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第六問 ウイスキーの専門家のことを、なんと呼ぶ? ~最強のライバル襲来~
ボケ回答者の誇り
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「やなせ先輩、ごめん」と、湊がやなせ姉に詫びる。
「何が?」
対して、やなせ姉は気にしていない様子。
「やなせ先輩が怒ってくれなかったら、ウチがあの人に噛みついてた」
「そっかー。そう思われちゃったか」
クイズ勝負をふっかけてしまった事で、やなせ姉なりに責任を感じているようだ。
「そういえば、関本ナギサって、数年前からクイズ番組に出場しなくなったよな。何かあったのか?」
のんが無邪気に質問する。
「あれ、ウチら子どもたちが、周りからおちょくられ始めたのが原因なんだよね」
ボケ回答ばっかりするから、名護家は一時期、周りから少しからかわれてた時期があったという。
「中でも、岬姉ちゃんは先生目だろ? 教育実習の時に生徒にバレてさ」
教え子たちからの威厳をなくしてしまった。
それ以来、岬先生は母とはあまり口を利かないとか。
子供たちが多感な時期を迎えていたので、湊の母はそれを気に病んで、クイズ番組の出演を控えたそうだ。
表舞台からも姿を消し、しばらく主婦業に専念していたらしい。
「ウチは、母は嫌いじゃなかったんだ。むしろ誇りに思ってた。将来は、母のようになろうと思ってる。ウチは、母さんに芸人をやめて欲しくなかった。だから、ウチが母さんの意志を継いで、ボケ道を極めようとしてる」
これで謎が解けた。
彼女のボケに対する拘りの正体は、リスペクトだったのだ。
ボケ解答にはある種のスピリッツというか、プライドがあったのだろう。
やなせ姉の言葉を借りれば、芸人魂と表現すべきか。
「だからさ、いい加減な気持ちでお笑いやってるって思われたとき、悔しくてさ。何も知らないくせにってカッとなっちゃった」
頭を掻きながら、湊は顔を赤らめた。
「まったく先輩の言うとおりなのにさ、なに熱くなってるんだろ、ウチ?」
いいながら、湊が自らをクールダウンしていると分かる。
その姿は見ていて、自分のことのように痛々しかった。
ずっとこういう風に、我が身に言い聞かせていたのだろう。
お笑いをやるとは、こういう事態と向き合うことが多いのかも知れない。
「お前は、誇っていいよ。湊」
驚いたような表情を、湊は浮かべた。
「だって、お前のお母さんってさ、自分にプライドを持っていたんだろ? でもそれが前面に出すぎてしまうと、作ってるってバレちゃって、興が冷める。だから、面白おかしく振る舞おう必要があった。それって悪いことかな?」
少なくとも、僕にはそう思えない。
「湊は、お母さんの生き様が好きなんだよね? だったら胸を張っていいと思うよ」
黙って聞いていた湊の顔が、少し和らぐ。
「どうしたんだよ」
いつもの軽口はどうした? 僕に向ける冷めた態度もなりを潜めているし。
「そういうのは、別の誰かさんに言えっての」
「な、なに言ってるんだよ。心配してるんだぞ!」
「わかってるって。ありがとね、福原」
湊が拳を突き出す。
息を合わせ、僕は湊とゲンコツを突き合わせた。
「それにしても、なんであの先輩は、嘉穂に拘るのだ?」
「聖城先輩は中学一年生の時、嘉穂のお母さんに負けたんだよ」
その時は、女王決定戦。
聖城先輩は若くして女王候補だった。
が、あと一点というところで、聖城先輩は土を付けたのである。
先輩は再戦を求めようとしたが、嘉穂さんの母親は引退してしまった。まるで、気が抜けてしまったように。
「だから、嘉穂さんに勝つことで、雪辱を果たそうとしているんだよ」
「わたしはお母さんじゃありません。お母さんのように強くなんてないのに」
「けど、先輩はそう思ってないよ」
嘉穂さんは、辛そうな顔をする。
「無理して強くなろうとする必要はないよ。今出せる力を出し切ろう」
「はい」と、嘉穂さんは力ない声を出す。
こういうとき、僕はどうしようもなく頼りない。
自分の情けなさが嫌になる。
「何が?」
対して、やなせ姉は気にしていない様子。
「やなせ先輩が怒ってくれなかったら、ウチがあの人に噛みついてた」
「そっかー。そう思われちゃったか」
クイズ勝負をふっかけてしまった事で、やなせ姉なりに責任を感じているようだ。
「そういえば、関本ナギサって、数年前からクイズ番組に出場しなくなったよな。何かあったのか?」
のんが無邪気に質問する。
「あれ、ウチら子どもたちが、周りからおちょくられ始めたのが原因なんだよね」
ボケ回答ばっかりするから、名護家は一時期、周りから少しからかわれてた時期があったという。
「中でも、岬姉ちゃんは先生目だろ? 教育実習の時に生徒にバレてさ」
教え子たちからの威厳をなくしてしまった。
それ以来、岬先生は母とはあまり口を利かないとか。
子供たちが多感な時期を迎えていたので、湊の母はそれを気に病んで、クイズ番組の出演を控えたそうだ。
表舞台からも姿を消し、しばらく主婦業に専念していたらしい。
「ウチは、母は嫌いじゃなかったんだ。むしろ誇りに思ってた。将来は、母のようになろうと思ってる。ウチは、母さんに芸人をやめて欲しくなかった。だから、ウチが母さんの意志を継いで、ボケ道を極めようとしてる」
これで謎が解けた。
彼女のボケに対する拘りの正体は、リスペクトだったのだ。
ボケ解答にはある種のスピリッツというか、プライドがあったのだろう。
やなせ姉の言葉を借りれば、芸人魂と表現すべきか。
「だからさ、いい加減な気持ちでお笑いやってるって思われたとき、悔しくてさ。何も知らないくせにってカッとなっちゃった」
頭を掻きながら、湊は顔を赤らめた。
「まったく先輩の言うとおりなのにさ、なに熱くなってるんだろ、ウチ?」
いいながら、湊が自らをクールダウンしていると分かる。
その姿は見ていて、自分のことのように痛々しかった。
ずっとこういう風に、我が身に言い聞かせていたのだろう。
お笑いをやるとは、こういう事態と向き合うことが多いのかも知れない。
「お前は、誇っていいよ。湊」
驚いたような表情を、湊は浮かべた。
「だって、お前のお母さんってさ、自分にプライドを持っていたんだろ? でもそれが前面に出すぎてしまうと、作ってるってバレちゃって、興が冷める。だから、面白おかしく振る舞おう必要があった。それって悪いことかな?」
少なくとも、僕にはそう思えない。
「湊は、お母さんの生き様が好きなんだよね? だったら胸を張っていいと思うよ」
黙って聞いていた湊の顔が、少し和らぐ。
「どうしたんだよ」
いつもの軽口はどうした? 僕に向ける冷めた態度もなりを潜めているし。
「そういうのは、別の誰かさんに言えっての」
「な、なに言ってるんだよ。心配してるんだぞ!」
「わかってるって。ありがとね、福原」
湊が拳を突き出す。
息を合わせ、僕は湊とゲンコツを突き合わせた。
「それにしても、なんであの先輩は、嘉穂に拘るのだ?」
「聖城先輩は中学一年生の時、嘉穂のお母さんに負けたんだよ」
その時は、女王決定戦。
聖城先輩は若くして女王候補だった。
が、あと一点というところで、聖城先輩は土を付けたのである。
先輩は再戦を求めようとしたが、嘉穂さんの母親は引退してしまった。まるで、気が抜けてしまったように。
「だから、嘉穂さんに勝つことで、雪辱を果たそうとしているんだよ」
「わたしはお母さんじゃありません。お母さんのように強くなんてないのに」
「けど、先輩はそう思ってないよ」
嘉穂さんは、辛そうな顔をする。
「無理して強くなろうとする必要はないよ。今出せる力を出し切ろう」
「はい」と、嘉穂さんは力ない声を出す。
こういうとき、僕はどうしようもなく頼りない。
自分の情けなさが嫌になる。
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