クイズ「番組」研究部 ~『それでは問題! ブタの貯金箱の正式名は?』「資本主義のブタ!」『はあっ!?』~

椎名 富比路

文字の大きさ
36 / 48
第六問 ウイスキーの専門家のことを、なんと呼ぶ? ~最強のライバル襲来~

女神だって怒る

しおりを挟む
 やなせ姉は、おっとりしていそうに見えて、嫌いな人に対しては冷たい。
 意外と言う事は言うのだ。

 番組研のメンツが、やなせ姉の豹変ぶりに、呆気にとられていた。

「来住副会長、あなたは黙ってて」
「黙りませんよ」
 ちゃぶ台に頬杖をつきながら、聖城会長を見上げる。
 
「だいたい、あんたが試合に集中したいっていうから、昌子だってやりたくない部長までやってるんじゃないですか」

 聖城先輩の繭がピクリと動く。

「公私混同しているのは、どっちなんだか」
「私がいつ公私混同したって言うの!?」

 先輩も負けていない。やなせ姉に食ってかかる。

「いつって、いつもじゃないですか。部活は私物化する。面倒事は後輩に押しつける。その実、自分は先輩なのに後進は育てない」
「生徒会長の仕事は、まともに取り組んでるでしょ?」
「内申書に響きますからね」

 まるで日頃の鬱憤を晴らすかのように、やなせ姉はまくし立てた。
 こんな鬼気迫るやなせ姉は、珍しい。
 いつもは『長戸高の女神』と言われて、癒しクイーンとして印象付いているのに。

「だから、私が直々に、津田さんを育てようとしてるじゃない!」
「津田さん『は』、の間違いじゃないですか? 才能ありますから。我々は才能ないし」

 ぐ、と聖城先輩は絶句し、「そこまで言ってないでしょ?」とフォローを入れる。

「わたし、先輩に指導していただいても、強くなれる自信がありません」

 嘉穂さんの言葉は、弱気がら出たというより、拒絶しているように聞こえた。
 この部を、離れたくないのだろう。

「やってみなければ分からないわ。早押しのタイミング、問題の予想方法、より高度な技術さえ身に付ければ、今以上に強くなるわ」
 
 番組研とは正反対の理想だ。 確かに強くなるだろう。
 しかし、その先に何があるのか。
 強くなるだけがクイズとでも?

「強い事は絶対ですかぁ?」

 やなせ姉は容赦がない。余程腹に据えかねていたのだろう。

「あなたのような外野には分からないわ」
「外野だから分かるんですよ。だから辞めたんですもの。この部には未来がないって」

 ちゃぶ台を、やなせ姉がドンと叩く。

「嘘だあ。しょーたがいないからじゃん」
「そうそう。福原がいないなら、確かに未来はないよね」

 瞬時に、二人からツッコまれる。

「実際、晶ちゃんが最優先事項だったけれどっ。もう、カッコつけさせてよねっ」

 いい感じに緊張がほぐれた。

「可愛い男の子に走るなんて、あなたらしいわね」
「そうなんです。弟のように可愛いんです。晶ちゃんは」
 
 遠慮知らずなやなせ姉の両腕が、僕を引っ張って抱きしめる。
 ちょっと、もうちょっと力を緩めて。苦しい。
 
「どいつもこいつも欲望に忠実ね。そこにいる芸人の娘なんて」

 珍しく、湊が険しい表情を見せた。

「芸人の娘さんが何だって言うんです?」

 湊が動く前に、やなせ姉が聖城先輩に突っかかる。

「関本ナギサはそこそこいい大学を出てるんですよ?」
「だったら、どうしてその知識をクイズに活かそうとしなかったの?」
「芸人魂ですよ。芸人魂」

 興奮気味に、やなせ姉が自分の胸を叩く。

「自分の頭の良さより笑いを取ったんです。芸人なら、当然の行為だと思いますけど?」

 精一杯に、やなせ姉が湊の母をフォローする。

「魂でクイズには答えられないわ」

 聖城先輩には通じなかったようだが。

「どうしても、あなたたちは津田嘉穂さんをクイズ研には戻したくないのね?」
「もちろんです」
「そこの皆さんも」

 のんはあからさまに敵意を燃やし、湊は黙って怒りを抑えている。

「そういうワケだけど、津田嘉穂さん、あなたの意見を聞きたいわ。クイズ研に戻りたいか、このお笑い部に残りたいか」
 
「お笑い部とは何だ、お笑い部とは!」

 のんが立ち上がる。

「わたしは残りたいです!」

 両手で机を叩き、嘉穂さんが興奮気味で立ち上がった。
 のんでさえ、嘉穂さんの気合いに圧倒されて席に着く。

「わたしは、この部活が好きです。だから、この部を脅かす存在とは、ぶつからないといけないのかな、って思います」

 嘉穂さんは、全力で言葉を投げつけた。理不尽な要求には負けない、という強い意志が感じられる。

 聖城先輩は、ため息をつく。

「じゃあ、こうしましょう。私とクイズ対決をするの」

「どうして、そうなるのさ?」
 湊の問いかけに、聖城先輩はフフンと調子を取り戻す。

「知らないの? 津田嘉穂さんは、日本のクイズファンなら知らない人はいないと言われている女性の娘さんなのよ」

 僕も知っている人だ。

 嘉穂さんが、机の下で拳を握るのが見えた。
 それは恐怖なのか、それとも強い人と当たるという武者震いなのか、僕には分からない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...