クイズ「番組」研究部 ~『それでは問題! ブタの貯金箱の正式名は?』「資本主義のブタ!」『はあっ!?』~

椎名 富比路

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第五問 ガウチョは何語? ~クイズ番組研究部の休日~

問題「ガウチョとは、何語?」

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 食事を終えて、二度目の取材を行うことに。

「どこに行きましょうか?」
「適当にブラブラしよう。考え込んでても、ロクなアイデアしか湧かないよ」

 洋服売り場まで辿り着く。
 高級な物から、手が届きやすい価格の物まで、様々なタイプの衣装を着たマネキンが、ショーウィンドウに並ぶ。
 
「うっふうん」とか言いながらポーズを変えるマネキンまで立っていて。

……って、マネキンって喋ったっけ?

「何やってんの、お前ら」

 格安洋服売り場の試着コーナーの前で、湊とのんがファッションショーをしていた。セクシーポーズのつもりなのか、艶っぽい声を出してはしゃぐ。

「おや、珍しいね。こんな所で会うなんて」
「おお、しょーたじゃん。これ似合う?」

 二人が穿いているのは、お揃いのダボッとした七分丈のパンツだ。

「そのパンツ、何て言うんだっけ?」
「しょーたも知らないのかー」

 あいにくファッションの知識は苦手なんだ。今後の課題かな。
 
「これはなぁ、しょーた……ガチョウパンツだ!」

 思わず、ガチョウが七分丈のパンツを穿いて走り回る映像が浮かんだ。

「ガウチョパンツだよ」

 間違えたのんの代わりに、湊が正解を教えてくれた。
 湊は肩の出たシャツに、キャメルカラーのガウチョを穿いている。
 大胆にもヘソ出しという服装だ。
 帽子のツバの上には、デカイサングラスが鎮座している。
 
 のんはラグビーの選手みたいな柄のTシャツに、真っ白のガウチョだ。
 例の日本一有名な選手のポーズで決める。

 一歩間違えると一気にダサくなるファッションなのに、二人が着ると絵になるから不思議だ。

「二人とも可愛いです!」
「うん。正直、何も言葉が出ないと」

 事実、とてもよく似合っていた。文句の付けようがない。
 湊の私服姿は初めて見たが、こんなにセンスが良かったのか。
 のんの方も、子供っぽさを残しつつ健康美を醸し出している。
 湊のコーディネート力の賜だろう。

「見とれちゃダメだよ、福原」
「そうだぞー蹴るぞー」
 なんで蹴られないといけないのか?
 
「問題。ガウチョとは、ズバリ何語でしょう?」

 お返しとばかりに、僕は即興で問題を出す。

「ラテン語だぞ!」
「アメリカ語!」

 どっちも不正解!
 なんだよアメリカ語って。
 
「ポルトガル語だ!」

 僕が答えを言うと、「そっちかー。惜しかった」と二人とも悔しがる。
 いやいや、一ミリも惜しくなかったからな!
 
「嘉穂たんも着ていかないかい? 買わなくてもいいから」
「そうですね。せっかくですし」

 ガウチョが置かれているコーナーへと、嘉穂さんが向かう。アップリケが施された、ベージュのガウチョをチョイスした。

 鏡の前で、嘉穂さんがガウチョを腰に当てて考え込む。

「おお、似合うかも」
「ナイスな選択なのだ」

 二人の反応もいい。

「これ、可愛いです。これにします」

 実際、僕もこれは嘉穂さんにはピッタリだと思う。

「ちょっと着替えますね」と、更衣室へ。

 その間、僕は湊とのんに包囲される。

「ところで、お二人は何をしていたのかな?」

 大袈裟に湊が問いかけてきた。

「取材だよ。言っとくけど、やましい事なんてしてないからな」
「誰も聞いてないんだよなあ」

 湊がニヤけ顔をする。
 これは、墓穴を掘ってしまったか。

「昼飯は済んだのかー? オイラ達は先に食ったぞー」
「オシャレなバルで食事したんだ。前菜のバーニャカウダが最高だったな」

 あれって、ニンニクが入ってたよな。女二人だから平気か。
 
「バーニャカウダは何語だ?」

 再度、即興で問題を作り上げる。

「イタリア語!」
「ピエモンテ語!」

 くやしい! どっちも合ってるなんて!

「正解だよ。なんだよピエモンテ語を知ってるとか……」

 バーニャカウダは、イタリアを代表する料理だ。ピエモンテ語で「熱いカウダソースバーニャ」という意味である。


 ああもう! 二人のドヤ顔が、なおさら敗北感を煽る!
 
「ああ、僕らも済ませたよ」
「ここのご飯は全部おいしいからなー」

 のんは至って普通の問いかけをしてきた。
 コイツにとっては僕たちは普通に遊んでる風に見えたのだろうな。

「楽しんでるならいいけどな。オイラたち、邪魔しちゃったかー?」
「そんな事ない。二人だと会話が続かなくってさ。何を話していいか分からない」
「クイズの話でいいじゃん」

 のんの言葉も、もっともなのだが。

「まあ、取材中だからね。でも、コツを教えるとそのまま答えになってしまうから、僕からは話しづらいんだよ」
「難しいな。もう告白はしたのかい?」
「すすす、するわけないだろ!」
「何だぁ。つまんない男だな、キミは」

 ほっとけ! 僕はそういうんじゃないから!

「でも、腹減ってるならちゃんと『腹減ったぞ』って告白しておいた方がいいぞー」

 実に平和的なアドバイスが、のんから飛ぶ。こいつの脳では、色恋ネタはまだ処理しきれないのだろう。

「あのー、お待たせしましたぁ」

 嘉穂さんが、着替えを終えて僕たちに近づく。
 なるほど、こうなるのか。

 アップリケ満載で子供っぽい服でも、童顔の嘉穂さんが着ると実にフィットする。
 ちょっと出ている足首もポイントが高い。
 かわいい。思わず声が漏れそうになった。

「ホラ、ウチの睨んだ通りじゃないか」
「ホントですね。ありがとうございます、湊さん」
「さて、どうする? ウチら、着て帰るけど」
「値札見たら、セール中みたいでめっちゃ安いんですよ。買ってきますね」

 語尾に音符でも出てきそうなトーンで、嘉穂さんがレジに向かう。

「わたしも、着て帰ることにしました」

 ガウチョパンツのまま嘉穂さんが店から出てきた。

「あ、そうだ。あやせ先輩もいるんですよね!」

 突然、嘉穂さんがスマホを出して、やなせ姉を呼び出す。

「あのですね、今からちょっと余興をしようかと思うんですけど、いかがですか? OKですか? はい。ではお待ちしています。西畑くんも是非ご一緒に」

 笑顔で、嘉穂さんがスマホを切る。

「何をやる気だー?」

 のんが聞くと、嘉穂さんがガッツポーズを取った。

「特別部活動です! 晶太くん」

 嘉穂さんが、僕達に自分の考えたことを説明する。
 楽しそうなアイデアに、僕も手応えを感じた。
 
「それ、面白いかも知れない」

 実に面白い企画を、嘉穂さんはやろうとしている。

「でしょ? 課外授業で開放的になりますし」
「嘉穂たん、やるね。実に面白そうだよ」
「楽しみなのだ!」

 今日の成果も兼ねて、ひとつクイズ番組をやってやろうじゃないか。
 僕は、慶介に連絡を入れる。

「あ、慶介? スマホでいいから、撮影係を頼めるか? よかったOKか。じゃあ、合流しよう。場所は……」
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