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第四章 自販機でどの飲物を買うかで、○○度が丸裸に! ~クイズ番組研究部 VS FBI!~

番組研究部 対 FBI

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「さあ、始まってしまいました、クイズ番組研究部! お待たせ致しました! 司会はわたくし、福原ふくはら 晶太しょうたでございます!」

 僕が自己紹介を終えると、パーソナリティの女子生徒三人が拍手をくれた。

「アシスタントの来住きすみ やなせです。よろしく~」

 続いて、やなせ姉があいさつをする。

「では、解答してくれる選手をご紹介致します。最も僕に席が近い女生徒は、津田つだ 嘉穂かほ選手!」

「よろしくお願いしまぁす」

 ポワンとした挨拶で、会場の雰囲気が和む。

 
「その隣にいるのは、小宮山こみやま のん選手」

 小学生のようだが、れっきとした女子高生だ。

「よっ、待っていたぞ、しょーた!」

 のんはお祭り気分で、解答席である学習机に身を乗り出す。
 その拍子に、早押し機にお腹が当たった。

「ぽーん」と、情けない早押し音が鳴る。
 
「落ち着きなよ、のんたん」
「今週は妙におとなしいですね、名護なご みなと選手!」

 見た目はキャリアウーマンを思わせる、ショートヘアの少女だ。

「クイズになったら、またいつも通りだから」

 ボケ解答に走らなければ、普通に才女なのだが……。

「本日は少し趣向を変えましてですね。皆さんに推理をしていただきたいなと、題して、『クイズ番組研 VS FBI』!」

「FBIだと!?」
「知っているのか、湊っち!」

 のんと、湊が寸劇を始めた。いつものことだ。

「正式名称は連邦捜査局。テロやスパイ対策だけでなく、政治家の汚職も暴くというアメリカの警察機関!」
 
 まんまウィキの引用ありがとう。

「今回、皆さんに挑戦していただくのは、なんと! FBIの採用試験です!」

「なんだと!?」
「それはまあっ!」
「うわー、楽しそう!」
 
 のん、湊はおろか、嘉穂さんまでも驚きのリアクションをくれた。

 問題読み兼アシスタントのやなせ姉が、解答者たちにノートサイズのホワイトボードを配る。
 僕の幼なじみであり、クイズ番組研究部、唯一の二年生だ。
 常に笑顔を絶やさないので、目が開いているのかどうか分からない。

「このボードに、回答を書いてください」
「えらい難しそうな題材を選んだね、福原。難問はイヤじゃなかったのかい?」
 
 湊の指摘どおり、僕は知識一辺倒なクイズ番組には否定的だ。
 
 
「いい質問ですね、名護選手。大丈夫。この問題は、頭の回転の速さ、機転が利くかどうかで解答できます。つまり、推理力さえあれば誰でも解けるんですよ! 特別な知識は必要ありません!」
 
  
 確かに、特務機関と言うだけあって、FBIの入局テストは洒落にならないほど難しい。倍率は、およそ二〇倍と聞く。
 また、頭がいいだけでは不採用だ。精神力や運動神経も問われる。

 我が番組研究部が、どれだけ頭が柔らかいか、それを試そうと思ったのだ。
 
「それでは、FBI エージェント・テストに挑戦していただきましょう!」

 やなせ姉にマイクを振って、問題を読み上げてもらう。



◇ * ◇ * ◇ * ◇

 第一問
 
 とある殺人者は、誘拐してきた犠牲者を毒殺する手口で知られています。
 その殺人者は犠牲者の前に、二杯の水と、二つのカプセル剤を用意していました。

「カプセルの片方に、毒が入っている。そのうち一つを選択して、飲め。生き残れたら勝ち」

 という手口で、殺人を行っていたそうです。
 犠牲者は常に死に、殺人者は常に生き残りました。なぜでしょう?

◇ * ◇ * ◇ * ◇

「はい、お書きください」

 全員が、フリップに字を書き始めた。


「できあがった人からお出しください。おっと、のん選手早い!」

「これだ。『解毒剤を飲んでいた』」

「違います」

 解毒剤を飲んでいたとして、胃の中で溶けてしまう。無意味だ。


「湊選手も出したぞ!」

『このカプセルは実は睡眠薬で、相手を眠らせてその間に殺した』

 と書かれている。

「うわ、まとも!」

 明日、雨が降りそう。

「推理問題はボケづらいね」

 さすがの湊も、ボケづらいらしい。いやいや、ボケなくていいから! 

「わかりました。『相手側の水の方に、毒が入ってあった』」
「嘉穂さん、正解!」
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