おっさんとJKが、路地裏の大衆食堂で食べるだけ

椎名 富比路

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第三章 夏と海とJK

第41話 風呂上がりはコーヒー牛乳に限る問題

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「たしか、あの店でしたね」
 好美から出た名は、大将の店だった。

 米田よねだ 友膳ゆうぜんというのが、大将の名前である。

 好美の母は長女で、旅館のフロントが次女らしい。
 海の家を営んでいるのは、フロントの息子なんだとか。

「よろしければ、お食事でもご一緒しませんか? 今でしたら、お二方の分もご用意できますわ」

 もうすぐ、大広間を使って宴会が始まるという。

「あいにく、もう頼んでいまして」
 気さくに誘ってくれるのはありがたい。が、これ以上詮索されるのも困る。

「そうですわね。せっかくお二人だけのご旅行ですものね」
 変な遠慮をされた。

「じゃあ、お祭りもお二人で?」
 宿の廊下に、ポスターが貼ってあった。今日は花火大会があるという。

「この時期は毎年、従業員の子供たちを縁日に連れて行くのよ。誰かがチビのお守りを頼まれているの。今年は私たちの番なのよ」

 宴会なんて子供たちには退屈だろうから、夕飯も兼ねて花火大会へ連れ出すらしい。

「この花火は有名なの。わざわざ見に来る観光客もいらっしゃるのよ。琴子ちゃんに浴衣もお貸ししますよ。山ほどあるから」

「そうなんですね。琴子、好美ちゃんと行ってこいよ」

 ここは友人に譲るべきだ。

「えーっ。一緒に行こうよ」と、琴子がステップを踏む。
「財布にされる」
「いいじゃん! JK二人をはべらせられるよ。両手に花」
「通報される!」

 琴子のテンションに、好美も若干気後れしている。

「わたしもご一緒するので。お邪魔はしませんわ」

 好美ママにゴリ押しされ、孝明は琴子とのお祭り見物に付き合うこととなった。

「じゃあ、お風呂に入ってらっしゃい。浴衣を用意しておくわ」

「はーい」
 琴子と好美が、大浴場へ向かう。

 孝明も後に続いた。


 温泉に浸かり、疲れを癒やす。

 琴子に身分を明かし、多少は気持ちが晴れた。

 琴子も、少しは落ち着いてくれただろうか。


「コメくーん!」



 女湯から琴子に声をかけられ、慌てて湯船に深く沈んだ。


「なんだよ?」
「先に上がって待っててー。着付けに結構、時間が掛かりそうだからー」
「ああ。分かった。ゆっくりしてるから焦らなくていいぞ」
「うーん」


 正直焦った。思わず湯浴み中の琴子を想像してしまう。
 邪念を払うように、頭と身体を洗った。


 旅館から支給された浴衣に着替える。
 風呂上がりと言えば、コーヒー牛乳だ。
 酒が飲めるならビールなんだろうが。
 ビンのコーヒー牛乳を一気飲みし、一息つく。 


「お待たせ」
 好美ママ指定の浴衣を着た琴子が、女湯から出てきた。
 下駄に合わせて、えび茶色の生地に花火が上がっている。

 白地にひまわり柄の好美が隣に。
 好美ママと子どもたちも合流して、お祭りの会場へと向かった。
 カランコロンと、琴子たちの下駄がリズムを取る。

「二人とも似合ってるよ」
 素直な感想を、孝明は告げた。

「好美ちゃんのセンスがいいんだよー。じゃあ行こっか」
 琴子が率先して、先頭を歩く。
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