レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

文字の大きさ
71 / 230
1-6 最強の敵を、殴りに行きます

豹変した友:サピィサイド

しおりを挟む
 サピロスは、シーデーの腕で目を覚ます。
 今は、城下町の屋根を伝ってジェンマから逃げている。

「あっ、シーデー、サピィが目覚めたぞ!」

 背後では、トウコ氏がグレース氏たちを避難誘導していた。

 まだ、ジェンマが追いかけてくる。

「ありがとうシーデー。もう大丈夫です。トウコさんの側にいてあげて」

 シーデーとサピロスは、二手に別れた。

 変わり果てた友を、討たねば。

 被害の出ない手頃な空き地に降り立ち、再びジェンマを迎え撃つ。

 分身したサピロスの破壊光線を、ジェンマは居合斬りで霧散した。

「加勢に入ってもらわずともいいのか?」

 撃ち合いながら、ジェンマが挑発してくる。

「今のあなたなら、あの人たちを人質に取りかねない!」
「合理的な判断だ!」

 ジェンマが、ローブを翻す。

 途端、サピロスは即座に背後へ下がった。

 しかし、間に合っていない。脇腹が、パックリと開いている。

「く!」

 サピロスが、膝を落とす。

 たしかに、サピロスはまだジェンマの魔法攻撃から回復していない。

 が、今の攻撃はまったく意図していなかった角度から飛んできた。

「ククク、弱くなったなサピロス! いや、私が新たな力を得たからか……」

 ジェンマの背後から、なにか昆虫の足のような細い物体が生えている。

 もしや……。

「……あなた、本当は誰なのですか?」

「ふん、私は、ジェンマ・ダミアーニだ。『今は私が』、な」

 サピィの疑問に、ジェンマはニヤリとした笑みを顔に貼り付けた。

 明らかに、自分の知っているジェンマの姿ではない。やけに表情が、機械的なのだ。

「あなたは、ジェンマではありませんね? 何者です!?」
「さあ、な。だが、我とともに来れば、友ジェンマと同じ所へ送ってやろう」

 ドラゴンローブを、サピィに近づける。

「それは!」
「ああ。さっきブティックから『奪還』した」

 ブティックに飾ってあった、アーティファクトだったはず。

「この装備は、店などに飾る代物ではない。われとともに、世界を統べるオミナス。我々オミナスは、この世界すべての人類と入れ替わるのだ」
「そうですか。父から聞いたことがあります。あなたがたオミナスは、元々魔族だったと」


『左様。我らは、魔族共の生贄にされたのだ!』

 語ったのは、ジェンマの持つ杖だった。ジェンマの手を借りず、ひとりでに立つ。

 オミナスとは、「装備品と魔族を融合させた、特殊なレアアイテム」である。意思のある物質として開発された。主に下級の魔族から選出され、実験体になった過去を持つ。

「だが、悪いことばかりではなかった。オミナスは、人の魂を乗っ取る呪いを持つのだ。この呪いをもって、我々は魔族共に復讐する! 我々を道具として利用しようとした魔族共を!」

 ジェンマから、ジェンマとは違う意識の憎悪が溢れ出す。

 もう、自分の知っているジェンマは彼女に殺されたのだろう。
 魂を喰われて、魔族ですらなくなったのかもしれなかった。

「だから次々とオミナスを開放して、人を操ろうと」
「そうだ。貴様もいずれ、我らと同じになる。ギヤマンは察知し、我々の協力を拒んだ」
「なるほど。我々スライム族は、レアに頼らずとも装備を作ることができる」

 だから、スライム族の親玉である父ギヤマンが狙われたのか。

「だが、その恐怖に怯えることもない! 我々に対抗する装備品を作っていたらしいが、それももう終わり。サピロス・フォザーギルは、これより我が手に落ちるのだ!」

 ジェンマが、杖に手をかける。仕込み杖を抜き、白い光刃をサピロスに向けた。

「やれ、オミナスの同志よ。人々を混沌の海へ鎮めよ!」

 サピロスは逃れようとする。しかし、思っていたより深手を負ったようだ。
 

「そうはいくか、おらああ!」


 ジェンマの胴体が、杖もろとも真っ二つにされた。


「今のは、ランバートの技ですか?」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...