レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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2-5 重要人物を、姫騎士が殴りました

福音《ゴッド・ノイズ》、完成

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 ヒルデはなおも、自分の父親を叱責する。

「謝罪は全て終わってからになさって! 街の復興は、わたくしにお任せください。お父様は、兵器ヴァスキーについての情報共有を!」
「ヒルデ……お前、頼もしくなったな。子どもの頃は、私の後ろに隠れて泣いてばかりだったのに」

 ほほえみながら、サドラー国王は立ち上がった。

「お前の言うとおりだ。私が間違っていた。知っていることは、全て話しましょう」

 ひとまず、サドラーの王宮へ戻る。エルトリ大臣の治療も必要だ。

 そこには、ペールディネの王がいた。トウコも一緒だ。

「お逃げになったのでは?」
「一度ペールディネへ戻って、作戦を立てていました。

 ペールディネ及び全世界レベルで、ヒューコ国に向けて調査隊を向かわせたらしい。

「国家だけではなく、全ハンターにχカイの討伐を依頼しています。制圧は、時間の問題でしょう」

 ヒューコの国王が、城に潜んでいるχの撲滅を先導しているらしい。
 ずっと食い物にされてきたからな。

「そうだ。フェリシア、動けるかーっ?」

 トウコが聞くと、フェリシアは元気そうな顔を見せた。

「もちろんよ。あなたの治療のおかげよ。ありがとう」
「そのおっさんも治すぞー」

 トウコが手をかざすと、エルトリ大臣のキズがみるみる癒えていく。
 さすが、本職のヒーラーである。

「後は王族の治療師に見てもらってくれなー」

 サドラーが、治癒師を手配してくれるという。
 今は、エルトリに近づかないほうがいいだろう。

「おっとおが、見せたいものがあるって。みんなも」

 トウコはペールディネと別れた後、アイレーヌに戻ったらしい。
 ギルドから、一度こっちへ戻れと連絡があったそうだ。

「じゃあ、俺たちはこれで。必ず戻る」
「お願いします、ランバートさん」

 サドラーのハンターギルドから、ポータルを使う。
 


「ようランバート! 待ってたぜ!」

 アイレーヌへ戻ると、コナツがハンターギルドで待機していた。

「随分と派手に暴れたな。待ってろ」

 鍛冶屋へ急ぎ、コナツの弟子に装備を手直し・調節してもらう。

「このぶっ壊れ方は、フェリシアちゃんじゃねえな。ランバートだろ? お前、何をしたんだ?」
「ちょっと、廃ビルを溶かしただけだよ」
「これがちょっとってレベルかよ……」

 フェリシアの銃だけは、コナツ自身が直す。

 修理の間、夕食の鍋を準備した。
 フェリシアも女衆に混じって、慣れない手付きで大根の皮を剥く。

 鍋をつつきながら、コナツと会議になった。

「ギンとスズから聞いたぜ。ペールディネで大規模な依頼があってよぉ、フィーンド・ジュエル装備が飛ぶように売れてやがる」

 そこで、と前置きして、コナツがフェリシアに銃を渡す。

「これ、完成したの?」
「ああ。こいつが正真正銘の、【福音《ゴッド・ノイズ》】だ。多分な」

 鉱石の色からして、真っ黒な銃身が現れると思っていた。
 が、本体は真っ白である。

「持っただけで、凄まじい魔力を感じるわ」
「預かった鉱石をさらに焼き溶かしたら、こんな色になったんだ。おそらく、これが本来の色なんだろうよ」

 銃のポテンシャルを、限界まで引き上げたような姿である白銀の銃身は美しく、恐ろしい。
 撃てば賛美歌が流れるのではなかろうかというほどに、きらびやかだった。

「神の御業によって作らされた気分だったぜ。ありがとうよ。こんな思いをさせてくれて」
「こんなの、私が受け取っていいのかしら?」

 フェリシアの震える手を、コナツの丸っこい掌が包み込む。

「あんたが持つべき、銃だ。魔女があんたに託したんだよ。だったら、あんたの銃だ」
「わかったわ。ありがとう、コナツ」

 コナツに説得され、フェリシアは銃をホルスターにしまった。

「修理完了です!」
「よっしゃ。気をつけてな!」

 鍛冶屋の一家に見送られ、俺たちはサドラーへと急いだ。
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