39 / 48
第六問 ウイスキーの専門家のことを、なんと呼ぶ? ~最強のライバル襲来~
問題 ウイスキーの専門家を何という?
しおりを挟む
『問題。メイナード・ファーガソンが手がけたアメリカ横断――』
ここで、嘉穂さんがボタンを押した。聖城先輩よりも早く。
「スタートレックのテーマ!」
祈るような、嘉穂さんの視線が僕を突き刺す。実際、胸の前で祈るように手を組む。
しかし、僕は無情な返答をしなければならなかった。「残念!」
嘉穂さんの身体が、崩れ去る。
『アメリカ横断ウルトラクイズのメインテーマは、二つの楽曲を使用しています。一つはスタートレックのテーマ、で・す・が!』
番組研に、嘉穂さんに、この言葉を贈らなければならないとは。
再度ボタンが押された。
解答権を得たのは、やなせ姉だ。
「だったら、チシャ猫のウォーク!」
問題を全て聞き終えてから、悠々と答える。もちろん正解だ。
番組研の四人がハイタッチをする。
久々に番組研究部側が回答したためか、会場がまた活気を取り戻す。
いや、かつてない盛り上がり方だ。
聖城先輩が、天井を見上げ、ふう、と息を整える。仕切り直しといった風に。
『問題。処女作は、「キャンベルのスープ缶」。一九六〇年代のアメリカを代表するポップアートの芸術家は?』
プレッシャーの中、湊がボタンを押す。
聖城先輩は動かない。
どうせボケるのだろう。僕もそう考えていた。
湊は、この局面でもボケる。
僕はそう踏んでいた。
ピンチこそ楽しむ女性だと。
「アンディ・ウォーホル」
これがなんと正解。
湊だって、やろうと思えばまともに答えられるんじゃないか。
『名護選手は、芸能・音楽ジャンルが、お得意なんですか?」
「うーん。知ってるけど詳しいってわけでもないなー」
『その割には、早く解答していましたが?』
「いや、ボケる要素がない問題だったから」
湊の解答基準は、知っている問題かどうかより、ボケやすい答えかどうからしい。
しかし、真面目に解答した。
こいつも部活を存続させようと必死なのだろう。
「それに、こういうときはさ、真面目に答えた方がウケるんだって」
『お前、マジでブレないな!』
こういう局面においても、湊は面白いかどうかを優先する。
その拘りは危なっかしいが、今はその貪欲さが実に頼もしい。
『さて、名護選手、いつものおちゃらけた調子を捨てて、真剣モードですが』
「いやいや、もう限界。わかんないよ」
冷や汗をかきながら、頼りないことをいう。
『さて、これで一〇点選手にリーチが掛かった番組研! どうなるのでしょうか!?』
このまま、追い上げていって欲しいが。
「問題。国語辞典『俚言集覧』に記載されている、初夢で見ると縁起がいいもの。一富士、二鷹、三茄子。では、四は?」
ここで、聖城先輩が来た。
「扇」
『正解です。四扇(しおうぎ)、五煙草《ごたばこ》、六座頭です』
やはり、難なく正解を出す。
会場が「うわあー」と、悲鳴にも似た歓声が沸く。
これで同点になった。あと一点を取った方が勝ちとなる。
会場の盛り上がりが頂点に達した。
『では、最後の問題を読み上げます。の前に』
僕は、番組研の方へ歩み寄る。
『番組研のみなさん、今の心境は?』
「ここまできたら、やるだけです」
嘉穂さんが胸の前でカッツポーズを取った。
聖城先輩へもコメントをもらおうと思ったが、マイクを軽く手で払われる。
集中していて、心に余裕がない。
または、あえて悪役を演じてくれているのか?
そんなわけないか。そこまでの演出を彼女が考えるとは思えない。
『問題。ワインの専門家はソムリエ、コーヒーの専門家はバリスタ。ではウイスキーの専門家は?』
ここで、嘉穂さんがボタンを押す。息も絶え絶えだ。
『津田選手、正解するのか、それとも不正解なのか、お答えを、どうぞ!』
「コニサー!」
『……正解!』
意地の勝利だった。
机をバン! と叩き、聖城先輩が悔しがるポーズを見せる。珍しく、クイズで感情を露わにしていた。
だが、解答者達は一様にゾッとしている。
『えーっと、この勝負、クイズ番組研が勝利しました。津田選手、今のお気持ちをどうぞ』
嘉穂さんが代表して、口を開く。
「悔しいです! とっても!」
『そ、そうですね。勝たせてもらった感じですから」
これまで、聖城先輩は九点目以降、全てボタンを「素振り」していたのだ。
それも、嘉穂さん達より早く。
答えようと思ったら、先輩はいつでも答えられた。
事実、聖城先輩は九点目に入ってから、問題を最後まで呼んでから素振りをしていた。
番組研に花を持たせたのである。
これは、勝ったとは言えない。
「そうじゃないです!」
僕の発言を、嘉穂さんは否定した。
「だって、聖城先輩が楽しんでないじゃないですか!」
会場にいるギャラリーが、全員呆気にとられていた。
だが、聖城先輩が一番驚いている。
「聖城先輩を追い詰めていない。勝負にすらなってませんでした。ちゃんと勝負して、対等に戦って、それで勝たなきゃ、聖城先輩が可哀想です。それが悔しいんです!」
対等に勝負してあげられなかった。
自分たちの力のなさより、聖城先輩が本来の力を発揮させてあげられなかった事の方が、悔しいと言ったのだ。
「だから、生徒会長!」
嘉穂さんが、聖城先輩に駆け寄り、頭を下げた。
「わたしたちと、もう一度勝負してください!」
聖城先輩の不思議そうな顔が、いつまでも僕の目に焼き付いていた。
ここで、嘉穂さんがボタンを押した。聖城先輩よりも早く。
「スタートレックのテーマ!」
祈るような、嘉穂さんの視線が僕を突き刺す。実際、胸の前で祈るように手を組む。
しかし、僕は無情な返答をしなければならなかった。「残念!」
嘉穂さんの身体が、崩れ去る。
『アメリカ横断ウルトラクイズのメインテーマは、二つの楽曲を使用しています。一つはスタートレックのテーマ、で・す・が!』
番組研に、嘉穂さんに、この言葉を贈らなければならないとは。
再度ボタンが押された。
解答権を得たのは、やなせ姉だ。
「だったら、チシャ猫のウォーク!」
問題を全て聞き終えてから、悠々と答える。もちろん正解だ。
番組研の四人がハイタッチをする。
久々に番組研究部側が回答したためか、会場がまた活気を取り戻す。
いや、かつてない盛り上がり方だ。
聖城先輩が、天井を見上げ、ふう、と息を整える。仕切り直しといった風に。
『問題。処女作は、「キャンベルのスープ缶」。一九六〇年代のアメリカを代表するポップアートの芸術家は?』
プレッシャーの中、湊がボタンを押す。
聖城先輩は動かない。
どうせボケるのだろう。僕もそう考えていた。
湊は、この局面でもボケる。
僕はそう踏んでいた。
ピンチこそ楽しむ女性だと。
「アンディ・ウォーホル」
これがなんと正解。
湊だって、やろうと思えばまともに答えられるんじゃないか。
『名護選手は、芸能・音楽ジャンルが、お得意なんですか?」
「うーん。知ってるけど詳しいってわけでもないなー」
『その割には、早く解答していましたが?』
「いや、ボケる要素がない問題だったから」
湊の解答基準は、知っている問題かどうかより、ボケやすい答えかどうからしい。
しかし、真面目に解答した。
こいつも部活を存続させようと必死なのだろう。
「それに、こういうときはさ、真面目に答えた方がウケるんだって」
『お前、マジでブレないな!』
こういう局面においても、湊は面白いかどうかを優先する。
その拘りは危なっかしいが、今はその貪欲さが実に頼もしい。
『さて、名護選手、いつものおちゃらけた調子を捨てて、真剣モードですが』
「いやいや、もう限界。わかんないよ」
冷や汗をかきながら、頼りないことをいう。
『さて、これで一〇点選手にリーチが掛かった番組研! どうなるのでしょうか!?』
このまま、追い上げていって欲しいが。
「問題。国語辞典『俚言集覧』に記載されている、初夢で見ると縁起がいいもの。一富士、二鷹、三茄子。では、四は?」
ここで、聖城先輩が来た。
「扇」
『正解です。四扇(しおうぎ)、五煙草《ごたばこ》、六座頭です』
やはり、難なく正解を出す。
会場が「うわあー」と、悲鳴にも似た歓声が沸く。
これで同点になった。あと一点を取った方が勝ちとなる。
会場の盛り上がりが頂点に達した。
『では、最後の問題を読み上げます。の前に』
僕は、番組研の方へ歩み寄る。
『番組研のみなさん、今の心境は?』
「ここまできたら、やるだけです」
嘉穂さんが胸の前でカッツポーズを取った。
聖城先輩へもコメントをもらおうと思ったが、マイクを軽く手で払われる。
集中していて、心に余裕がない。
または、あえて悪役を演じてくれているのか?
そんなわけないか。そこまでの演出を彼女が考えるとは思えない。
『問題。ワインの専門家はソムリエ、コーヒーの専門家はバリスタ。ではウイスキーの専門家は?』
ここで、嘉穂さんがボタンを押す。息も絶え絶えだ。
『津田選手、正解するのか、それとも不正解なのか、お答えを、どうぞ!』
「コニサー!」
『……正解!』
意地の勝利だった。
机をバン! と叩き、聖城先輩が悔しがるポーズを見せる。珍しく、クイズで感情を露わにしていた。
だが、解答者達は一様にゾッとしている。
『えーっと、この勝負、クイズ番組研が勝利しました。津田選手、今のお気持ちをどうぞ』
嘉穂さんが代表して、口を開く。
「悔しいです! とっても!」
『そ、そうですね。勝たせてもらった感じですから」
これまで、聖城先輩は九点目以降、全てボタンを「素振り」していたのだ。
それも、嘉穂さん達より早く。
答えようと思ったら、先輩はいつでも答えられた。
事実、聖城先輩は九点目に入ってから、問題を最後まで呼んでから素振りをしていた。
番組研に花を持たせたのである。
これは、勝ったとは言えない。
「そうじゃないです!」
僕の発言を、嘉穂さんは否定した。
「だって、聖城先輩が楽しんでないじゃないですか!」
会場にいるギャラリーが、全員呆気にとられていた。
だが、聖城先輩が一番驚いている。
「聖城先輩を追い詰めていない。勝負にすらなってませんでした。ちゃんと勝負して、対等に戦って、それで勝たなきゃ、聖城先輩が可哀想です。それが悔しいんです!」
対等に勝負してあげられなかった。
自分たちの力のなさより、聖城先輩が本来の力を発揮させてあげられなかった事の方が、悔しいと言ったのだ。
「だから、生徒会長!」
嘉穂さんが、聖城先輩に駆け寄り、頭を下げた。
「わたしたちと、もう一度勝負してください!」
聖城先輩の不思議そうな顔が、いつまでも僕の目に焼き付いていた。
0
あなたにおすすめの小説
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。
子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。
マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。
その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。
当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。
そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。
マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。
焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。
やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。
HOTランキング1位になることができました!
皆さま、ありがとうございます。
他社の投稿サイトにも掲載しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる