クイズ「番組」研究部 ~『それでは問題! ブタの貯金箱の正式名は?』「資本主義のブタ!」『はあっ!?』~

椎名 富比路

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第三問 『ブタの貯金箱』の正式名称は? ~クイズ王 対 出題者の実姉~

姉襲来

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「うう。そんなバカな」

「オイラが赤点ギリギリなんて……」

 クイズ漬けのツケが回った。
 中間試験の結果を睨みながら、僕はのんと同じポーズで頭を抱える。

「あのさぁ、テスト前日にクイズの練習って……」

 湊にまで呆れられる始末だ。

「じゃあ湊の方はどうだったんだ?」
「普通に勉強したよ」

 湊が解答用紙を見せてくる。
 本当だった。普通にいい点を取っている。
 学年一位である嘉穂さんには及ばないものの、湊のクラスでトップだなんて。

「くそう。もっとボケ解答しろよ」
「生活がかかってる試験でボケ解答したら本格的にマズいでしょ」
 
 この女にだけは、マジレスで返されたくない!
 
 長戸高校に入れる段階で、勉強はそこそこできるレベルだ。
 とはいえ、入ったら入ったで要求されるレベルは高い。
 
 僕の成績は中の中、及第点中の及第点である。
 さすがに、クイズに傾倒しすぎたか。
 時間の大半を問題作りに費やしているもんなぁ。
 
 勉強法を改める必要があるかな、と考えていると、
 
「おーす。後輩諸君」

 番組研に、珍客が現れた。昌子姉さんだ。ビニール袋を手に持っている。

「ほい、これ差し入れ。最近頑張ってるじゃん」

 といっても、中味はコンビニで買ってきた安いジュースなのだが。

「ありがとー、昌子ちゃん優しいー」

 やなせ姉が率先して、袋からパックの野菜ジュースをもらう。

「全然変わらないね、のんは」
「昌子姉もなのだ」

 のんも袋からパックジュースを手に取った。

 続いて湊がグレープフルーツのジュースを取り出す。

「どうも、ゴチです」
「あんたの解答、いつも楽しみに見てるよ。さすが、関本ナギサの血を引き継いでるなーって」
「え、ちょっと待て。関本ナギサって?」

 美しすぎるお笑い芸人じゃないか。
 クイズ番組で、キレのいいボケ回答をすることで有名な。
 それが、湊と何の関係があるって言うんだ? 血を引き継いでるって?

「言ってなかったね。実はウチ、関本ナギサの娘なんだよね」
「えええーっ!?」

 部員全員が、信じられないという顔をする。

「だよね。みんな信じないよね。だから黙ってたんだけど。ちなみに、名護が父親の姓で、関本は母の旧姓なんだよ」
 
 関本ナギサと湊は、全く似ていない。
 パーツは多少似通っている部分はあるが、彼女はもっと女性っぽいと思う。
 関本ナギサからは、湊や名護先生のようなボーイッシュらしさを感じない。
 が、言われてみれば、関本ナギサと湊は、どこか雰囲気が見ているのだ。
 ボケのタイミングや、解答のセンスなど、関本ナギサと似通っている部分が多数ある。
 
 関本ナギサを見て覚えた既視感は、そこに違いない。
 言葉で言い表せない、スピリッツ的なイメージといえばいいのか。

「なんだい、ジロジロ見て。ウチの後ろに背後霊でもいるみたいじゃないか」
「いやいや、大袈裟だろそれ」

 こういう部分、といえばいいかな。

 関本ナギサのファンであり、湊からも何かのシンパシーを感じたのだろう。
 昌子姉さんと湊は、すぐに打ち解けた。
 やなせ姉も、のんも、昔から知り合いなので、姉さんと仲がいい。

 しかし、部長に近づこうとしない人物が一人。

「あ、あの、ありがとうございます……」

 嘉穂さんは、ジュースを受け取って、モジモジしていた。まだ、昌子姉さんに慣れていないようだ。

「あー、なんかごめん。もう慣れてくれたかなーって思ったんだけどさ」
 バツが悪そうに、姉さんは頭を掻く。

「いいえ、こちらこそっ。わたしが情けないばっかりに気を遣わせてしまったようで」

 手をワタワタさせて、嘉穂さんは犬のように首を振り回す。

「じゃあ、問題。トタン屋根の三から六倍の強度を持ち、主にコンビニの屋根などに用いられる、アルミニウムを混ぜた『亜鉛めっき鋼板』を、なんと言う?」

 不意に、昌子姉さんが問題を投げかける。

 まさか抜き打ちでそんな事をするなんて思ってもに見なかった僕は、呆気にとられた。

 やなせ姉も、目を丸くしている。
 のんは「おーん」とうなり出す。

「なんだろう、超合金?」
「それはガスタービンのブレードにも使われる合金のこと。別名スーパーアロイ」
「なるほど。おもちゃの超合金って凄いんだね」

 違うわい。

「そっちは別の超合金だよ。材質も違うし」

 湊が信じそうだったので、僕が代わりに訂正した。言うなれば、アレは商品名である。

「ぬわー、降参なのだー」

 湊は不正解である。のんは降参した。
 ただ一人、小さく手を挙げている人物が一人だけ。嘉穂さんだ。

「はい、嘉穂ちゃんっ」

 昌子姉さんが、嘉穂さんを指差す。

「ガルバリウム鋼板ですか?」

「さっすが! 正解だ」

 満面の笑みを浮かべ、姉さんは満足そうにしている。

「ガルバニウム……何か強そうなのだ! 合体ロボットみたいなのだ!」

 語感が気に入ったのか、のんがハシャギ出す。

「さすがクイズに関しては強いね。こういう時にもすぐ分答えちゃうんだもん」
「い、いえ……」

 ともあれ、僅かに嘉穂さんと姉さんの距離は縮まったかな……と思っていたが。
 笑っている姉さんとは対照的に、まだ嘉穂さんの表情は硬い。

「じゃあ、あたしはクイズ研の部室に戻るから」

 引き戸を開け、姉さんは廊下に出た。振り返って、嘉穂さんに問いかける。

「また来てもいい? わかんない事があったらまずいから、色々聞きたいだろうし」

「はい是非!」

 嘉穂さんは言うものの、ちっとも来て欲しそうな顔をしていない。
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