レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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3-4 敵の目的を殴……探りに行きます

エトムントとリュボフ

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「そうよ。あたしはリュボフ・ヒューコ。エトムントとあたしは兄と妹なの」

 リュボフ姫が「改めて、助けてくれてありがとう」と礼を言う。

 エトムントと比べて、背格好は随分と低い。エルフだからか、胸は多少控えめだ。しかし、顔立ちはほぼ鏡のように同じだ。長い髪にウェーブがかかっているところも、キリッとした目元も。
 一〇〇人が見たら全員が「美しい」と言うだろうルックスである。もっともエトムントは戦闘中、顔のほとんどをマスクで覆っているが。

「すると、エトムントは王族の出身なんだな?」
「ああ。ずっと隠していてすまない」
「いいんだ。それより、姫は辛そうだな」

 目に見えて、リュボフは消耗している。

「大丈夫、姫?」と、フェリシアがリュボに肩を貸す。 

「ありがとう」

 リュボフも、大人しく従った。ここは王族同士で、支え合ってもらうほうがいいだろう。

「さすがに参っているようね。詳しい話は、お城かルエ・ゾンおじさまの家でやりましょう。早くここから出ないと」

 急いでリュボフを帰さないと。回復の泉でもいいかもしれないが、そこでも襲撃を受けそうだ。

「大丈夫なのか? 追っ手が塔の外に出てしまうんじゃ」
「ムリよ。堕天使は塔の外には出られない。ヤツらにとって外気は毒なの。そういう話も、外でしましょう」

 とにかく、堕天使は外へ出ていく危険がないという。

「任せろー」

 トウコが、二メートルのサモエド犬を呼び出した。

「後ろに乗れ。多分、アタシのユキオが一番早い」

 たしかに、この中ではトウコが一番ダメージを負っていない。体力は有り余っているはずだ。

「わかったわ。トウコ、お願いするわね」

 フェリシアに手伝ってもらいながら、リュボフはサモエドの背中に乗る。

「頼んだぞ」
「任せろランバート。いくぞユキオー」

 俺が声をかけると、トウコはガッツポーズを取った。

 抜群のダッシュ力で、サモエドは走っていく。

「俺たちは、トウコを援護する」
「わかった。先に行っていてくれ、兵たちで足止めをしておく」

 エトムントが、シンガリを務めてくれるらしい。しかし。

「……サピィ」
「はい。あなたの言いたいことは、わかっています」
「姫のこと、頼めるか?」
「いえ。わたしも残りましょう。皆さんは、リュボフ姫をお願いします。シーデー、エトムントをお送りして」
「はい。サピロス様。ではエトムント殿」

 シーデーはバイクモードになり、エトムントを乗せた。

「部下を残して、私は行けない!」
「今一番姫の側にいないといけないのは、あなたです。大丈夫。兵士たちはわたしにおまかせを」
「……お願いする」
「お気をつけて」

 エトムントを乗せたシーデーが、猛スピードでトウコたちに追いつく。そのまま、三層の出口まで行けそうだ。

「付き合わせてしまって、すまない」

 俺は、堕天使に向けて刀を抜く。

「平気です。あなたには、どこまでもお付き合いします」

 サピィも杖を構えて、凄まじい魔力を発動させた。

「ありがとう。こっちは手短に済ませるぞ!」

 兵士を、一人も欠けさせたくない。あの中には、ルーオンたちだっているんだ。彼らを見捨てたとあっては、彼らを託してくれたリックに、俺は顔向けができない。

「おらおら、【ディメンション・セイバー】!」

 刀から衝撃波を撃ちながら、兵士たちを守る。ジュエルは俺が回収せず、兵士たちの弾倉にしてやった。

 ルーオンも同じように、空を飛ぶ敵を相手に衝撃波を撃っている。

「ダイヤが出たら、スロットに入れろ! 体力と魔力が回復する!」
「……ホントだ。少しだけ楽になった!」

 ジュエルを武器のスロットに装着したルーオンが、息を吹き返す。

「コネーホ、あなたはわたしの側で隠れてください」
「すいません! お役に立てなくて!」
「いいんです。ここにいられるだけでも奇跡ですから」

 みんな、懸命に戦っている。それでも、堕天使の数が一向に減らない。 

「それはなんですか?」

 俺の刀のスロットに入っているジュエルに、サピィは関心を向けた。

「見たところ、サイズはオーブで種類はオニキスのですね。ですが、これは見たことがない形です」

 オニキスは、倒した相手の魔力や体力を俺に変換する。

「ああ、マガタマっていう形なんだが」
「また、新しいジュエルですか。あなたは、本当に面白い」

 サピィが、微笑む。

「変種なら、別の効果もあるかも知れません」
「おう。やってみるさ」

 しかし、堕天使の動きがおかしい。

「出口に集まっていきます」

 堕天使たちが、出口の前で融合を始める。その姿はまるで、巨人だった。

「ジェエエアアアアアアアア!」

 巨大化した堕天使が、出口に立ち塞がる。

 トウコたちも、急ブレーキをかけた。これでは、出られない!

「ギガースだと!?」
「そうでした。ギガースも、堕天使の一種でしたね」

 たしかに、ギガースは天界を追われた巨人族だったはず。とはいえ、あの巨大堕天使はギガースの数倍は大きい。一〇〇メートルはあるだろう。

 ギガース亜種が、リュボフを踏みつけようとする。

「おらああ!」

 俺は、ギガースの足を狙う。

 衝撃波が、足をふっ飛ばした。

 足を切断されて、ギガースがたたらを踏む。

「今だ。姫たちだけでも行け!」

 トウコ、シーデー、護衛役のフェリシアが、出口を抜けた。

 後は、コイツを片付けるだけ。

「ランバート、ちょっといいですか?」
「どうした?」
「おそらくマガタマというジュエルは、スロットに直接つけないのでは?」

 サピィが、細い紐を取り出す。

「これは、装備に何かをくくりつけようと思って、ダフネちゃんから購入したものです。お役に立てそうです」

 刀のジュエルスロットは、柄頭の部分だ。そこには、半円状の輪っかがある。輪っかへ、サピィは紐を通した。マガタマジュエルをスロットから外し、紐でマガタマをくくる。

「この紐は、ジュエルを付けられないタイプの装備に、無理やりジュエルの効果をもたらす紐です。うまくいきそうですね」

 これなら、他のジュエルにも影響が出ない。

「元あった場所には、ダイヤを入れておきましょう」

 紐には、留具としてジュエルを使うこともできるらしい。

「これで大丈夫です」

 ありったけのスフィア型ジュエルを、サピィは紐に通して留具にする。

「ジュエルそのものに、穴を開ける方法があるんだな?」
「ダフネちゃんの考案です。弾倉にできるんですから、アクセサリとしても加工は可能だろうと思いまして、ダフネちゃんと相談しました」

 サピィですら、ジュエルの全貌はわからなかったのか。

 斬られた足が再び生えてきて、堕天使型ギガースが持ち直す。

「さて、トドメと参りましょう」
「OKだ。くらえ、ディメンション・セイバー……あぁあっ!?」

 俺は、いつものように衝撃波を刀から撃ち出した……はずだった。だが、撃ち出されたのは、虹である。虹色のセイバーが、ギガース堕天使を斬り裂いた。

 各種属性攻撃を受けて、堕天使の巨人が粉々になる。

 残ったのは、大量のジュエルだけ。

「色が虹色だった」
「なんか、ゲーミング・セイバーだったな」

 ルーオンが、呆れている。 

「すごい……これは、例の武器にも使えるのではありませんか?」
「例の武器って、【黒曜顎コクヨウガク】か?」

 俺が聞くと、サピィがうなずく。

「そういえば、刀がボロボロだ」

 さっきの攻撃に、とうとう刀が壊れてしまった。

「外へ出ましょう。武器がないとあっては、太刀打ちできません」


 俺たちは、すぐさま外へ。



 そこには、先に帰っていたシーデーたちが、神妙な面持ちで立っていた。

 姫たち兄妹と、フェリシアだけが、そこにはいない。

「おかえりなさいませ、ランバート殿」
「フェリシアはどうした?」
 
 シーデーに問いかけても、彼は首を振るばかり。

「リュボフ姫を慰めておいでです」
「なにがあった?」
「ヒューコ国王が、亡くなりました」
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