世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双

椎名 富比路

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第一章 FIRE失敗民による、逆襲のダンジョン攻略

第7話 違法ダンジョン建築

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 違法ダンジョン建築とは、勝手にダンジョンを建てて地球にのさばる行為だ。

 本来ダンジョンというのは、自然発生的に建つ。主に妖精が自分たちの領地を拡大させるため、豊富なエネルギーを求めて他世界に干渉する。

「その悪いヤツらというのが、この拘束魔法でムリヤリ妖精を従わせて、ダンジョンを作らせていたんですね?」

 受付さんの言葉に、ロニがコクコクとうなずく。

「私は労働者のふりをして、この妖精を助けたんだ! でも、追いかけ回されてさ」

「はい」

 ダンジョンを作るのは、主に妖精や精霊、魔物たちである。
 
 異世界のパワーが溢れ出ると、妖精が大量発生し、ダンジョンが生成されるのだ。

 妖精たちがダンジョンを作ってしまうのは、そもそも元の世界で魔力が溢れているせいだ。
 パワーを逃がす先として、地球が選ばれたに過ぎない。他にもあちこちの世界に、妖精たちは関与する。

「その魔力が甚大すぎたせいで、こちらにまで影響を及ぼしたわけか」
 
「ほんの千年前までは、まだ均衡を保てていました。政界や企業家たちの手で、守られてきたのです。しかし……」

 その性質を悪用して、地球に干渉しようと企むヤツラも多い、と。

 ダンジョンとは本来、勝手にできるものだ。意図的に作ってはいけない。

 地球にダンジョンが溢れてきたのも、人工的ではないはず。

 しかし、この自然発生暴走に便乗して、ダンジョンを作って儲けてやろうというヤクザものがいるってわけだ。
 
 異世界と地球の領土権を強引に取り上げて、自分の領地にするのである。

 近年は、「地球のテクノロジーは金になる」として、違法にダンジョン運営をするヤツラが多いらしい。
 一連のダンジョン異変は、そういう連中のせいで起きたらしい。

「そういう輩を、我々は【魔王】と呼んでいます」

「こちらでいえば、ヤクザの「組長」だか「親分」だかのニュアンスだな?」

「言ってしまえば……」

 オレが遊んでいたゲーム、【フュージョン・ワールド】も、そういったチンピラ魔王を撃退するというコンセプトだった。

 まさか現実でもチンピラ魔族どもと戦うことになるとは。

「魔王に関しては、こちらで調査・対策を致します。冒険者を募って、討伐依頼も出しておきましょう」

「ありがとう。お願いします。で、この子はどうなるの?」

 ロニが、受付のカウンターに身を乗り出す。

「治療の後、ダンジョンに野に放ちます。ここに置いておくより、ダンジョンにいたほうがいいでしょう」

 また、この妖精をさらった犯人を、ギルドでも探すと約束してくれた。

 妖精はロニを見て、米粒大の宝石を手に持たせる。

「くれるの?」

 ロニは宝石を握りしめる。

「もらっておけ。コイツなりに、感謝しているんだろう」

「ありがとう」

 ロニが礼を言うと、妖精は飛んで消えていった。ダンジョンへと、帰っていったのだろう。

「それで、あなたは?」

「ロニ」

「はい、ロニ様ですね。あなたは、地球の冒険者ではありませんね?」

 受付さんから尋ねられて、ロニは言い淀む。

「まだ未成年のようですので、ご家族にご連絡をしていただかないと」

「……ねえ、ミツル? 私たち、これっきりかな?」

 ロニが、こちらに視線を向けてくる。

「帰ったほうが、いいと思うけどなあ」

 説得しても、コイツはまだ帰ってくれそうにないな。

「ミツルさん、いかがします?」

「どうせ、プチ家出程度だろう。こっちで対処します」

 オレは、スマホを取った。

「知り合いに連絡する。それで、保護してもらおう」

 とある人物に、来てもらうことに。

 相手が来るまで、やれることはやっておく。

 まずは、ドロップ品の確認だ。

 と思っていたら、ロニがアイテムを差し出してくる。

「それ、全部やる」

「いいって。お前の戦利品じゃん」

 こんな大量で高価な品物なんて、受け取れないぜ。
 
「報酬。これでも足りないくらい」

「いいのか?」

「私の気が済まない。地球で保護してもらうんだし」
 
 仕方なく、オレは受け取ることにした。

 ただ受け取ってしまうと、まだなにかを要求されそうなんだよなあ。

「お前はどうしたい?」

「地球の探検したい」

「親御さんの許しは?」

「もらえてない。危ないからって。でも私は、地球の生活も経験してみたい」

 ロニのような少年少女は、別に少なくはない。

 だが、そういう子たちを寄せ付けない役割も、ダンジョンは担っている。

 地球が危ないのではなく、ダンジョンが危険なのだ。

「どこで魔法を覚えた? 独学じゃねえよな?」
 
「魔法科学校で」
 
 首席ですかい。やたらと強いわけだ……。

「私なら、アンタに魔法の使い方を教えてあげられる。だから」

 ロニが、身を乗り出してきた。

「私をパーティに加えて」
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