レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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3-5 堕天使を殴りに行きます 前編

かつての敵の技

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 武装をすべて捨てて、俺は刀を握る。

 俺を守るものは、普段着の服装と、手にある黒曜顎コクヨウガクだけ。ヨロイは解除した。手袋にもブーツにも、魔力的な加護は施されていない。すべて、コナツの家で買った普通の品である。

 さらに俺は、黒曜顎を鞘へしまう。

 これでなければ、ならない。

 何かに守ってもらっている状態では、ラムブレヒトの動きは捉えられないのだ。

 なにより、「コイツは本音を語っていない」のだから。

 集中しろ、ランバート・ペイジ。全身の魔力を研ぎ澄まし、眼前の敵を屠れ。

 この男を相手に、時間を取られすぎだ。

 なぜ、ラムブレヒトの言葉に耳を傾けてしまった?

 考えるべきことは、他にあったのに。すべては、矛盾だらけの会話だった。

 答えを出すには、早期決着するしかない。

「自らのアイデンティティすら失ったか、秘宝殺しレア・ブレイク!」

 堕天使が、大げさに両腕を広げた。

「よかろう。わが黒き翼の羽ばたきをもって、天に召すがよい!」

 黒い羽根の数々が、俺に殺到してくる。

 光線、ブーメラン、実弾。すべてが、俺だけを狙う。

 敵に囲まれたときに、どのように対策するべきか。

 それは、かつての敵が教えてくれた!

 一筋の光線が、オレの頬をわずかに焼く。

「おおおおらあああああ!」

 すべての攻撃が俺に触れる寸前、俺は抜刀した。

「なにいいい!?」

 真円を描いた刀は、ブーメランこそ破壊する。だが、何かを斬るためだけに放ったわけではない。光線や実弾を弾いて、翼型兵器を撃ち落としていく。すべて一瞬の出来事だ。

【真円の舞】という技である。本来、女性のサムライが護身用に使っていたらしい。相手集団が懐に入った瞬間、隠し持っていた刀で胴を払う。もしくは、相手を油断させて一網打尽にするための。

 これは、女サムライ「ジェンマ・ダミアーニ」が使っていた技である。

 かつて俺の敵で、サピィの亡き友人だった女性の。

 今、俺の腕の中でジェンマは蘇った。 

「バカな。オレの翼が。最強の自立兵器が、魔力加護をまったく受けていない相手に撃ち落とされるとは」

 武器をすべて失い、ラムブレヒトが呆然とする。

 俺だって、無傷ではない。頬は切れ、身体中も切り傷だらけだ。

 しかし、そこまでする価値はあった。

「お前の負けだ、ラムブレヒト。これ以上は、勝負にならんぞ」

 ラムブレヒトの額に、青筋が走る。大剣を掴み直し、構えた。

「オレを侮辱するか。最強の堕天使であるオレを!」
「お前の敗因は、そのプライドだ。お前は自分が強いと自信がありすぎて、人から吸収するすべをおろそかにした」
「人から学ぶことなど、なにもない」

 やはりな。部下が外へ出ていくわけだ。安全な領域から出ようとしないのだから。

「お前は、半分は人間だ。いつでも外に出られた。なのに」
「すべてが完全に完了すれば、オレもいずれは」
「そのチャンスは、今しかなかったんだ。お前は俺に倒される」
「やってみろ!」

 突進してきたラムブレヒトが、剣を振り上げてくる。

「オレは貴様とは違うぞ、秘宝殺しレア・ブレイク! 青空のもとでヌクヌクと過ごしていたお前と、この過酷な環境の中で鍛えに鍛えぬいたオレとではな!」

 あくまでも、塔内部で準備を続けていた自分のほうが強いと、ラムブレヒトは語った。

 最低限の動きで、剣をかわす。

 勢い余って、ラムブレヒトの剣が壁を切り裂く。

 一瞬で、壁が再生する。

「希望の青空を見ることもなく、お前は死ぬ。絶望の曇り空を受け入れる覚悟のない者に、光は差し込んでこない」
「黙れ!」

 急に、ラムブレヒトの太刀筋が弱く見えた。動きがスローすぎて、次の攻撃が読める。

「お前には、わかるまい! この塔の恐ろしさを! 凶悪なモンスター。我を忘れたハンター。それらすべてを相手にして、オレは今日まで生き延びてきた! ここは神の領域にもっとも近い場所!」
「とても、出て行きたがっている人間のセリフではないな」
「やかましい!」

 ラムブレヒトは黒い大剣を、叩きつけるように振り下ろす。

 黒曜顎でも、あっさりと受け流せた。

 相手が、唖然とした顔になる。

「さっきの翼のほうが、よっぽど厄介だったぞ」

 俺は、ラムブレヒトのヨロイを突きで貫く。

「き、貴様、まさか」
「ああ。いつでも殺せたよ」

 ラムブレヒトが、膝をついた。手から、大剣がこぼれる。

 あれだけ恐ろしいと思っていた相手が、こうもあっさりと。

「なぜだ。なぜ貴様は、そんな急速にレベルアップを」
「知らん。それより話してもらおう。お前の本当の目的を」
 俺が尋ねると、ラムブレヒトは恨めしそうに俺を睨む。

 やはりだ。何かを隠している。

「どうして、俺だけを足止めした? お目たちの狙いはなんだ?」
「そこまで想像できれば、もう答えは出ている」

 ラムブレヒトは結局、重要なことを何も言わずに事切れた。

 情報を聞き出すため、俺はラムブレヒトを揺さぶる。

 しかし、彼は灰となり、ジュエルだけが残った。コイツもモンスター扱いだったのか。俺の手に残ったのは、オレンジ色のジュエルだけ。

「聖女以外で何があると……まさか!」

 しまった。ヤツらの目的は、サピィだ!
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