世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双

椎名 富比路

文字の大きさ
61 / 71
第五章 FIRE失敗民、最後の戦い!?

第58話 旧友との戦い

しおりを挟む
 前に敵がいたかと思えば、後ろに回り込まれている。
 
 分身したわけじゃない。前にも後ろにも、敵がいるのだ。同じ顔の敵が。

「これは、ホムンクルス」

 高度なホムンクルス技術がなければ、なしえないこと。

「そうだ。アタイはベリト様の配下、ホムンクルス使いのムルル。地球のバーチャルアバター技術を、ホムンクルスに転用したのさ」

 こんな芸当ができる人物を、ロニは一人しか知らない。

「ベリト様から教わった、【せーせーえーあい】? とかいうのを採用して、アタイの意のままに操れるんだ」

「キャトレイ、どうしてベリトの手下なんかに? 冒険者になるんだって、言っていたじゃん! なんで、冒険者を邪魔する側に回ったの?」

 かつての学友が、闇バイトの関係者になっていたなんて。

「黙れ、ロニ! もうその名前は捨てたんだ! 今のアタイは、ベリト様のしもべ!」

 キャトレイは頑なに、自分の過去と向き合おうとしない。
 
 どうする? 

 大型範囲攻撃魔法は、軒並み使えない。人が多すぎる。野次馬まで、集まってきた。

【レイジ・オブ・エレメンタル】が、往来に被害を及ぼさないとも限らない。

 この状況を、どうやって切り抜ければ……。

「しゃらくさいんじゃ。こらあ! 【アックス・ボンバー】」
 
 どこからともなく、ゴツい槍斧が飛んできた。

「アイザック騎士団じゃ! お前ら、避難せえや!」
 
 斧は市民を威嚇するように飛び、避難を促す。

 悲鳴を上げながら、市民は逃げていった。

 うまい。さすが、大都市だろうと武装して大暴れする、騎士団たちのトップだ。

「なんだい!? うお!?」

 ブーメランのように飛び回る斧に、キャトレイが怯む。
 コントロールを失ったのか、キャトレイのホムンクルスも手が緩んだ。

 そのスキに、ロニは母親とともにネコ獣人から離れる。
 
「誰だい!? 邪魔してくれて!」
 
「アイザックじゃ! 往生せえや!」
 
 オーゼ・アイザックが、助けに来てくれた。ロニと母の前に立ち、斧と盾を構える。

「どうして、ここがわかったの?」

「マリエはんから、『イヤな感じがするから、様子見にいったってくれ』って連絡があってな」

「ありがとう、オーゼ。お母さんをお願い」

 ロニと共闘すると思っていたのだろう。オーゼ・アイザックは呆気にとられた顔になった。

「ムチャすんなや、ロニ。ワイと二人でコイツをシバいたれ」

「いいから。行って」

「……よっしゃ。ムリはアカンで、ロニ」

 母は、オーゼに任せていいだろう。

「そんなに死にたいなら、死に場所くらい選ばせてやろうじゃないか!」

 キャトレイが、移動を促す。
 
「ロニって呼んでよ、キャトレイ。昔みたいにさぁ!」

 そう。

 ヴェロニカを「ロニ」と呼び出したのは、キャトレイが最初だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥風 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...