クイズ「番組」研究部 ~『それでは問題! ブタの貯金箱の正式名は?』「資本主義のブタ!」『はあっ!?』~

椎名 富比路

文字の大きさ
5 / 48
第一問 日本で初めてコーヒーを飲んだ、歴史上の人物は? ~クイズ番組研究会、発足~

アシスタントのやなせ姉

しおりを挟む
 ウエーブのかかったブロンドの長い髪から、女性特有の香りが漂う。

 僕より高い身長と、嘉穂さんよりボリュームのある胸部を押しつけてくる。

「ぐへえ!」と、僕は呻いた。

「晶ちゃん晶ちゃん晶ちゃん寂しかったーっ! スリスリスリスリ」

 遠慮なく、やなせ姉が僕のほっぺたに頬ズリする。
 僕以外の女性陣が、唖然とした顔になった。

「ちょっと、やなせ姉、やめてくれよ! 人が見てるだろ! 魂が抜けたような顔になっているじゃないか!」
「いいもーん。晶ちゃんはワタシの大事な大事なおもちゃなんだからー」

 やなせ姉は僕から離れようとしない。

「おお。おっす、やなせ姉」と、のんは見知った顔でやなせ姉に挨拶をする。
「こんにちは、のんちゃん。変わらないねー」
「あれ、二年の来住きすみ副部長、ですよね?」

 嘉穂さんが、やなせ姉に問いかける。
 やなせ姉は「はーい」と返事をした。僕から離れて正座する。

「来住やなせ一七歳。私立長戸学園の二年五組でーす。ちなみに晶ちゃんとは家が隣で、幼馴染でーす! クイズ研究部の副部長でしたーっ! イエーイ!」

 天にVサインを突き上げ、やなせ姉はハイテンションで自己紹介した。

「イエーイじゃねーよ! 部活はどうしたんだよ?」

 でしたって言ってたから、まさかとは思うけど……。

「うん。辞めた」

 あっけらかんと、やなせ姉は答えた。

「はあ!? あんた副部長だろ? やめてもいいのかよ?」
「いいもーん。ワタシの勝手だもーん」
「なんでまた、そんな無茶を」

「だって、わたしがクイズ研に入ったの、晶ちゃんが目当てだったんだもん。晶ちゃんの司会でワタシがアシスタントでずっとイチャイチャしようって思ってた。それなのに、突然クビになっちゃうしさぁ。だったら、ワタシも辞めるって部長に言ってきた」

 ニコニコと、元副部長様は回答する。

「副部長の後釜、どうするんだよ?」
「ワタシ、しーらない」

 やなせ姉がそっぽを向く。

「先生、どうするんですか?」

 名護先生は、スマホで誰かと連絡を取っている。

「来住の退部届が、受理されたらしい」

 スマホを切った後、先生は溜息をついた。
 当の本人は未だにニコニコしており、何も悪びれていない。

「……今度こそ、メンバーが揃ったな。じゃあ、今日は解散するか」

 特に反対意見も出なかったんで、その日は解散となる、はずだった。


「じゃあ、さっそく番組作るか」


 この人は、いきなり何を言い出すんだ?

「先生、ぶっつけ本番ですか? 準備もできていない上、出題者も解答者もいないのに」
「いるじゃんか。お前らが」

 僕は、背後にいる三人組の方を向く。

「そう言ったって、問題もまだできてませんよ」
「出題する問題はクイズ研が用意する。過去問が有り余ってるからな。好きなのを使え」
「けど、出題するクイズのチョイスが」

 問題と言っても、傾向や難易度の調整など、課題は多い。

「とりあえず初めてだから、難易度は易しめにしようかと思うけど」
「うん。初めては優しい方がいいな」

 なぜか、湊は含みのある言い方をする。多分、「やさしい」のニュアンスも違うぞ。

「問題はどういうのがいいだろう。こういうとき、クイズ番組ってどんなチョイスするんだろ?」

 沈黙が襲う。早くも難航か? と思われた。

「あのさ、提案なんだけど」

 そう言って、手を挙げたのは湊だ。

「第一回なんだろ? だったら、『初めて』にちなんだ問題に限定するってのは?」

「いいな、それ。採用だ」

 競技のルールは、シンプルに早押しとなった。一〇ポイント選手。多くポイントを勝ち取った人が優勝とする。

「優勝賞品とかは、どうしよう。あんまり高額なものとか、特殊な特典とかはあげられないよ?」

 僕にできるコトなんて、せいぜい食券をおごるくらいだ。

「別に、いらないんじゃないかな?」

 下手に競技性を設けると、難易度が高くなる。ならばいっそ祭りとして楽しもうと、実にエンジョイ勢ならではの趣旨に落ち着いた。

「それだと、盛り上がらなくないか?」
「ブラウン管の向こうにいる生徒たちが、ウチらより盛り上がってもらえればいい」
「うむ、一理あるな」

 他の三人はどう思っているのか。

「オイラは欲しいな、優勝賞品。あったら面倒だって言うなら、多くは求めないぞ」
「何もなくても、楽しそうですぅ」

 OKのようだ。ならば、初回は何も賞品や特典は設けないとする。

「本当にそれでいい? やなせ姉はどう?」
「晶ちゃん、ひとまず一回限りの企画じゃないだろうから、優勝回数の方をカウントして残しておいたら?」

 回数を繰り返していって、何か面白い商品の企画が思いついたとき、採用する。
 なるほど、それがベストかも。

「あ、はいはいはい!」と、のんが威勢のいい声を発して手を挙げる。

「何だ、のん?」
「お客さんに誰が勝つか、賭けてもらうのは?」

 オーディエンスを味方につける視聴者参加型番組か。TV番組でもよくやっている。いかにも、クイズ番組的なアイデアだ。

「あー、それもいいけど、ナシでお願い」

 湊が反対意見を出す。意外だったな。一番ノリノリだと思ったんだけど。

「なんでだよ。いい考えだと思うけど」

「ボケられないじゃん」

 そっちが重要なの!?

「お前、ボケ回答する気か?」
「その方が面白いじゃん」
「面白いってお前……やる気ないって言われないか?」
「真面目に答えるのは他の人に任せるよ。ウチは商品なんか興味ないし、成績にだって拘ってないから」

 湊のような、こういうタイプもいるのだな。芸人気質というか。

「ムチャクチャ重要だよ、ウチにとっては」

 湊にとって優先されるのは、勝ち星より面白解答らしい。

「でも、優勝商品も分からないって、お客のモチベーションが上がらなくないか?」
「じゃあ晶ちゃん、『優勝すればわかります』って視聴者に含ませておけばいいよー」

 今まで黙っていた元クイズ研副部長が提案をする。

「結局、優勝してもショボいプレゼントが待ってるよ、って寸法を使うね。要はクイズが楽しかったらいいワケじゃん。プレゼントなんて張り切るきっかけに過ぎないんだからね」

 さすがだ。クイズ研の副部長として企画や事務を務めていただけのことはある。やなせ姉は昔から、企画力が高かった。そこが副部長に抜擢された理由でもある。

 何が商品でも伏せておける、ナイスなアイデアだ。

 一通りの意見が出そろい、ようやく会議は終了した。

 部活解散後、僕は先生からクイズの資料を受け取り、家で作業に取りかかる。

 どんな番組になるのだろう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...