転生特撮ヲタ、異世界でダークエルフの霊にそそのかされてパワードスーツの開発をして、世界を救うことに。俺は特撮フィギュアが作りたいだけなのに。

椎名 富比路

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第一章 竜胆の騎士:ジェンシャン・ナイト

第2話 初戦闘、ドラゴンパピー

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 新しい肉体の、身体能力も高いようだ。肉弾戦なら、スーツなしでもい
けたな。

 頭を軽く掴んで振ってやるだけで、相手は簡単に絶命する。実に、楽ちんだ。

 なるべく省エネで動き、相手を倒す。
 こちらの魔力がどれだけ持つか、わからないのだ。
「野盗ごときに全力を出して、パワー切れで負けました」とあっては、目も当てられない。

 それにしても。

「弱いし、ロクなアイテムを落とさねえ」

 野盗の落とすアイテムは、どれもゴミばかりだ。

「ただの野盗だからね」

 もう少し歯ごたえのあるヤツラかなと、期待した。
 ただの人間相手では、この開き具合になるのだな。

 これはもっとテストが必要だ。

 さらに強い魔物を適当に狩って……ん? 

「こ、こいつ、なんだってんだ!?」

 野盗のボスらしき男が、骨でできた笛を吹く。

「いっ、いでよ、ドラゴンパピーッ!」

 馬車を引いていた馬が、突然うめき声を上げた。
 オレがよく知るドラゴンの形をとる。
 オレが知っているドラゴンの召喚方法とは、随分と違うが。「驚かないね。さすが特撮番組に詳しいオタクなら、見慣れているかい?」

 ニョンゴが、オレに問いかける。

「だな。それにしてもデカい。着ぐるみやセットとは、やっぱり違うな」

 ドラゴンパピー……パピーとは子犬って意味だが、子犬の意味を履き違えていないか?
 どこの世界に、馬よりデカい物体を「子犬」と呼ぶ?

「いいねえ」

 このドラゴンの素材は、パワードスーツに使えそうだ。

「剥ぐぜ」
「許可するよ。身ぐるみ剥がしてやろう」
「おっしゃあああ!」

 ようやく、全力で戦えそうな相手である。

 まずは、腕試しだ。

 ドラゴンパピーと手四つに。
 いける。スーツのパワーは、小型ながらドラゴンには負けていない。

 パピーの口が開く。火炎放射が来るか?

「よーし、どんとこい!」

 オレは、火炎のブレスをマトモに浴びた。

「やったぜ! クソ冒険者を……はあ!?」

 困惑するボスに対し、オレはピンピンしている。
 といっても、全身を軽く火傷した。

「あっちい!」

 あまりの熱さに、オレはパピーを期に投げ飛ばす。
 ジャバラになった部分を自動的に開放して、熱を逃がした。

「おいおい! このスーツ、熱は突き抜けるじゃねえか! 熱いのなんの!」
「それは、想定していなかった。再考が必要だね」
「ぜひ、お願いしたいね!」

 スーツから熱を放出して、仕切り直しだ。

「ぐええええ!」

 パピーが、背中をかばいながら動く。さっきの投げで、背骨をやったか。

 また、ブレスが来る。

「トドメだ。必殺技をくらえ!」

 オレはいい感じの武器を探した。しかし、なにかいいものはないか。
 もっとスカッとするような、鮮やかテイスティな。

「手をかざせば、無属性の破壊光線が出るよ」
「オッケーッ! くらえ!」

 オレは、魔物に向けて手をかざす。

 スーツと同色、青紫色のビームが手から伸びていった。

 あっさりと、ドラゴンパピーの頭部を貫通する。

 ボンと、ドラゴンパピーの頭が吹っ飛んだ。角やら牙やらが、ボトボトと地面に落ちていく。

「だから、やりすぎだっての! せっかくの素材が、ほとんどダメになったじゃねえか!」
「加減がわからんのだよ!」

 だが、学ぶことも多い。ドラゴンパピーは、目じゃないってわけだ。


 あと、ウロコと牙と角は、ありがたくいただくとするか。

「一番高価なのは、目玉なんだけどねぇ。跡形もなくなっちゃった」
「次からは加減しろ」
「はーい」

 まったく。力が有り余っているのも考えものだな。

「動くな!」


 あーあ。野盗のヤロウ。あの巨乳エルフちゃんを人質に取っちゃったよ。

 相手の忠告も聞かず、オレはズンズンと前進する。

「動くなっつってんだろ! このガキの命はピ」

 自分が何をされたのかわからないスピードで、野盗のボスは首を一八〇度回転させた。

「大丈夫か?」
「ありがとうございます」

 オレが尋ねると、少女は頭を下げた。

「モモチ、彼女、首輪で魔法を遮断されている。外してやってくれ」

 目の光で、ニョンゴはエルフちゃんの首輪を差す。

「力でぶっちぎっても?」
「OKだよ。人間じゃムリだけど、キミなら」
「ああ。問題なかった」

 いけそうだったので千切ってみたが、うまくいった。

「話は後だ。お前さんの故郷も助けよう」
「え、いいんですか?」
「ああ。ついでだ。オレにつかまっていてくれ」

 オレは、エルフちゃんを抱きかかえた。

「えっえっふわああああああ!?」

 悲鳴を上げる巨乳エルフをお姫様だっこしながら、オレは火の手が上がっている方角へ。

 トランジスターグラマーなエルフちゃんを抱えながら、オレは煙が上がっている街を目指す。

「あんた、名前は?」

 エルフちゃんに、オレは声をかけた。

「レクシーといいます」

 かわいいな。女優のレクシー・レイブから取った……わけないよね。異世界の女の子が、洋画なんて知らないだろう。

「いい名前だな。オレは、百地ももちが……モモチだ」

 フルネームで名乗ろうとして、ためらう。

「ニョンゴ、ここって異世界だろ? 名字持ちは特殊なのでは?」

 オレは、浮遊してついてくる招きネコ型ドローンに、話しかける。

「そうだね。キミの言う通り、名字持ちは貴族や王族に限られる。フルネームは避けよう」

 オレの隣で浮かんでいるダークエルフの魂ニョンゴも、同意した。

「ワタシも、名前を持っていない。人から付けてもらったあだ名を、そのまま名前に使っているんだ。普段は人から、魔女様、魔女様って呼ばれていたよ」

 なるほどな。

 オレはこの世界で、なんて名乗ろうか。

 生身は、モモチでいい。スーツはどうするか。

 スーツの名前までも『ニョンゴ』にするってのも、なんか違う。あれは魔女の名前だ。

 もっといい名前はないものか。

 日本一有名な巨大宇宙人は、シルヴィ・バルタンから取っている。
 金属製ヒーローは、ジャン・ギャバンやロイ・シャイダーからだろ?
 銀河鉄道999のヒロインは、メーテル・リンクからだ。 

「もしもしレクシーちゃんや。いい名前はないかな?」
竜胆の騎士ジェンシャン・ナイト様という名前が、いいと思います」

 ちょっと待て。

「レクシー。いつオレたちが、竜胆に関連しているとわかった?」
「さっき、そちらのダークエルフ様が」

 ネコドローンから光が出て、ダークエルフが空中であぐらをかいている。何一つ、悪びれていなかった。

 オレが考えごとをしている間に、ニョンゴはレクシーに、自分が竜胆の魔女だと明かしたらしい。

「ヒーローは、正体をむやみやたらと広めないもんだ」
「エルフの里に行くんだよ。素性は明かしておいたほうがいいと思ってね。こういうのは、信用の問題だからさ」

 さいですか。ならば、隠し事は抜きでいいと。

 たしかに、エルフがどれだけ偏屈なのか、オレにはわからん。交渉役として、ニョンゴには役立ってもらうか。

 ジェンシャン・ナイトか。いい名前だ。とはいえ、使うとすれば二つ名だな。もっと具体的な名前が欲しい。オレだけの。

「これは、オレたちとアンタだけの秘密だ。守れるか?」
「はい。承知しました」
「着いたな」

 名前問題は、保留にします。まずは、人助けを優先しましょうかね、っと。

 里に着くと、もうほとんどのエルフが死んでいた。息をしているものもいたが、もう助からない。

 モンスターたちが、嬉々としてエルフの子どもを追いかけている。

 とりあえず、最も殺戮を楽しんでいるやつから片付けるか。

「なんだ貴様は、魔王さまの生贄としてとらえたはずのエルフを、連れ戻すとは」

 エルフの剣士の胸を貫いていた貴族風の男性が、こちらを向く。

 見た目からして、おそらく魔族とかそんな感じだろう。二本の角が、やけに仰々しい。

「あれは魔族?」

 ニョンゴに聞いてみたら、やはり魔族で正解のようだ。

「しかもあいつ、幹部クラスだよ」

 貴族っぽいしな。

「ちょうどいい。すばらしい的になる」

 相手を吟味するように、オレはアゴに手を当てる。

「命が惜しくないようだな」

 貴族風の魔族がエルフ剣士から腕を抜く。

「貴様も、このエルフ共のように皆殺しにしてや」
「あ……」

 レーザー撃ったら、頭が半分吹っ飛びやがった。

「やっちまった」
「でも、死んでないからノーカンだよ」

 ホントだ。頭が半分になってるのに、まだこっちを見ている。
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