。誠太郎が渋々連れて行くのだ。
「ことごとくラーメン限定だな」
「だってラーメン出ないんスもん! おウドンとおソバはいいんスよ! でもラーメンは脂肪分が多いからって! 自分は天そば食ってるのにッスよ! なんで天ぷらはいいんスかって聞いたら、『これは野菜だからノーカン』とかぬかしやがるッス!」
まるで親の仇かのように、クルミはラーメンを豪快にすすった。
確かに矛盾しているな。おにぎりは許されるのに、カップ麺はアウトとか。
「肉もハンバーガーとかダメって言うし」
ツラそうだ。気軽に加工肉を食えない環境ってのは、地味に痛い。
「お腹に余裕があれば、食べたいッス」
「でも、アイスは食うと」
「加工食品がダメって感覚だそうッスよ。基準がおかしいッス」
なるほど、昆布のおにぎりが好きってのも、「それしか食わせてもらってない」可能性がある。
お目当てのラーメン屋へ。
「本当に、この安いラーメンでいいのか?」
少し行った先に、行列のできるラーメン屋がある。グルメサイトでも最高得点を叩き出すほどだ。味は保証できるに違いない。
が、クルミはフードコートのラーメンがいいという。
しかも、ここはチェーン店だ。どこでも食える。俺たちの地元でも。
「安いラーメンがいいんッスよ。アイスも付くし」
アイスとセットでも五〇〇円と、超お値打ちである。
「腹とか痛くならないか?」
熱いと冷たいでは、食い合わせに難があると思うのだが?
チチチと、クルミは指を左右に振る。偉そうに。
「何を言ってるんスかー? 向かいのハンバーガーなんて、熱々のポテトに冷たいシェイクが付いてるんスよ。どうってことないッス」
的確な指摘だ。
隣のドーナツ屋も、飲茶とシューアイスを売ってる。
どこも似たようなもんだな。
「ミニラーメンと、炊き込みごはん、カップアイスのセットください」
元気よく、クルミがオーダーした。
「アイスのソースはいかがいたしましょうか?」
「えーっと、イチゴで」
俺も同じセットを頼み、席につく。
幸いなことに、まだフードコートは空いている。気が早いのか混雑を避けたのか、先に食べている家族連れがチラホラいる程度だ。
「おっ、来たぜ」
料理ができたと、呼び出しベルが鳴る。さすがチェーン店だ。早い。
「いただきまーす! うーん、おいしいッス! たまに食べたくなるんスよ、こういうの!」
ズルズルと、クルミは下品にラーメンをすする。
これでデートとのたまうのだから、コイツの腹の内が分からない。
「俺もいただきます」
麺とスープを、同時にいただく。
「うん、たしかにうまい」
「本格的な味とは違うんでしょうけど、優しい味ッス」
ガチのラーメン屋だと、味の暴力で殴られた感じがする。
その点、チェーン店のラーメンは約束された安定性を持つ。求めている味に包まれるイメージだ。
たまには、安いラーメンを食うのもいいものだな。
「こういったラーメン食べたの、久しぶりかもッス」
炊き込みごはんにも、クルミは箸をつける。
「うーんっ、炊き込みごはんもサイコーッスね。ラーメンのスープが、汁物としての顔を覗かせるッス」
クルミは、ごはんを口に入れては、レンゲでスープを飲む。
「普段、どういうの食ってるの?」
「外で食べるときは贅沢するッスね。回らないお寿司とか、柔らかいお肉とか。あたしはステーキなら硬いのが好きッス」
柔らかい肉を好むのは、日本人だけだそう。
「お前の普段の生活なんて、想像もつかん」
「お金持ちって言っても、みんなとそんなに変わらないッスけどね」
服にも食べるものにも、あまり金をかけないらしい。
「コンビニのおにぎりとか食うのか?」
「食うッスよ。おうちで防災訓練をするときとか。さすがに贅沢を言ってられないッス」
「おうちで防災訓練すること自体が、普通じゃねえよ。自治体が『やりましょう』っつっても、そんなに集まらねえんだぞ」
家族の防災意識が高いのは、いいことだが。
「おにぎりの具は、何が好きなんだ?」
「昆布ッス」
「おばあちゃんの舌だな」
てっきり、ツナマヨがくると思ったが。
「でもでも、塩だけってのも、他の料理に合うので好きッスね。最近の非常食って、おいしいッスからおかずになるッス」
「うん、おばあちゃんだ」
クルミが、ジト目になる。
「それはディスってるッスか?」
「ほめてんだよ。コンビニ飯に偏見がないのはいいからな」
近頃のコンビニフードは、神経質なほど健康面に配慮している。
「とはいっても、贅沢なものは食べてるだろ?」
「どうでしょうねえ」と、クルミは首を傾げた。
「少なくとも、あたしのところは普通ッス。ただ、この手のジャンク系は食べたくても食べさせてもらえません。栄養が偏るからって」
金銭感覚はまともな分、過剰に口うるさいらしい。
「あたしだってねー、たまには体に悪いものを食べたいときだってあるんスよ! インスタントラーメンとか、カップラーメンとか!」
なんか、アンズ会長と同じようなことを言い出したぞ。
あいつも二言目には「ラーメン食べたい!」と叫ぶし。誠太郎が渋々連れて行くのだ。
「ことごとくラーメン限定だな」
「だってラーメン出ないんスもん! おウドンとおソバはいいんスよ! でもラーメンは脂肪分が多いからって! 自分は天そば食ってるのにッスよ! なんで天ぷらはいいんスかって聞いたら、『これは野菜だからノーカン』とかぬかしやがるッス!」
まるで親の仇かのように、クルミはラーメンを豪快にすすった。
確かに矛盾しているな。おにぎりは許されるのに、カップ麺はアウトとか。
「肉もハンバーガーとかダメって言うし」
ツラそうだ。気軽に加工肉を食えない環境ってのは、地味に痛い。
「お腹に余裕があれば、食べたいッス」
「でも、アイスは食うと」
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なるほど、昆布のおにぎりが好きってのも、「それしか食わせてもらってない」可能性がある。
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