レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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1-6 最強の敵を、殴りに行きます

ダミアーニ卿

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「ジェンマ!」

 サピィが、ジェンマを抱きしめる。

『おのれ、かくなる上は!』

 杖の女が形を変えて、一本の剣へと変化した。
 居合もなにもない。
 やはり使い手がいなければ、満足する技は使えないらしい。
 サピィたちに向けて、乱暴に突撃する。

「死ぬのはお前だ。おらあああ!」

 スキル:秘宝殺しを、俺は発動させた。

『発動前に、殺してくれるわぁ!』

 オミナスの杖の先端が、眼前に。

 サブクラス:サムライの反応速度で、どうにか直撃を避けた。

 杖の先が、俺の頬をかすめる。わずかに、血が流れた。

『グハハハ。安心せい。貴様を乗っ取れば、秘宝殺しなど恐るるに……がああ!?』

 勝ち誇っていた杖に、ヒビが入る。
 剣のような形状にしていた姿が、またたく間にボロボロの状態に。

『な、こやつ、『全身が秘宝殺し』だと!?』

 俺の血は、杖さえも侵食し始めている。今が勝機だ。

「秘宝殺し……雷斬!」

 光刃での一撃をオミナスの杖に見舞った。
 凶悪なオミナスを、俺は一刀のもとに付す。

『なあああああっ!』

 オミナスの杖が真っ二つに。半分は変色し、瘴気は霧散していく。

 ジェンマが、杖の戦闘力を削ってくれたおかげだ。

「やったぞ、サピ……」

 しかし、その代償は大きかった。

 サピィはジェンマを抱きしめながら、ずっとうつむいている。



 ジェンマが事切れているのが、俺にもわかった。



 彼女は最後の最後で正気を取り戻し、俺に手を貸してくれたのだろう。
 サピィの友として。

『我の、魔族への復讐は、ここで潰えるのか!』

 オミナスが、起き上がる。
 半分にされてもなお、オミナスの怨念は残っていた。
 だが、それも時間の問題だが。

「お前の負けだ!」
『うるさい! まだ致命傷は負っていない。いいいいいいいまに……』

 次の瞬間、彗星のような魔力がオミナスの頭上に降ってきた。

 魔力の塊は、落下と同時に拳を叩き込む。
 丸太のような腕から繰り出された男の拳は、杖を砕いた。

「あれは、魔族か」

 魔族なんて言葉では形容できない魔力である。

「やっと見つけたぞ。娘の身体を乗っ取ったクソヤロウ」
『な、あ……きさまは……』

 攻撃を受けた杖は、灰色の砂となって消える。

 俺は、男の姿を改めた。
 この男の姿を視認することを、さっきまで目が拒んでいた。
 それだけ、相手は異様な魔力の塊と言えた。

 男の身体が、はっきりと輪郭を表す。

 逆だった銀色の髪に、灰色の肌。
 筋肉質の身体を、上質な素材の衣装と黒いマントで包む。
 
 デーモンロード、という言葉さえ幼稚に思えるほど、男の魔力は凄まじい。

 この場にいる誰も、彼には勝てないだろう。
 ただ、顔立ちはわずかに、ジェンマの面影がある。

「すまぬがサピロス嬢、ジェンマを」

 俺には目もくれず、大きな男はサピィにジェンマの亡骸を引き渡せという。

 サピィはなんの抵抗も示さず、ジェンマを差し出す。

「今は時が惜しい。サピロス殿、また時が来ればいずれ詳しく話そう」

 一瞬、俺を見た。

「秘宝殺しよ。オミナスの破壊、感謝する」

 早口でまくし立てた後、男性はジェンマを抱きかかえて飛び去ってしまった。

「今の男は?」
「魔王、ダミアーニ卿。父の友人であり、魔族の王です」
 
 あの男性が、ジェンマの父たる【魔王 ダミアーニ】だったとは。

 ジェンマのいなくなった空を、サピィはずっと見上げていた。

「サピィ。大丈夫か?」
「ええ。ありがとう」

 生返事という感じで、サピィは応答する。

 ジェンマは、悪人でなかった。ただ、操られていただけ。

 それでも、彼女はサピィの父親を殺している。


 俺は、どう声をかけていいのかわからない。


「おーい、ランバート!」

 トウコが、こちらまで走ってくる。

「手を貸してくれー」
「わかった。すぐに向かう」

 避難所が、大変なのだろう。

 この事件は、俺たちだけの問題じゃない。
 もっと想像以上の被害が出ている。

「サピィ、キミの力が必要だ。頼めるか?」
「はい。お供します」
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