クイズ「番組」研究部 ~『それでは問題! ブタの貯金箱の正式名は?』「資本主義のブタ!」『はあっ!?』~

椎名 富比路

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第六問 ウイスキーの専門家のことを、なんと呼ぶ? ~最強のライバル襲来~

反省会

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 撮影終了後、荷物を取りに部室へ。

「ごめんなさい!」

 戻ってきてから、嘉穂さんはしきりに頭を下げていた。

「わたしが変な提案をしたばっかりに、みなさんに迷惑を」
「迷惑なんて思ってないよ。むしろ、僕から提案したかったくらいだ」

 改めて、普通の早押しでは生徒会長には勝てないと分かった。
 要は、それ以外のクイズに切り替えれば済む話である。
 その形式をいかに面白くするか。今はそれについて悩めばいい。
 
「でもなー、あの先輩との勝負なんだが、オイラは戦力になるのか?」

 珍しく、のんがションボリした表情を、僕たちに向ける。

「何があったんだよ?」
 
「だってさぁ、オイラだけあまり答えられなかったし」

 僕が、聖城先輩との対戦において、もっとも懸念していた要素が、これだ。
 心を折られてしまうのではないか。
 圧倒的すぎる知識量の前に、誰かがひれ伏し、早押しボタンから手を離してしまうのでは。
 実際、そういった心理戦も、クイズ大会では必要だろう。

 だが、番組研では評価しない。
 誰でも楽しめるクイズを。それが僕達の目指す番組なのだから。

「そこは気にすることじゃないだろ。戦力的な事は期待していないんだよ」

 のんや湊には、「強さ以外の面を強化したかった」から入れたんだ。
 点差を離されても挫けない心、苦境でも助け合うチームワーク。
 一問も答えられなかった、とのんは言う。


「けどな。それだと嘉穂だけで戦うことになるんだろ?」

 僕は黙り込む。のんの言うとおりだ。
 いくらエンジョイを貫こうとしても、その負担は、全て嘉穂さんに向いてしまう。

 さみしげな雨音が、窓を叩く。
 梅雨の時期に入り、連日雨が続いていた。
 
「ウチとしてはさ、ただ、勝つだけじゃダメだと思うんだよ」

 ずっと窓を眺めていた湊が、ふと口を開く。

「完膚なきまでに叩きのめせと?」
「そうじゃないよ」
「じゃあ、どうすればいいって、湊は思うんだよ?」

「嘉穂たんが普通に戦って、聖城先輩に勝つだけじゃ、番組研が勝った事にはならない」

 チーム全員で勝つ、って事か。
 
「圧倒的な点差なんていらない。ウチらが楽しんで、相手にも楽しんでもらって始めて、あの人も救われるんじゃないかな」

 窓を見つめながら、湊は考えを述べていく。まるで、考えながら話しているみたいに。

「そんなの、どうやって?」

「これから考えるさ」

 湊は腕を組んだ状態で、また雨粒の軌道を見守る作業に戻ってしまった。
 
 沈黙が続く。こんなに静かな部活は、活動が始まって以来かも知れない。のんのお茶を啜る音だけが響く。

「あのさぁ、思いついたんだけどさ」

 小さく、湊が手を挙げる。

「カップルとか、親子を出して、彼らにちなんだクイズを予想する。ってのは?」

 ご当地クイズか。

「うーん。いい案だと思う。それって知識が関係ないからなー」

 おそらく、そこがミソだと思ったんだろうけど。

「でも、企画自体はいいと思う。番組研の催しとして、やってみましょ」

 やなせ姉も賛同して、この企画は文化祭の出し物として通すことになった。
 だが、聖城先輩との対戦には使わない。あくまでも、知識力で倒そうという話になった。

「さて、そうと決まれば、勝たなくちゃね」

 せっかく文化祭の企画ができあがったんだ。
 先が見えたところで、少し希望が湧いてきた。
 
「あと、のん。負けそうになったとき、お前ずっと、嘉穂さんの手を握ってくれてただろ?」

 それなんだよ。僕が欲しかったのは。
 知識のない自分を、恥じる必要はない。

「おかげで勇気が湧きました。ありがとうございます。のんさん」
「お、おう!」
 少しだけ、のんの気も落ち着いたみたいだ。
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