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第一章 壁役令嬢 ~ここはわたくしに任せて先へお行きなさい!~

第2話 三ターン後に死ぬ令嬢

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『でも、ご安心をマージョリーたん! このトミコ・ダテは、別の神様からあなたを救うようにつかわされた、インテリジェンスウェボンです! 大船に乗ったつもりでどーんとお任せあれ!』

 私の使命は、彼女の死亡ルートを回避させること! マージョリーたんの盾に転生し、この狂ったシナリオを変える!
 シナリオブレイクだけど、いざ仕方ない。最推しのためだもの! 正規ルートも破壊してくれる。

 第一、マージョリーたんを殺す展開を考えた、運営が悪いのだ! 何者かの犠牲に成り立つ脚本は、たしかに盛り上がるかもしれない。

 だが、このゲームは要所要所で人が死にすぎだ。

 あっちのルートではヒロインが外道に純血を奪われて死に、あっちのルートでは、強キャラが洗脳された恋人に刺し殺される。

 プレイヤーにその手を汚せというのか?

 だが、問題はその後だ。

 プレイヤーに人気のキャラは、例外なく天に召されてしまう。あとはまったく感情移入できない「誰てめえ」な人物ばかりとなり、プレイヤーのやる気を削ぐ。ギャラの都合で俳優が離脱しまくった海外ドラマしかり、スターほど即退場するデスゲーム系ドラマしかり。

 実際、「推しが死んだから、もうやらない」という離脱者を量産した。
 この意見に対して、シナリオライターは、「推しが死んだくらいで離脱する@プレイヤーは軟弱」と一蹴する。

 これが拍車をかけ、結局ゲームはサ終、つまりサービス終了を迎えた。


 私は、サ終のショックで死んだのである。


 気がつくと、私は盾に転生していた。
 私を復活させてくれた女神は、『人外転生』を提案されて驚いていたけど。

「人死にで盛り上げたらええんやろ」的な方向性など、三流以下の脚本だ! 適当な采配の人死に展開など、ゴミの発想! どのキャラを生かせば最良のシナリオになるか、それを考えてから殺す判断をすべきだろうが! 

 だから私は、死亡フラグのあるキャラをすべて助ける。
 人死に至上主義なこの幻想ゲーを、ぶち殺す! 徹底的にな!
 シナリオブレイク上等! この転生は、お天道様が与えてくれたチャンスなり!
 悲劇のヒロインの盾に転生するとは思わなんだが!
 まあいい。私とマージョリー嬢は、二人で一人! 
 とにかく私は、令嬢のおそぼにずっといたい!
 人に転生しても、どうせなにもできないだろう。お友だちになったところで、私のような凡人は足手まといさ。
 ならばいっそ、インテリジェンスウェポンとなって、全力でお守りする! 二人で協力して、生き残るんだ!


 ワイバーンが爪を地面に突き立てて、ドクロの兵隊を次々と召喚する。
 その攻撃も、マージョリーたんは防がなければならない。

「くっ、数が多すぎますわ!」

『マージョリーたん。あなたはこのゲー……コホン。陣営におけるタンクという職ですね』

 タンク……つまり、最前線で敵のヘイトを稼ぎ、攻撃を自分に集中させるのが仕事である。

 マージョリーたんの防護を受けているから、仲間の騎士や魔術師は雄々しく攻撃を続けられるのだ。

 その分、マージョリーたんの負担はデカい。

「任せて。私の考える通りに動いて!」

「ダテさま、参りま――」

『いえ。もっと命令口調でOK!』

「……動けぇ!」

 マージョリーたんは、私を足に装備した。

『イエアアアアア!』

 狂気に満ちた私は、目の前にいた敵を蹴り飛ばす!
 モンスターがワイバーンに激突した。ボスがダメージを受ける。

『よっしゃ、ゲームどおり!』

 私は、心の中でガッツポーズを取った。

「盾を踏んづけた足で蹴り飛ばすとか、わたくしには考えられない戦法ですわ」
 
 ゲームと同じなら、やることは一つ。
 ワイバーンをマージョリーたんでブチのめし、シナリオブレイクさせるだけ!
 主人公が成長しなくなるけどね。
 本来なら、マージョリーたんが死んだことで、主人公が覚醒する。いわゆる「イヤボーン」という展開になるのだ。

 私に言わせれば、反吐が出る。

 一度くらいなら、イヤボーン展開はOKだろう。しかし、このゲームは「イヤボーンしなければ、イーデンがロクに成長しない」のだ。

 こんなクソシナリオがあろうか? 手抜きにも程がある。

 脚本家いわく、「とにかく、主人公をひどい目に遭わせたかった」とのこと。

 目の前で、自分を守ってくれた相手が死んで、その遺志を引き継いだ少女が主人公となる。しかし「令嬢を死に追いやった張本人」として、仲間からは受け入れてもらえない。死んだ仲間の装備を引き継いでいることも、主人公を孤立させる要因となった。それでも懸命にがんばる姿に、きっとプレイヤーは涙するはずだと。

 結果は、総スカンを食らっていた。ユーザーのヘイトが、かえって仲間たちに集まってしまったのである。仲間がムダに反発したり、いつまでたっても和解できなかったからだ。

『来ました、マージョリーたん。あれがあなたの死因です』

 孤児院に取り残された子どもたちと、お姉さん的存在である少女、イーデンちゃんだ。

 彼女をワイバーンの攻撃からかばって、マージョリーたんは天に召されてしまう。

 まずは、そのフラグをへし折ってくれる!
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