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第一章 ウザい後輩に弱みを握られ、交際を迫られた。
ウザ後輩と、あーん 1
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俺も、クルミが解いている問題を目で追いかける。
しかし、俺の学力で解読できるわけもなく。
「はーあ。もう中断するッス。頭がパンクするッスよ」
猫のように、クルミが机に腕を伸ばす。
時計を見ると、もうかれこれ二時間勉強していた。
「割と、はかどったな」
「そうッスね。でも、これ以上の集中は逆効果ッス。かえって気が散っちゃうッス」
人間が集中できるのは、どれだけ訓練された人でも三時間が限界らしい。
俺もアクビが出てきた。そろそろやめ時だろう。
席を立ち、本屋から出た。
「今日は誘ってくれて、ありがとうな。おやつでもおごろう」
「やったーっ! 先輩大好きッス!」
バンザイしながら、クルミが喜ぶ。
俺は、顔が熱くなった。
「どうしました、先輩?」
「別に何も」
言えない。おふざけでも「大好き」と言われて、心臓が飛び跳ねそうになったなんて。
「ひょっとして、あたしのような超絶美少女に『大好き』ってふざけて言われてもテンション爆上ゲしちゃった、なんてコトないッスよね?」
「も、もちろんだ!」
流れに任せて、ごまかす。
「もう一回、フードコートに行くか? ドーナツがあるぞ」
「どうしましょうかねえ。おごりッスよね。もうちょっと奮発してくれても」
「お前、図々しいな」
「甘えられる時に甘えるッス……お?」
本屋のすぐ隣にある珈琲店に、クルミは反応した。
昔ながらの佇まいで、昭和どころか大正を思わせる。ミルクホールと呼称しても差し支えない。
「いい感じのお店ッス。ここにするッス」
引き込まれるかのように、クルミはなだれ込んだ。
俺はブレンドを。クルミはミックスジュースを頼む。
「ねえねえ先輩、あとこのフルーツポンチもらっていいッスか? ちょっとお高いんスけど」
「いいぜ。遠慮するなよ」
幸い、給料にはまだ手を付けていない。
急な出費に対応できるくらいには、余裕があった。
「やった。先輩愛してるッス」
愛が安すぎる!
メニューを待っている間、クルミが店内を見渡す。
「ここ、いいところッスね」
「普段は、両親の車に乗せてもらうんだけどな」
最近になって、両親はやたら忙しくなった。ここで買い物したいときは、電車を利用することにしている。
「ご両親は何を?」
「親父は普通のリーマンだよ。出世して、部下をいっぱい任されるようになった。おふくろは最近起業して、ケータリングでアジアンデリを売ってる。昔からやりたかったらしい」
母親は一人娘で、祖父母は実家の定食屋を継がせたかったらしい。
だが母は、実家の味を地元民にだけではなく、全国展開したいと思っていたという。
家にあった軽トラックを移動販売用のキッチンカーに改造して、屋台も兼ねたデリバリー食堂に改造した。これが大当たり。
「大変ッスね。でもかっこいいッス」
「二人三脚だよ。でも、仕事が楽しそうでなによりだと思う。イライラしながら働いている両親は、もう見たくない」
俺の一言だけで、クルミは察したらしい。
「苦労が、あったんスね」 幼少期は、両親が共にピリピリしていた。「本当にできるのか」「育児は誰がやるのか」など、俺たちには見せないところで話し合いをしていたのを思い出す。
「だから、本当に小さい事業からスタートして、ようやく軌道に乗せた。子育てしつつだったから、トラブルも多かったけど」
母の金で、家を建てた。母に好きなことやらせたいと、父は安定した職についている。
「ご両親に楽をさせたいと、勉強を頑張ってる感じッスか? いい大学に入って、いい会社に入ってと」
「あーっ。ま、まあ、そんなところだ。うん」
「歯切れ悪いッスね?」
「気のせいだよ」
クルミの未来予想図は、まったく違う。
俺は、ネコが飼いたいのだ!
しかし、俺以外の家族が動物アレルギーなので、ペットを飼えない。
しかも、母親はフードを扱っているので、衛生面からも自宅では絶対に飼えないのは目に見えている。「将来は自分の店を持ちたい」って言っているし。
よって、俺はニャンコと過ごす部屋に憧れ「ペット持ち込み可の学生寮」も探したのだ。
しかし、あるのは農業を扱う大学の物件ばかり。
俺は畜産に興味があるわけではない。ペットが欲しいのである。農業大学なんかに入ったら、必ず家畜に愛着を持つ。大事に育てた家畜を加工するとなった日には、俺はきっと泣く。
一人暮らしがしたい。
そのために学業に励み、バイトもしている。
今の生活は快適だが、それとこれとは話が別だ。
狂おしいほど、ペットと共に過ごしたい。
なんなら、俺がネコのペットになりたいくらいなのだ。好きなだけ弄んでほしい。
「どうしたんスか。理想のおうちでネコと戯れる妄想でもしていたんスか?」
「違うよ! なんでそんなにイメージがピンポイントなんだよ!」
しかも、俺の心を見透かしたかのように正確に!
「おお、来たッスよ~」
注文がテーブルに並ぶ。メロンの器に、缶詰フルーツがギチギチに詰め込まれていた。中央にはアイスクリームの半球が乗っている。アイスは、クマの顔をデフォルメしていた。
しかし、俺の学力で解読できるわけもなく。
「はーあ。もう中断するッス。頭がパンクするッスよ」
猫のように、クルミが机に腕を伸ばす。
時計を見ると、もうかれこれ二時間勉強していた。
「割と、はかどったな」
「そうッスね。でも、これ以上の集中は逆効果ッス。かえって気が散っちゃうッス」
人間が集中できるのは、どれだけ訓練された人でも三時間が限界らしい。
俺もアクビが出てきた。そろそろやめ時だろう。
席を立ち、本屋から出た。
「今日は誘ってくれて、ありがとうな。おやつでもおごろう」
「やったーっ! 先輩大好きッス!」
バンザイしながら、クルミが喜ぶ。
俺は、顔が熱くなった。
「どうしました、先輩?」
「別に何も」
言えない。おふざけでも「大好き」と言われて、心臓が飛び跳ねそうになったなんて。
「ひょっとして、あたしのような超絶美少女に『大好き』ってふざけて言われてもテンション爆上ゲしちゃった、なんてコトないッスよね?」
「も、もちろんだ!」
流れに任せて、ごまかす。
「もう一回、フードコートに行くか? ドーナツがあるぞ」
「どうしましょうかねえ。おごりッスよね。もうちょっと奮発してくれても」
「お前、図々しいな」
「甘えられる時に甘えるッス……お?」
本屋のすぐ隣にある珈琲店に、クルミは反応した。
昔ながらの佇まいで、昭和どころか大正を思わせる。ミルクホールと呼称しても差し支えない。
「いい感じのお店ッス。ここにするッス」
引き込まれるかのように、クルミはなだれ込んだ。
俺はブレンドを。クルミはミックスジュースを頼む。
「ねえねえ先輩、あとこのフルーツポンチもらっていいッスか? ちょっとお高いんスけど」
「いいぜ。遠慮するなよ」
幸い、給料にはまだ手を付けていない。
急な出費に対応できるくらいには、余裕があった。
「やった。先輩愛してるッス」
愛が安すぎる!
メニューを待っている間、クルミが店内を見渡す。
「ここ、いいところッスね」
「普段は、両親の車に乗せてもらうんだけどな」
最近になって、両親はやたら忙しくなった。ここで買い物したいときは、電車を利用することにしている。
「ご両親は何を?」
「親父は普通のリーマンだよ。出世して、部下をいっぱい任されるようになった。おふくろは最近起業して、ケータリングでアジアンデリを売ってる。昔からやりたかったらしい」
母親は一人娘で、祖父母は実家の定食屋を継がせたかったらしい。
だが母は、実家の味を地元民にだけではなく、全国展開したいと思っていたという。
家にあった軽トラックを移動販売用のキッチンカーに改造して、屋台も兼ねたデリバリー食堂に改造した。これが大当たり。
「大変ッスね。でもかっこいいッス」
「二人三脚だよ。でも、仕事が楽しそうでなによりだと思う。イライラしながら働いている両親は、もう見たくない」
俺の一言だけで、クルミは察したらしい。
「苦労が、あったんスね」 幼少期は、両親が共にピリピリしていた。「本当にできるのか」「育児は誰がやるのか」など、俺たちには見せないところで話し合いをしていたのを思い出す。
「だから、本当に小さい事業からスタートして、ようやく軌道に乗せた。子育てしつつだったから、トラブルも多かったけど」
母の金で、家を建てた。母に好きなことやらせたいと、父は安定した職についている。
「ご両親に楽をさせたいと、勉強を頑張ってる感じッスか? いい大学に入って、いい会社に入ってと」
「あーっ。ま、まあ、そんなところだ。うん」
「歯切れ悪いッスね?」
「気のせいだよ」
クルミの未来予想図は、まったく違う。
俺は、ネコが飼いたいのだ!
しかし、俺以外の家族が動物アレルギーなので、ペットを飼えない。
しかも、母親はフードを扱っているので、衛生面からも自宅では絶対に飼えないのは目に見えている。「将来は自分の店を持ちたい」って言っているし。
よって、俺はニャンコと過ごす部屋に憧れ「ペット持ち込み可の学生寮」も探したのだ。
しかし、あるのは農業を扱う大学の物件ばかり。
俺は畜産に興味があるわけではない。ペットが欲しいのである。農業大学なんかに入ったら、必ず家畜に愛着を持つ。大事に育てた家畜を加工するとなった日には、俺はきっと泣く。
一人暮らしがしたい。
そのために学業に励み、バイトもしている。
今の生活は快適だが、それとこれとは話が別だ。
狂おしいほど、ペットと共に過ごしたい。
なんなら、俺がネコのペットになりたいくらいなのだ。好きなだけ弄んでほしい。
「どうしたんスか。理想のおうちでネコと戯れる妄想でもしていたんスか?」
「違うよ! なんでそんなにイメージがピンポイントなんだよ!」
しかも、俺の心を見透かしたかのように正確に!
「おお、来たッスよ~」
注文がテーブルに並ぶ。メロンの器に、缶詰フルーツがギチギチに詰め込まれていた。中央にはアイスクリームの半球が乗っている。アイスは、クマの顔をデフォルメしていた。
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