レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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3-4 敵の目的を殴……探りに行きます

堕天使

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 黒い羽を背中にした、半裸の魔物が空を飛んでいる。身体こそ人間の大きさしかないが、放つ魔力が尋常ではない。手には細長いラッパを持ち、こちらを見下すような笑みを浮かべている。

「ペトロネラ直属の配下ですね。強さは、グレーターデーモン並と思っていいでしょう」
「こんな奴らが、まだウジャウジャいるのか!」

 エトムントの銃が、堕天使に向けて火を吹く。

 堕天使は、あっさり身をかわす。

 魔力で形成された銃弾は、堕天使の周りを飛ぶ大型の怪鳥を撃ち落としただけだった。

 しかし、堕天使は反撃してこない。エトムントの銃撃をすり抜け、魔物が集まっている場所へ移動した。大きく息を吸い込んでから、細長いラッパを吹く。

 音色を聞いたモンスターたちが、凶暴化した。身体も幾分、膨れ上がっているように思える。

 堕天使が先導して、モンスターを操っているらしい。

 魔物たちが、もっともレベルが低いルーオンの方へ押し寄せた。

「ルーオン、そっちは大丈夫か!?」
「平気だ。ちょうどいい経験値になってる!」

 両手持ちの剣を振り回し、ルーオンは善戦している。たったひとりで大軍勢を押しのけるとは、実に頼もしい。若くても、レベル五〇に近づいているだけある。

 因縁のギガースが、ルーオンに棍棒を振り下ろしてきた。

 もう、油断してやられはしない。ルーオンは冷静に棍棒をさばき、ギガースの弱点である目に両手剣を突き刺す。

「わーわーっ!」

 コネーホも、メグやミューエに守られながらヒールを撒いていた。おかげで、誰一人戦死者が出ていない。

 とはいえ、堕天使はなおも魔物たちを焚きつける。

「てんめえ!」
 ビルの屋上から、ルーオンが堕天使に飛びかかった。
「はやまるな! 単独行動は慎め!」
「つっても、今しかねえ!」

 エトムントの叫びも、ルーオンに届かない。堕天使に、両手剣を振り下ろす。

 堕天使は羽根を振り上げただけで、ルーオンの剣を受け流した。

「うわああ!」

 二〇〇メートル真下へ、ルーオンが転落する。

「危ない!」

 コネーホが、ルーオンをキャッチした。お姫様抱っこの形で。

「悪い、コネーホ。痛ってえ!」

 ルーオンをおろしてすぐ、コネーホはルーオンの頭を殴った。

「ワタシの【ギャグ補正】がなかったら、あんた死んでたんだよ! エトムントさんの言うコト聞きなさいよ!」

 腰に手を当てながら、コネーホがルーオンに説教する。

「あれは、すっかり尻に敷かれるな」
「だな」

 ビョルンの意見に俺は同意した。 

「ナメたマネを」

 銃を構え直し、エトムントが再度堕天使を狙う。

「ボーッとしていて、いいのか?」

 堕天使の背後に、ヴァイパー族の巫女ゼンが、火球を放った。

 炎に包まれて、堕天使がアイテムへと変化する。

「ノーマルの杖か。さっきのラッパが変質したのだな?」

 ゼンが、アイテムを拾う。ついでに、白いダイヤのジュエルが腕輪へ吸い込まれていった。

「やはり、俺がいるとドロップ品の質が悪いな」

 しかし、サピィは違う。何かを探しているような。

 俺たちは、手出しをしない。兵士たちのレベルアップが目的だからだ。それでも、俺がここにいるだけで、アイテムの質が悪くなっている。

「サピィ、せめて俺だけでも、四層へ行くべきか?」
「もう少々お待ちください。なにかわかる気がするので」

 何かを探しながら、サピィは返事をした。

「どうした、サピィ?」
「いえ。こちらの話です。それより今は」

 別個体のラッパ吹きが、現れる。音色を変えて、ラッパを吹いた。

 半裸の女性型堕天使が、黒い剣を持って降下してくる。狙いはサピィか!

「レッサータイプもいましたか」

 サピィは、身をかわした。

 上空では、男性型堕天使が槍から氷の槍を撃ち出す。

 氷の攻撃魔法も、サピィは障壁を作って弾き飛ばした。反撃の火球で、羽根を燃やす。

 墜落してきた堕天使二体を、メグとルーオンが切り捨てる。 

「攻撃タイプは、レッサーデーモンクラスのようだな!」

 堕天使の数が、増えてきた。ラッパ吹きは特別な種類らしく、数は少ない。攻撃タイプのほうが多いようだ。堕天使は、空を覆い尽くすほどの数に。

「やべえ、キリがねえぞ!」
「ヤツらの巣は、どこなんだ!?」

 兵士たちの統率も、乱れてきた。

「サピィ、さすがにここまでくると」
「兵士だけでは、心もとないでしょうね」

 俺は、刀を構える。敵を察知するスキルを発動して、照準を合わせた。

「ディメンション・セイバーッ! おらあ!」

 刀から衝撃波を出して、俺は堕天使の翼だけを狙う。

 羽の根元を切り裂かれ、堕天使たちが墜落していく。

「今だ! 堕天使共を穴だらけにしちまえ!」

 息を吹き返した兵隊たちが、好機とばかりに堕天使へ銃弾を浴びせた。

「オラオラオラ!」

 俺は立て続けにセイバーを放ち、堕天使たちを撃ち落とす。

「ではルーオン、その堕天使たちは、レッサーデーモンクラスです。さっきあなたが仕留め残った個体よりは弱いですから、思う存分いってください」
「わかった! でやあああ!」

 ルーオンたちも切りかかって、堕天使はあらかた片付いた。

 さすがにこれだけの被害が得るとは思っていなかったのか、堕天使たちは一斉に逃げていく。

「追わないのか?」
「じきに追跡はします。ですが、今はそのときではありません」

 すでに、シーデーのドローンによって、どこへ逃げていったかは認識が完了しているらしい。

「全員レベル五〇に達したな。一旦、引き上げた!」

 エトムントの号令により、俺たちは塔から脱出する。

 ヒューコのルエ・ゾンの元へ。ジュエルはすべて、ダフネちゃんに預けた。

「フィーンド・ジュエル、確かに引き受けたのです」

 ダフネちゃんから、コナツの元へジュエルを転送してもらう。

 今日はヒューコから、ペールディネに飛ぶ。グレースのカフェへ向かい、昼飯を食うことに。

 ヒューコで昼食でもよかったが、あそこはうまい店がない。常に緊急状態のため、良質な店はすべて他の街へ移ってしまったのだ。

「ヒューコは、大丈夫なのか?」
「問題ないだろう。数名のハンターたちが、一階層へ向かうのを見た」

 今までは厳戒態勢だったので、ハンターの推奨レベルも制限されていた。二層から先はまだムリだが、徐々に塔へ人は戻ってきつつある。

「さて、五〇レベルに達したから、上位クラス選択と行こうぜ」

 ルーオンが、自分のステータスが映し出されたタブレットを手に取った。

 ちなみに、ヒューコ騎士団たちは盛り上がっていない。職業の選択肢がないからだ。必然的に、【ファランクス】という職業へ振り分けられる。そこから衛生兵やアサルト向けに、装備だけ入れ替えるのだ。

 これが、フリーのハンターと国に所属する騎士との違いである。ただ、自分の足で稼ぐ必要があるハンターに対し、騎士は安定した収入があるが。

 ルーオンは速攻で、拳闘士を取る。

「【バトルマスター】狙いか」
「あんたの【ディメンション・セイバー】だっけ? あんな遠隔攻撃技を出したいんだってさ」

 メグが、そう教えてくれた。

 拳闘士は、身体中の気を操って撃ち出すことができる。トウコの初級職でもあった。

「あったぞ、【スプラッシュ・クロー】だ。こいつを取るぜ。コネーホは、どうするんだ?」
「ビショップかな? 格闘を学んでモンク職へって手もあるけど、戦闘は役に立ちそうにないから」
「いいんじゃないか? 鑑定スキルはこの先必須だしな」

 転職とスキル見直しを終えて、食事を楽しむ余裕ができる。

「ではお教えください。ヒューコ騎士団の皆さん」

 腹も落ち着いたところで、サピィが切り出した。

「あの塔で、何を探しているのです?」
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