おっさんとJKが、路地裏の大衆食堂で食べるだけ

椎名 富比路

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第三章 夏と海とJK

第42話 色気より食い気問題

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 海水浴場から少し行った所を歩いていると、海沿いに屋台が並んでいた。

 今日は午後だけ、歩行者天国として解放するという。

 色気より食い気の琴子は、屋台に飛びついた。

「これかな、でもワタアメもいいよねー」
「別に何を食ってもいいぞ。遠慮するな」


 せっかくのお祭りなのだ。気を使わなくてもいい。


「そういうわけにもいかないよ。屋台の代金って、結構するんだから」
「今日は、模擬店で出す料理の取材でもあるのです」

 琴子と好美には、何らかの使命感が働いているようだ。

「だったら尚更遠慮するな。なんでも買え」

「やったー」と、琴子がバンザイする。

「ありがとう、コメくん。大好き」
「そういう時だけ好きだって言葉を使うなよ」
「いつだって好きだよ、コメくん」

 反則だ。こんなときに、耳元でささやくなんて。

 散々悩んでいたが、みんなで分け合えるたこ焼きを選んだ。一番安いセットを。

「ハフハフ」
 冷まさずに口に入れたからか、琴子が足踏みしている。
 また下駄の音がカラコロと跳ねた。

「おい、はしゃぐなよ」

「だって、日本のたこ焼き久しぶりなんだもん」
 ようやくたこ焼きを飲み込んで、琴子がホッとした顔になった。
 
 ペットボトルのお茶を好美から差し出され、ゴクッとノドへと流し込む。
「ありがとー」

「あまり、海外は楽しくなかったのですか?」
 好美が尋ねるが、琴子は首を振る。

「面白かったよ。新しい発見もあるし。向こうの人たちとも多少は仲良くなったかな」
「転校しちゃったり、しませんよね?」
「ありえないし。こっちに友達いるから、日本にずっといるつもり」

 琴子には、海外に目的も理念もないそうだ。

「でさ、好美ちゃん、なにかインスピレーションは湧いた? これだっていうメニューは思い浮かびそう?」
「いえ、これといって。この辺りの屋台は、目新しい料理はないですね」
「空振りかー。じゃあさ、いっそ楽しもっか。歩いていたら、何も思いつかなくたって楽しいよ。そっちを大事にしよう」
「そうですね!」

 琴子は好美と手を繋ぎ、屋台を回る。

 あの考え方は正しい。

 無駄に構えてしまうよりは、頭から切り離してしまった方が、突然アイデアが湧くモノだ。
 大学出の芸人の受け売りだが。


「あ、花火だ!」
 琴子が、夜空を指さす。


 ピンク色の打ち上げ花火が、月明かりに負けじと咲いた。


「わあ、きれい」
 空を見上げながら、琴子がつぶやく。
 それも、一瞬のことだった。琴子は正面を向き直り、一目散に屋台を巡った。


 好美の母親は、子どもたちと防波堤で花火を見物に行くという。

 が、好美は琴子の側についていった。
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